【不動産業界】なぜ売主は、査定価格だけで、査定書を評価するのか?
真山英二 | 不動産業界での生成AI活用の第一人者
不動産の売却査定をしていると、ほぼ必ずと言っていいほど、売主から次のような質問を受けます。
「ほんとに、こんな金額で売れるんですか?」
「なんで会社ごとに金額がこんなにバラバラなんですか?」
「別のところで⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎万円以上って言われたけど!?」
売主からすれば、当然の疑問です。
むしろ、この疑問を持たない方が不自然かもしれません。
ただ、私は長く不動産の実務や相談の現場に立ち続ける中で、この質問そのものに、ずっと違和感を覚えてきました。
なぜ、売主は、不動産査定で、あり得ない高値査定に引っかかってしまうのか?
【よくある査定の背景】
現在、一括査定が当たり前のように使われています。
数社が同時に査定書を提出し、売主はそれらを並べて比較します。
A社は3,500万円
B社は3,300万円
C社は3,700万円
そして、こう言われます。

「この差って、どういうことなんですか?」
このとき、各社の査定書を見比べると、実はある共通点があります。
構成は似ている。項目立ても似ている。不動産鑑定評価基準に沿っているようにも見えます。
けれども、
肝心の「なぜそう判断したのか」という説明がほとんど書かれていない。もしくは、細かい数字で無理矢理調整しているので見る気がしない。
結果として、売主の頭に残るのは数字だけになります。
【価格がバラバラに見える本当の理由】
ここで誤解されがちですが、問題は「誰かが間違った価格を出していること」ではありません。もちろん、不動産業者が媒介を取るためだけに高値で金額を提示するときもありますが、それも含めて不動産の価格に、唯一の正解は存在しません。
相場はあります。取引事例もあります。ただし実務の現場では、
・どの事例を重視するのか
・どの事例を参考外とするのか
・どこをプラスと見て
・どこを慎重に見るのか
こうした判断の積み重ねで、最終的な価格が形作られます。
ところが査定書の多くは、この判断プロセスをお客様に伝わるようには示していません。
そのため、多くの場合、お客様の頭の中で価格だけが切り取られ、「なぜこんなにバラバラなのか」という疑問から不信が生まれるのです。
【おかしな査定書が生まれる瞬間】
研修や相談を受ける中で、私は多くの査定書を見てきました。中には、一見すると不動産鑑定評価基準の項目にきちんと沿っているように見えるものもあります。
しかし、よく見ると違和感があります。
例えば、都合の悪い取引事例が意図的に抜かれている。価格を上げるためだけに、無理のある調整が行われている。形式は整っているのに、中身の論理が破綻している。
こうした査定書は、一時的には売主をごまかせるものがあるかもしれません。
しかし、後になって必ず歪みが出ます。
【社長が一番しんどい場面】
中小不動産会社の社長にとって、最もつらいのは、自分が正しいことをしているのに、伝わらなかったときです。

私自身、こんな経験があります。
こちらは、現実的で、正確で、きちんと売れる価格を提示しています。
しかし、大手が明らかに無理な高値の査定書を出してきました。
その結果、こちらが「ぼったくり業者」のように扱われてしまった。
そして、その物件はどうなったか。
結局、ずっと売れ残り、最初にこちらが提示した金額よりも安く売られていきました。
最初に任せてもらえていれば、もっと良い売り方ができたのに・・・
そう思うと、悔しさと同時に、構造的な問題を強く感じました。
【問題は誠実さではない】
ここで強調しておきたいのは、これは誠実さや努力の問題ではないということです。
むしろ、真面目な会社ほど苦しみます。
正直に説明しようとするほど、派手な数字に負けてしまう。
これは個人の問題ではなく、査定書の役割が価格提示に偏りすぎている構造の問題です。
【本当に伝えるべきもの】
査定書で本当に伝えるべきなのは、価格そのものではありません。
・この物件をどう評価しているのか
・どこが強みで
・どこに注意が必要で
・どんな売り方が現実的なのか
これらを、売主と共有することです。
物件をどう評価し、それを踏まえてどのような販売プロセスで、最適な買主を見つけるか、その全体像を伝えるべきです。
価格は、それらを踏まえた結果として最後に出てくるのが一般的です。
ところが現実には、まず査定書上の価格があり、強引に数字を調整して価格を合わせている。
ここに、違和感の正体があります。
【説明が変わると、結果が変わる】
逆に、きちんと価格の説明ができたときはどうなるか。
価格が一番高くなくても、任せてもらえることがあります。
実際に、売り方の重要性を丁寧に説明し、価格ではなく戦略を理解してもらえた結果、選んでいただけたケースもありました。
このとき、
売主が見ていたのは数字ではありません。
「この会社は、ちゃんと考えてくれている」
その一点でした。
【社長が一人で抱えなくていい】
中小不動産会社では、社長が最終的に査定書の説明役を担うことも多いと思います。
営業担当ごとにバラバラな査定書が上がってきて、それを理解し、理屈づけし、言葉に直す。私自身、毎回その文章を添削し、説明を補ってきました。これでは、社長個人の負担があまりにも大きすぎます。
【時代は変わった】

ここで、一つはっきり言えることがあります。
時代が変わりました。
まず、お客さんの意識がだいぶ変わりました。最高値の査定額を鵜呑みにするのではなく、その根拠や理由を求めるようになってきました。
こちらとしては、そう言ったことをわかりやすく丁寧に説明する文章が求められるようになってきました。
そうは言っても、簡単に文章力が上がるわけではありません。件数が多ければ、なおさらそこまで一つの文章にこだわる訳にもいきません。
しかし、ここで、朗報です。生成AIが登場しました!
人が、文章を一からひねり出さなくても良くなりました。
「人が判断材料を集め、AIが材料を整理して言語化する」
この考え方が一番合理的です。
人がやるべきなのは、何をどう考えるかを決めること。文章そのものは、AIに作らせればいいのです。
【ここから先の話】
この記事では、なぜ査定書が価格中心になってしまうのか、その構造と現場の違和感についてお話ししました。
では実際に、どうやって考え方を整理し、説明として形にするのか。
その具体的な方法については、別途まとめています。
生成AIを使って、不動産の売却査定書を現場で使える形にする方法です。
必要だと感じた方だけ、そちらをご覧ください。
【まとめ】
- ・査定書が価格中心になるのは構造の問題
- ・問題は価格ではなく説明の不足
- ・説明ができれば、価格競争から離れられる
- ・文章はAIに任せてよい
- ・社長が一人で背負わなくていい
