「新人が指示と違う行動をしてイライラ」──そんな経験ありませんか?
今日、中堅の部下からちょっと険しい表情で相談を受けました。
「教育担当の新人が、こっちが伝えた作業と違うことを始めちゃってて…。しかも予定変更の報告もないんです。」
詳しく聞いてみると、部下は新人に「今日は◯◯を中心に作業していこうか」と指示を出していたとのこと。
けっして丸投げではなく、一応の方向性は伝えていたつもりだったようです。
でも、新人はその意図を読み取れず、なぜか別の作業を始めてしまった。
部下としては、「言ったのに、なんで違うことをするの?」とイライラ…。
でもよくよく話を聞くと、「そのくらい言えば、あとは自分で判断してやってくれるはず」と思い込んでいた節がありました。
このギャップこそが、モヤモヤの正体。
理想通りに動く“はずだった”という期待と、実際の行動とのズレです。
「正しいことを言ってるのに、伝わらない」
「報連相をしない新人にばかり問題があるように感じる」
でも、それって本当に“新人だけの問題”なんでしょうか?
この記事では、そんな悩みを抱える教育係の方に向けて、
- なぜ“正しいこと”がそのまま“伝わる”とは限らないのか
- どこまで具体的に伝えれば動いてくれるのか
- 実際のやり取りから考える、関わり方の工夫
を一緒に考えてみます。
そして実はこれ、新人側にも役立つ話です。
「なぜ先輩は細かく言うのか」
「どこまで聞いて、どこからは任されているのか」
そのあたりの“見えない期待”を知るきっかけにもなるかもしれません。
誰かを育てるって、うまくいかないことの連続です。
でもその中に、関わり方のヒントがたくさん転がっている。
あなたのモヤモヤも、少しずつ言葉にしてみませんか?
指示の内容があいまいだと、相手にとっては「謎解き」になる
「今日は〇〇をやってって言いましたよ?それって普通に伝わる内容じゃないですか?」
たしかに、中堅社員の感覚としては「普通これだけの指示がもらえれば判断出来る」と感じるかも刺されません
でも、それを受け取る側にとっては
- 何から手をつければいいのか
- どの順番でやればいいのか
- どこまでやればいいのか
等考える事が多く見当がつかないことがあります。
つまり、経験の少ない相手にとっては、その指示がまるで“謎解き”のように感じられていることもあるんです。
掃除を例に例えてみましょう

今からこの部屋の掃除をお願いします。
この様に指示を出した場合相手は次の様な事を判断する必要があります。
- 何時までに?
- どこまで?
- 掃除道具の場所は?
- 何をする?
相手が日常的に掃除や家事をする人であれば掃除機をかけ、ゴミ箱のゴミを回収し、水回りや電球の埃とりなどよく気を利かせてくれるかもしれません。
ですが掃除の習慣がない人なら掃除機をさっとかけて終わりにして埃が溜まっていても気づかないかもしれません
逆に丁寧すぎる人でも業務のことを理解していなければ掃除に一生懸命すぎるあまり抜いてはいけないコンセント等触ってはいけないものに触ってしまう恐れもありますね。
だからこそ相手の特性を踏まえた対応や誰が聞いても赤点を取らない様具体的な指示が必要になります。
もしその人が過去にも同じように指示がうまく伝わらなかったことがあるのなら、指示を出すこちら側の言葉の「粒度」を調整する必要があります。
「何を」「どこまでに」「どのくらいの仕上がりで」など、より具体的な形で伝えることで、ミスやすれ違いはぐっと減るものです。
理想を語るだけでは、現場は回らない
「それって本来、新人のほうがちゃんと確認すべきじゃないですか?」
正論としては本当にその通り。
でも実際の現場では、「理想はそうでも、現実はそうじゃない」ことってたくさんあります。
本来なら新人が指示で分からない部分があるなら確認してこなければいけない
でも出来ていないのが現実です。
そこには様々な要因が考えられます。
- 性格や関係性によって話しかけることのハードルが高い
- 本人的には理解していたつもりだった
- 能力的な理由で指示を遂行できない
社会人として最低限やらなければいけない事は当然ありますし、大人相手にそんなレベルの低い事言いたくない気持ちは当然あります。
ですが貴方や社会の理想に届いていない相手に、ただ理想を突きつけるだけでは、残念ながら物事は前に進みません。
ましてや、今回のように過去にも同じような問題が起きていたのであれば、「またか」と思う前に、“何がその行動を引き起こしているのか”を一緒に見直してみる必要があります。
できない人に「なんでできないの?」と問い詰めても、答えは出ません。
それよりも「どうしたらできるようになるか」を一緒に探していくことのほうが、ずっと建設的で、関係も前向きになります。
できないことを前提に、関わり方を変えてみる
「でも、できてないのはあっちですよね?」
その気持ち、本当によく分かります。
「言ったことはちゃんとやってほしい」「社会人なんだから当然でしょ」と思うのも、決して間違いじゃありません。
でも、何度も同じようなミスが起きているなら、それは“相手がまだ理想に届いていない”という現実かもしれません。
今の時点では、まだそのステージに立てていないだけなんです。
そうだとしたら、こちら側の関わり方を変えることもひとつの選択肢。
例えば、
- 急ぎの仕事を避ける
- 途中で小さな確認を入れる
- 成功体験を積めるような小さめのタスクを振る
そんな配慮が、相手の成長を助け、結果的にはこちらの負担も減らすことにつながります。
正論はゴール。でもそのゴールまでの道のりには、段差や障害もあります。そこを一緒に乗り越えていくのが、「育てる側」の大事な役割なんですよね。
正論はゴール。でもそこにたどり着くには「橋」がいる
正論を言うこと自体は、まったく悪いことじゃありません。むしろ、理想やゴールを示すのはとても大事なことです。ゴールがなければ人はどこへ向かえばいいか分からなくなってしまいますから。
ただ、今回のように「もっと具体的に指示しよう」とか「相手のレベルに合わせて関わろう」という話をすると、「それって甘やかしじゃないの?」と思う人もいるかもしれません。
でもこれは甘やかしではありません。
あくまで「ゴールへ向かうための橋をかける」話なんです。
相手のレベルや今の状況に合わせて丁寧に指示を出す。
指示を出したなら、その結果についても自分が責任を持つ。
そして、指示通りにいかなかったときには、相手の理解不足だけでなく、自分の伝え方にも改善の余地がなかったか振り返る。
これは「相手に合わせる」のではなく、「自分の成長余地を探す」ということでもあるんですよね。
新人に“伸びしろ”があるのと同じように、指導する側にも“伸びしろ”はあります。
自分の伝え方や関わり方に磨きをかけていくことができたら、結果的にチーム全体がスムーズに動き出します。
そして何より、自分自身がストレスを減らし、気持ちよく仕事ができるようになるんです。
だからこそ、今回のような関わり方の見直しは、相手のためだけじゃなく「あなた自身の成長」にもつながる一歩なんですよ。
自分が変わるって、ちょっと悔しい。でも、それが一番近道かもしれない
「なんでちゃんと指示通りにやってくれないの?」「こっちのほうが正しいのに…」
そう思ってモヤモヤした経験、きっと誰にでもありますよね。
一生懸命やっているからこそ、そう感じるのは当然のこと。あなたが悪いわけではありません。
でも、理想が正しくても、現実がついてこないとき。
「理想はゴール。そこまでの道のりは、相手の現状に合わせて整えてあげる必要がある」
そういう視点を持てるようになると、ただ怒りや苛立ちに振り回されず、
「どうしたら届くかな」
「この人には今、何が必要なんだろう」
と、一歩引いて関われるようになります。
そして、これが意外な話なのですが――
「人と深く関わりすぎるのがしんどい」
「できるだけ最小限にしたい」
と感じている人ほど、
最初に丁寧に関わって土台を作っておくことで、あとからのやりとりがグッと楽になります。
- 指示ミスや思い違いのリスクが減る
- トラブル対応に追われるストレスも減る
- 結果として「伝わる・動いてくれる・育つ」流れが生まれる
つまり、一時的に関わり方を見直すだけで、のちのち自分がラクになるということ。
最小限の関わりを目指すからこそ、最初の設計が肝心なんです。
「自分ばっかり…」
と思う瞬間もあるかもしれません。
でもそれは、“相手に迎合している”のではなく、“自分の未来を整えている”こと。
部下に伝わる言葉が増えると、チームとしての連携がスムーズになっていきます。
時間に追われてガミガミ言う回数も減り、余裕を持って関われるようになる。
そして何より、あなた自身が「ちゃんと伝わった」「相手が育ってきた」と実感できたとき、
自分の関わり方に自信が持てるようになります。

人との関わりで生まれる信頼関係は目には見えないけどかなり重要な仕事のスキル、先輩や上司になるなら必須だね
焦らなくて大丈夫。
今日から少しずつ、相手の歩幅に合わせた関わり方、始めてみませんか?
その一歩が、仕事のやりにくさや人間関係のストレスを減らす近道になりますよ。