エアコンは2027年に買えなくなる?銅3.17倍・配管72.6%高から考える買い替えと工事費
KIYOHIDE
制度と値上がりを分けて、工事込みで考える。
写真:NEOSiAM 18+ / Pexels(Pexels License)。ストック写真であり、筆者の施工現場ではありません。写真の機種は本文の価格調査・省エネ基準の対象例を示すものではありません。表紙は写真の表示範囲を調整し、文字を配置しています。本文のグラフは公表データから作成しています。
「2027年になったら、安いエアコンが買えなくなる」
そんな話を聞いて、今のうちに買い替えた方がいいのか、迷っていませんか。
一方で、工事をする側にも気になることがあります。配管やカバーを仕入れるたびに、以前の見積単価で足りるのか確認が必要になる。お客様から「前はもっと安かった」と言われたとき、値上がりの理由を数字で説明するのは簡単ではありません。
そこで今回は、2027年の制度変更と、材料・工事に関わる価格の動きを分けて調べました。
先に大切な点をお伝えします。2027年度の新しい省エネ基準は、今使っているエアコンを使用禁止にするものではありません。基準に届かない製品が、一律に販売禁止になる制度でもありません。
ただし、値上がりへの心配が根拠のない話というわけではありません。銅地金、同じ型番の配管部材、労務の指標には、実際に大きな変化が出ています。
この記事では「何が、いつから、どのくらい上がったのか」と「その数字でどこまで言えるのか」を確認します。買い替えを考えている方にも、見積を作る施工店にも役立つように整理しました。
調査基準日:2026年11月6日。価格の将来予測ではなく、この日までに確認した公表資料をもとにしています。
1.2027年問題で変わるのは何か
家庭用エアコンで話題になっているのは、省エネ法のトップランナー制度に基づく新しい省エネ基準です。
壁掛け形は2027年度、壁掛け以外やマルチタイプは2029年度が目標年度になっています。2027年度は、2027年4月1日から2028年3月31日まで。「2027年1月1日に突然ルールが変わり、古い機種が全部売れなくなる」という理解ではありません。
新基準自体は、2022年に公表・施行されています。メーカー側はそこから目標年度に向けて製品構成や設計を変えていきます。
達成の判定は、製造・輸入事業者が出荷する対象製品群の平均で行われます。厳密には、区分ごとに出荷台数で重みを付けたAPFの調和平均を使う仕組みです。個々の型番を全部、同じ線で販売禁止にする制度ではありません。
そのため、次の3点は分けて考える必要があります。
- 今使っている機器を、そのまま使えるか。
- 故障した機器を修理できるか。
- メーカーが今後どの価格帯・機能の製品を販売するか。
最初の2つは、この新基準によって一律に禁止されません。3つ目は各社の製品戦略に関係するため、将来の品ぞろえを法律だけで決めつけることはできません。
「省エネ性能34.7%アップ」は電気代34.7%減ではない
ここも間違いやすいところです。
一般地向け壁掛け4.0kWの一例では、旧基準のAPF4.9から新基準6.6へ上がります。APFの上昇率は約34.7%です。旧値は旧基準の寸法規定タイプで、すべての機種の比較を代表する数字ではありません。
APFは、一定条件での冷暖房能力と消費電力量の関係を示す指標です。同じ冷暖房負荷を仮定して電力量を比較するなら、計算は「1−4.9÷6.6」となり、約25.8%減です。
さらに実際の電気代は、地域、断熱、日当たり、使用時間、設定温度で変わります。カタログの数字を、そのまま自宅の電気代削減保証として受け取らないようにしましょう。
出典:経済産業省の2022年発表転載、三菱重工のAPF・期間消費電力量の説明
2.銅は6年前の約3.17倍 ただし工事費の倍率ではない
図1:銅価格の月次推移

図1:JX金属の月間平均銅建値。単位は万円/トン。配管の仕入れ値や工事代金ではありません。
エアコンの配管に使われる銅は、価格変化を追ううえで重要な材料です。
JX金属の月間平均銅建値を見ると、2020年10月は1トンあたり75万2,300円。それが2026年10月には238万3,500円になっています。同じ10月同士で約3.17倍、216.8%の上昇です。
ただ、これを「エアコン工事費も3倍になる」と読み替えるのは間違いです。
被覆銅管には、銅だけでなく加工や断熱材などの費用も含まれます。工事の見積にはさらに、人件費、工具・車両、移動、養生、電気工事、撤去などが加わります。
銅地金の上昇は材料費を考えるための根拠にはなりますが、最終的な請求額の上昇率をそのまま示す数字ではありません。
出典:JX金属 銅建値
3.同じ型番の配管は72.6%高 カバーも32.1%高
銅相場よりも、工事の部材に近い数字を見てみます。
図2:配管部材の品番別価格比較

図2:因幡電工の価格改定表から同一型番を比較。税別希望小売価格であり、販売店の実売価格や施工店の仕入れ価格ではありません。2製品の比較開始日は異なります。
2分3分のペアコイル PC-2320
20mのペアコイルPC-2320は、メーカーの税別標準単価で次のように変わっています。
- 2024年3月:38,000円
- 2024年7月:45,600円
- 2026年2月:54,700円
- 2026年6月:65,600円
2024年3月から2026年6月までの上昇率は、72.6%です。
配管化粧カバー SD-77
配管を覆う化粧カバーSD-77も、同じ型番で比べられます。
- 2023年1月:3,180円
- 2024年11月:3,500円
- 2026年6月:4,200円
こちらは2023年1月から2026年6月までに32.1%上がっています。
これは、材料費の話をするときに使いやすい比較です。ただし「うちの仕入れも72.6%上がった」と言うには、自社の仕入れ伝票で確認が必要です。取引条件や掛け率は、この価格表だけでは分かりません。
施工店は古い見積テンプレートをそのまま使わず、材料の型番と現在の仕入れ単価を確認する。依頼する側は、材料費の説明を受ける際に「定価なのか、実売なのか、工事込みなのか」を確認する。この区別だけでも、話がかみ合いやすくなります。
出典:因幡電工 2024年3月、2024年7月、2026年2月、2026年6月、2023年1月、2024年11月
4.アルミは上昇一辺倒ではない 冷媒も条件をそろえる
図3:アルミニウム価格の年次推移

図3:IMFのアルミ国際価格、FRED掲載。米ドル/トンの年平均。国内の円建て加工品価格とは異なります。
アルミの国際価格は、2020年平均の約1,704米ドル/トンから、2025年平均の約2,631米ドル/トンへ。約54.4%上昇しています。
ただし、2022年から2023年には下がっています。「材料は毎年すべて同じように上がっている」という説明では、この動きは伝わりません。
銅は国内円建て、ここでのアルミは国際ドル建てです。通貨も価格の測り方も違うので、金額をそのまま横並びにはできません。
冷媒については、ダイキンの2025年1月付通知に、同年3月からR32、R410AなどのHFC冷媒を現行販売価格比30%以上改定する案内があります。
ここから言えるのは、対象商品の値上げ通知があったということです。全国平均の冷媒価格や、すべての修理代が30%上がったという意味ではありません。
冷媒を比べるときは、種類、充填量、新品か再生か、容器代、送料、税などの条件をそろえる必要があります。修理では漏えい箇所の調査・修理、回収、真空引きなども関係します。「ガスの値段」だけで修理全体の費用は決まりません。
出典:IMF/FRED アルミ価格、販売店掲載のダイキン冷媒価格改定通知
5.工事には人の費用がかかる 労務指標は6年で27.8%上昇
図4:電工の労務単価の推移

図4:各年3月適用の公共工事設計労務単価。全国全職種の加重平均、所定労働8時間あたり。空調工事の実売料金や職人の手取りではありません。
国土交通省の公共工事設計労務単価を見ると、全国全職種の加重平均は2020年の20,214円から2026年の25,834円へ。6年間で27.8%上がっています。
この数字には、事業主負担の法定福利費や現場管理費などは含まれません。家庭用エアコンの工事費相場そのものではありませんが、材料以外にも費用が動いていることを考える手がかりになります。
物流では、日銀の道路貨物輸送の価格指数が2026年9月に113.3となっています。2020年平均を100とした指数なので、基準年より13.3%高い水準です。113.3円という意味ではありません。
材料、人、運ぶ費用。それぞれの変化を分けて見た方が、値上げ理由を正確に説明できます。
出典:国土交通省 2026年公表資料、日本銀行 2026年9月企業向けサービス価格指数
6.業務用の冷媒2027年問題は別に確認する
店舗やビルの設備を扱う方は、ここを家庭用の省エネ基準と混ぜないでください。
フロン排出抑制法の指定製品制度では、対象製品群ごとに低GWP化の目標年度が設定されています。新設・配管全更新のビル用マルチなどでは、2025年度の対象区分に続き、冷暖同時、寒冷地、水熱源などで2027年度が関係する区分があります。
既設配管を再利用する更新など、対象から外れる条件もあります。業務用なら全部同じ年、という整理では足りません。
R32を採用する機種では、機種、冷媒量、室容積、設置条件に応じて、漏えい時の安全対策を確認する必要があります。設計によってセンサー、遮断、換気などが関係し、工事内容も変わります。
指定製品制度があるからといって、既設のR410A機を直ちに使用禁止・修理禁止にするものではありません。更新の見積では、該当する機器と設置条件を確認したうえで、必要な工事を説明することが大切です。
7.2020年から2029年までを並べてみる
- 2020年:今回の比較の起点。10月の銅建値は75.23万円/トン。
- 2022年:家庭用エアコンの新省エネ基準が施行。目標年度は2027年度・2029年度。
- 2023年:1月のSD-77標準単価は3,180円。アルミ年平均は前年より低下。
- 2024年:PC-2320は3月38,000円から7月45,600円へ。SD-77は11月3,500円。
- 2025年:ダイキンの対象HFC冷媒で3月から30%以上の改定通知。
- 2026年:PC-2320は2月54,700円、6月65,600円。SD-77は6月4,200円。10月の銅建値は238.35万円/トン。
- 2027年度:家庭用壁掛けの省エネ目標年度。別制度で業務用冷媒にも対象区分あり。
- 2029年度:家庭用の非壁掛け・マルチタイプの省エネ目標年度。
過去の値上げと、これから迎える制度上の目標年度は区別して読んでください。年表に将来の日付があるからといって、その年の販売価格が決まっているわけではありません。
8.買い替える前に見積で確認したい7項目
買い替えを考えるなら、本体の価格だけで決めず、まず同じ条件の見積にそろえます。
- 本体と基本工事の範囲。どこまでが表示価格に含まれるか。
- 配管の長さと追加料金。延長が必要か、既設配管を使えるか。
- 電気工事。専用回路、電圧、コンセントの変更が必要か。
- 設置場所の条件。高所、足場、搬入、壁の穴あけなどがあるか。
- 撤去と処分。取り外し、リサイクル、収集運搬の費用がどう分かれるか。
- 使い方に合う省エネ性能。畳数表示だけでなく、地域や断熱、日射、使用時間も考える。
- 見積の有効期限と工事日程。材料の手配条件や追加工事の扱いを確認する。
よく使う部屋ほど、運転時の電気代の違いが効いてきます。一方、短時間しか使わない部屋では、購入時の価格差を回収する条件が変わります。
「2027年が来るから」という理由だけで急ぐより、故障の状態、使う頻度、設置条件、工事込み総額を確認した方が、自分に合う判断ができます。
9.施工店が値上げを説明するときの考え方
値上げの説明では、銅相場やメーカーの価格表を見せるだけでなく、見積のどこに影響しているのかを伝えると分かりやすくなります。
例えば、見積原価の30%を占める材料が20%上がったとします。他の条件が同じなら、全体への直接的な影響は6%です。
これは実際の工事原価の平均ではなく、計算の例です。材料の値上げ率を、工事総額にそのまま掛けることはできないと分かります。
見積には、材料の型番と数量、労務、追加作業、必要な安全対策、間接費を分けて反映する。お客様には、制度変更で変わる部分と、その現場だから必要な工事を分けて説明する。どちらも納得できる見積を作るための基本です。
まとめ 不安で急がず 数字の意味をそろえて判断する
2027年問題は、家庭用壁掛けエアコンの省エネ目標年度をめぐる話です。既設機の一律使用禁止や、未達製品の全面販売禁止と同じ意味ではありません。
一方で、銅、工事部材、冷媒、労務、物流には価格上昇を確認できる資料があります。ただし、その数字が示すのは地金なのか、カタログ価格なのか、実売なのか。ここを区別しないと、説明が大きくずれてしまいます。
買う側は、工事込みの条件と使い方をそろえて比較する。施工する側は、最新の仕入れと現場の作業内容を確認して積み上げる。
「今が絶対に最安」「来年は全部高くなる」と言い切るより、今確認できる材料から判断する。それが、買い替えでも工事の見積でも、後悔を減らすための考え方です。
調査とグラフについて
本記事の増減率は「比較後÷比較前−1」で計算しています。グラフは公開資料をもとに独自作成しました。2026年の通年データは確定していないため、銅は10月まで、アルミの年平均は2025年までを使用しています。
家庭用エアコン本体の同じ仕様で比較できる長期実売データと、家庭用標準工事の全国実売長期データは、本調査では確定できていません。そのため、本体や工事の全国平均が何%上がったかは断定していません。
法令の適用は最新の告示と機器仕様、価格は最新のメーカー・販売店情報をご確認ください。
