序章:泥水を啜り、黄金を掴むまで――金の亡者Qの出生譚
諸君、私が最初からこの冷徹な「亡者の仮面」を被っていたと思うか?
笑わせるな。かつての私は、君たち以上に救いようのない、青臭い「正義の信奉者」だった。
若き日の私は、誠実こそが最大の武器だと信じていた。額に汗して働き、嘘をつかず、他人のために泥を被る。そうすれば、いつか世界が自分を正当に評価してくれると、盲目的に信じ込んでいたのだ。
だが、現実はどうだ。私が「良心」を盾に守ろうとした組織は、私のその忠誠心を、一滴残らず絞り取るべき「無料の資源」としてしか見ていなかった。
決定的な瞬間は、ある冬の夜に訪れた。
私が心血を注ぎ、他者の不始末まで背負って完成させた巨大なプロジェクト。その莫大な利益を、指一本動かさなかった上層部の人間たちが、さも当然のような顔をして、私の目の前で「配当」として山分けした。
私に与えられたのは、形ばかりの賞賛と、過労で震える指先、そして翌朝からまた「誠実」に働くための、たった一枚の辞令だけだった。
その夜、私は凍える歩道橋の上で、自分が守ってきた「正義」という名の紙屑を、暗い川へと投げ捨てた。
腹の底からこみ上げてきたのは、悲しみではない。自分というリソースを、安い道徳という名の「鎖」で縛り付けていた自分自身への、猛烈な憎悪だ。
「正義」とは、奪う側が、奪われる側をおとなしくさせておくための「鎮静剤」に過ぎない。
私はその時、死んだのだ。
かつての誠実な青年は消え、残ったのは、このクソゲーのルールを骨の髄まで理解し、奪い返すことのみを呼吸とする「亡者」だけだった。
これから語るのは、私が泥水の中から這い上がり、支配者たちの喉元を食い破るために研ぎ澄ませた「毒」の精製方法だ。
覚悟はいいか。この門を潜れば、もう君は「善良な被害者」という安らぎには二度と戻れない。
