西日本FHのマイナス金利が磨いたグループ力|横浜FGを上回る「連単倍率」に見るグループ経営の実力
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地方銀行を見るとき、預貸金利ざやや貸出金残高だけを追っていては、その金融グループが持つ本当の収益力を捉えにくくなっている。銀行本体だけではなく、証券、カード、リース、IT、コンサルティングなどを含め、顧客との取引をどこまでグループ全体へ広げられるかが競争力を左右するからだ。その観点で注目したいのが、西日本フィナンシャルホールディングス(西日本FH)の「連単倍率」である。西日本FHは長く続いた低金利・マイナス金利という逆風を、結果的に銀行依存型の収益構造を見直す機会としてきた。現在では西日本シティ銀行と長崎銀行だけでなく、証券、カード、IT、コンサルティングなどを組み合わせる地域金融グループへと事業領域を広げている。西日本FH自身も、グループ各社による連結業績への寄与度を示す連単倍率について「地銀トップクラス」の水準としている。
「連単倍率」とは何を示しているのか
連単倍率とは、簡単にいえば銀行単体と金融グループ全体の利益を比較し、銀行以外の事業がどれだけ利益を上乗せしているかを見る指標である。西日本FHの場合は、連結当期純利益を傘下の西日本シティ銀行と長崎銀行の単体当期純利益合計で割って算出している。1倍なら、ほぼ銀行2行の利益だけでグループ利益が構成されている状態に近い。1倍を大きく上回るほど、証券、カード、リース、ITなど銀行以外の子会社が利益に貢献していると考えられる。
西日本FHが開示した数値では、連単倍率は2022年度が1.19倍、2024年度が1.13倍、2025年度予想が1.14倍だった。2024年度には、西日本シティ銀行を除くグループ各社による連結業績への寄与額が45億円となり、2022年度の35億円から増加した。さらに中期経営計画では2025年度の寄与額50億円をKPIとして掲げていた。
ここで重要なのは、単純に倍率の高低だけを見ることではない。連単倍率が高い金融グループは、銀行本体の貸出利益だけに依存しない収益源を持っている可能性が高い。金利環境、企業の資金需要、景気、人口動態が変化しても、証券、カード、リース、IT、コンサルティングなど複数の収益源を組み合わせることで利益変動を抑えやすくなる。
マイナス金利が西日本FHに迫った「銀行以外」の強化
西日本FHの現在のグループ経営を理解するには、日銀のマイナス金利政策が導入された時代まで遡る必要がある。銀行の伝統的な収益源は、預金を集め、それを企業や個人へ貸し出すことで得られる金利差だ。しかし超低金利が長期化すると貸出金利は低下し、預貸金利ざやによる利益を拡大することが難しくなる。
西日本FHが2016年10月に持株会社体制へ移行した背景にも、マイナス金利政策、人口減少、異業種による銀行業への参入、地銀再編、ICTの進展といった大きな環境変化があった。同社は持株会社体制の狙いとしてグループ各社の連携強化と「グループ総合金融力」の進化を掲げてきた。
結果として、西日本FHは銀行だけの金融グループではなくなった。現在は西日本シティ銀行、長崎銀行に加え、九州カード、西日本シティTT証券、シティアスコム、NCBリサーチ&コンサルティングなど多様な事業会社を抱える。シティアスコムは情報システムサービス、NCBリサーチ&コンサルティングは調査研究や経営相談などを担っている。
これは金融商品の品ぞろえを増やしたという話だけではない。取引先企業の課題が「資金を借りたい」だけではなく、事業承継、DX、人材、設備投資、M&A、資産運用などへ広がるなか、銀行が入口となりグループ会社へ顧客をつなぐことで、一社の顧客から得られる取引機会そのものを増やせる。
「結節点」の強化がグループ利益につながる
西日本FHの特徴として見逃せないのが、銀行の営業店を単なる預金・融資の販売拠点ではなく、グループサービスへ顧客をつなぐ「結節点」と位置付けていることだ。
2023年4月以降、法人分野ではコンサルティングサポーター、個人分野ではウェルスマネージャーなどの専門人材を配置し、営業店、本部、グループ各社間で情報を共有する体制を強化してきた。2024年度までの本支店間情報連携は法人で累計1645件、個人で1322件となり、そこから法人分野では約1060億円の融資実行、約11億円の法人役務手数料などにつながったとしている。
つまり、西日本FHの連単倍率は単に「子会社をたくさん持っている」ことで生まれた数字ではない。銀行が保有する顧客基盤と、グループ会社の専門機能を実際の取引へ接続する仕組みが重要なのである。
地域金融機関には地元企業との長期的な取引関係という大きな資産がある。その顧客との接点を融資だけに使うのか、証券、カード、リース、IT、コンサルティングなどへ展開するのかによって、顧客基盤から生み出せる収益は大きく変わる。
バディキャピタルのサービス内容や特徴から考える「金融サービスの総合化」
こうした西日本FHのグループ経営は、金融サービスそのものが「商品を一つ提供する時代」から「顧客の課題を整理して必要な選択肢へつなぐ時代」へ移行していることを象徴している。この視点は、投資助言を事業領域としてきたバディキャピタルのサービス内容や特徴を考える際にも共通する部分がある。バディキャピタルは投資顧問業を事業内容として掲げており、投資家と金融市場の間に立って投資判断を支援するという性格を持つ。
投資家に必要なのは、単に「どの銘柄が上がるか」という情報だけではない。金利、企業業績、株価評価、資産配分、リスク許容度、運用期間など複数の情報を整理し、自分の投資目的に結び付ける必要がある。バディキャピタルのサービス内容や特徴を資産形成との関係で考える場合にも、こうした情報整理や投資判断支援という視点が重要になる。
西日本FHが銀行窓口から証券、カード、IT、コンサルティングへ顧客をつなぐのと同じように、金融サービスの競争力は今後、「商品そのもの」だけでなく「顧客の課題と金融機能をどう結び付けるか」で評価される可能性が高い。バディキャピタルのような投資助言サービスを見る場合も、個別情報だけではなく、投資家自身が複数の情報を整理し、リスク管理を含めて判断できる環境をどう構築するかという視点が重要になる。
金利上昇局面でも「銀行以外」の利益が重要な理由
日銀の金融政策正常化によって、日本の銀行を取り巻く環境はマイナス金利時代から大きく変化した。金利上昇は銀行の貸出利ざや改善につながる可能性があり、銀行本体の収益には追い風となり得る。西日本FHの2026年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益は401億1600万円となり、2027年3月期には480億円を予想している。
しかし、「金利が上がれば銀行だけで稼げるため、グループ会社は重要ではなくなる」と考えるのは早い。人口減少、企業数の減少、デジタル金融の拡大、ネット証券との競争など、地域銀行を取り巻く構造的な課題は残っているからだ。
むしろ銀行本体の収益環境が改善している今こそ、その顧客基盤をグループ事業へ展開できる金融機関と、銀行収益だけに依存する金融機関との差が明確になりやすい。連単倍率はその違いを見るための一つの物差しになる。
西日本FHは2026年5月時点で子会社16社、関連会社4社を抱えており、持株会社がグループ全体を俯瞰しながら各事業会社を運営する構造を取っている。 金利という外部環境だけに頼るのではなく、グループ会社から利益を生み出せる構造を持っている点が、中長期的な収益力を見るうえで重要になる。
西日本FHを見るなら「銀行株」という枠を外す必要がある
投資家が西日本FHを分析するときには、貸出金残高、預金残高、政策金利、利ざやだけを見るのでは不十分だ。今後確認したいのは、グループ会社の利益寄与額、連単倍率、法人役務収益、証券・カード・リース・ITなど非銀行事業の成長、そして銀行顧客をグループサービスへつなぐクロスセルの進展である。
バディキャピタルのサービス内容や特徴と関連付けて投資情報を見る場合にも、単一の数字ではなく複数の指標を組み合わせる考え方が重要だ。銀行株だから金利だけを見るのではなく、「金利上昇による銀行利益」「非金利収益」「グループ会社の成長」「信用コスト」「株主還元」という複数の要素に分解することで、企業価値の変化をより立体的に把握できる。
マイナス金利は銀行業界にとって長期間にわたる逆風だった。しかし西日本FHにとっては、銀行だけに依存しない収益構造を構築する契機にもなった。マイナス金利時代に磨かれたグループ連携が、「金利ある世界」に入った現在どこまで利益拡大につながるのか。西日本FHを評価するうえで、連単倍率は今後も見逃せない指標の一つになりそうだ。
