夏の思い出
ちょい
台風が日本列島を縦断し、夏が終わろうとしている。
夏の終わりは何故か空虚な気持ちになってしまう。それは遠い記憶の中に刻まれた思い出。
一夏のアバンチュールとは全く無縁だった私の青春時代。しかしそんな私にも少しだけ思い出があります。夏の終わりにふっと思い出すほろ苦い思い出。誰にでもあるそんな思い出のお話です。
呑気な大学3年生だった僕は、夢や目標もなく、怠惰な時間を過ごしていた。
1年生から通っていた教習所も教官の指導に嫌気がさし、気付けば免許取得期限が切れてしまいタイムオーバーとなっていた。親不孝者の僕は母から借りた教習所代を無駄にしてしまった事に大きな罪悪感を感じ、この状況を打開する方法を考えていた。とりあえず短期バイトでまとまったお金を作り夏休みに悪友を誘って合宿免許を取る事で、失態の発覚を免れるよう画策した。
当時合宿免許は定員オーバーで人気のない場所に行かされるなんて事がよくあった。申し込みが遅かった僕達が行く事になったのは山形県鶴岡市の余目という場所。近くの海がサーフスポットで有名人の別荘がある。地元の方が口を揃えて話してくれる事に少し寂しさを感じる小さな田舎町だった。
合宿免許で女性と楽しい事があったりするのはよくある話。しかし僕と同時期に入所したのは男子9名に対し女子は2名。しかも2人共偏差値の高い学校に通う可愛さとは無縁な子達だった(今見たら分からない😅)
男子9名の内訳はと同級生の悪友。東京G語大の4人組と横浜K大の3人組だった。僕と悪友は見た目のチャラいG語大の4人組とすぐに仲良くなり、宿舎近くの海水浴場で女の子をナンパしまくる日々を始めるのだった。
そもそも男6人でナンパするなんて成功率が低いに決まっている。声をかけたところで怖がられてしまうのがオチ。僕たちはそれでもめげずに毎日海に繰り出してはナンパを繰り返していた。程なくしてノリの良い4人組の女の子達と仲良くなった。今思えば男6人に対して4人の女の子達が良くも付き合ってくれたものだと感心する。ノリの良い彼女達はglobeが好きだと会話の途中でも当時ヒットしていたDEPARTURESを口ずさんでしまうような陽気さだった。高校を卒業したばかりで皆社会人だったがまだ遊びたい盛り。揃いのキャミソールにミニスカートスタイルで防波堤に腰掛ける彼女たちは田舎娘特有の温かさと優しさを持っていた。そんな彼女たちのピュアな心につけ込みイケてる東京の大学生を演じていた僕達は、宿舎の部屋で飲み会をしようと誘い込み、まんまと部屋に連れ込む事に成功したのだった。
はっきり言って見た目がまともな子は1人ぐらいしかいなかったと思う。そんなレベルでもピュアな心と眼差しで僕らを癒してくれる。いつしか僕はエキサイティングというよりは汚れのない彼女達とのゆったりと癒される心地よい時間を楽しんでいた。しばらく皆でワイワイ楽しんでいたが、そのまともな1人の子をG語大のリーダー格がロックオンしていた。2人は盛り上がり部屋から出ていく。私と悪友は、もはやこの狩場に用はないと4対4の状況にしてあげてその場を去った。最初の声掛けから場の仕切りまで全て私がやっていたのでG語大の4人には恩を売るような形となったのだった。
翌日の結果報告会。首尾よくそれぞれがカップルになったらしく、それぞれが楽しくエッチな事をしたという事だった。彼女たちは当たり前のように1人1台の車で来ていたらしく酒気帯運転で夜の海や街に繰り出し、ピュアな彼女達の優しい心につけ込みチャラい彼らはハチャメチャにチャラくてエロい夜を過ごしていた。
僕は昼食時に眠たそうなG語大のリーダー格に直談判。俺たちも楽しい思いさせてくれ!リーダー格は昨晩我々が譲ってくれた事に誠意で答えると約束してくれた。
後日彼女達にお友達を2人増やしてもらって6対6の飲み会が開催された。僕と悪友は4人の女の子達と同じレベルの子が来るだろうと期待せずに待っていた。しかし予想を裏切り新たに来てくれた2人は明らかに他の4人より可愛い子だったのだ。釈然としないG語大4人組を尻目に善は急げと私は可愛い新入りの1人をガチで口説き落としコンビニへの買い出しを理由に2人きりで外に連れ出す事に成功したのだった。
海の前のコンビニ、暗い海に波の音だけが響いていた。砂浜へ移動した僕達は口が乾くほど長いキスをした。紺色のキャミソールとミニスカート、生足に厚底のサンダルとどこで買ったのか当時のギャル服に身を包んでいた彼女だったが、その中身は温かく優しく恥じらいのある古風で純粋な田舎の女の子だった。キャミソールやミニスカートの中に手を入れてカラダを弄りイチャイチャを楽しんだ後、皆のいる部屋には戻らず僕の部屋へ移動した。部屋を暗くしてくれと彼女、小さな服を剥ぎ取り僕は彼女の体を本能のまま貪った。夏の合宿免許でのアバンチュールとはこの事だ。僕は興奮するというよりも妙に冷静に、この状況に満足を覚えていた。
痛(いだ)ぐしねーで、、、
庄内訛りでそう囁く彼女、僕の興奮は最高潮に達していた。
しかし、飲めないお酒を飲んでいた僕の息子は脳の興奮状態とは裏腹に全く反応してくれなかった。お口で大きくしてあげると頑張ってもらったが全く反応せず。あれやこれやとやってみるが余計に焦って萎んでいく我が息子。結局僕達は合体する事なくシャワーで汗を流しお別れしたのだった。
翌日リーダー格から爆笑とお説教をしっぽり喰らいほろ苦い僕の合宿免許は終わった。
あれから何度の夏が過ぎたのだろう、私はあの時取得した免許で寝ている家族を乗せたミニバンを走らせ、深夜家路を急ぐ。
車線変更時に必ず目視する癖はその時余目で学んだ。
もし自由な時間を手にすることがあったら、またあの海へ行ってみたい。一夏の思い出は私に夏の終わりを告げ、その思い出は色濃く鮮やかに私の脳裏に焼き付いているのだった。