仕事帰りの短時間デートのお店はほぼ私が決める。私も仕事で忙しいんだからたまにはトオルが決めてくれれば助かるのにな、と思う。
昨日は魚料理が美味しい居酒屋に行き、焼酎を飲みながら刺盛りを゙食べていた。
すると、トオルがリップグロスを突然プレゼントしてくれた。
口に塗る物を男性から貰うのは
人生で2回目だ。
1回目も、食事中に突然口紅をプレゼントされた。
あれは10年以上前のこと。
シェフをしていた1歳年上の独身だった愛人
ベノアと
彼がずっと行ってみたかったというロストイントランスレーションで外国人観光客に人気になったバーに行った時だった。
あの時も特に記念日ではなかったと思う。
シャネルの黒い口紅の蓋を開けると
バーの薄暗い照明でも目立つ真っ赤な口紅が出てきた。
いつもメイベリンのピンクベージュの口紅かニベアの色付きリップをついい加減につけていた私が一度もつけたことのない綺麗な赤い口紅。
「素敵だけど、こんな派手な色いつつけたらいいの?」
予想外のプレゼントに喜びながら言うと
「いつでもいいんだよ。今の服にも合うよ」
そう言うと彼は満席のバーで向かい合って座った私に顔を近づけて丁寧に口紅を塗ってくれた。
口紅をもらったことで元愛人ベノアと過ごした夜を思い出してしまった。
その日もトオルは食事の後近くのラブホに行くつもりだったようだけれど
私は無性に食事だけで帰りたくなり帰った。
ブーブー文句を言うトオルを無視して
私は自転車で帰った。トオルも並走して送ってくれた。
「ギューとチューだけさせて」
と別れ際にせがまれたけど、何としてもやりたい時のトオルとギューなんてしたら。。。
トオルがくれたピンクと透明ラメがマーブルになったリップグロスは、なんと数日前に夢で見たのそっくりだった。
