今から約20年前、ある自動車部品を作っている会社に入社しました。その会社は品質が非常に悪く、その会社に勤めていることが恥ずかしくなり、『どこに勤めてるんですか?』って聞かれてもうやむやにして流していました。
私も入社したての頃はまずは製造に入り、製品の検査と簡単な部品の組付けをしました。その際に大した説明もなく現場にそのまま配置され、設備から出てきた製品の検査(といっても眺めるだけ)と組付けをしました。しかし仕事に入る前に2~3分教えてもらった?だけでは初めての仕事なのでわかるはずもありませんでした。不良が出やすいポイントなどを聞いたとは思うのですが、何のことかよくわからずただ聞いただけという感じでした。組付けについては欠品を防止するために『員数管理』を行っていましたが、初めて『員数管理』という言葉を聞いた私にはなんのことやらさっぱり(笑)案の定、客先から不具合の連絡です。欠品は散発的に出ているわ、不良品に組付けをしているわ… 今になって考えれば、その時の悪さとして、・教える人のレベルが低すぎた・そもそも教える時間を充分取ってくれていない・員数管理というのがどういうものなのか教えてくれていない・不良品の現品を見ていないので、何が不良品かよくわからない・新人なのにいきなり1人で作業させている・設備に間に合っていない(当然)のにフォローもない・新人作業者なのに製品の出来上がり確認をしないなどなど上げていけばキリがないほどです。それでも1週間もするとある程度は作業もでき始め、不具合の連絡もなくなりました。
製造に入って1か月後、次はいきなり品質保証。あまり大きな会社ではなかったことと、進出企業だったこともありその時の品質保証は1名のみ。しかもその人は1か月後に退職予定。引継ぎを1か月で行うよう言われ、必死に引き継ぎました。なんとか引継ぎもでき、今まで前任者がやっていたことはできるようになりました。しかし、品質向上活動などはまったくやっていませんし、その会社は家電製品を製造する会社だったこともあり、本社や他事業所からも応援などはなく、質問したくても誰に聞いてもわからない状態でした。何もしていないので品質が良くなるはずもありませんでした。品質保証の担当となって約半年が過ぎた頃、新車の立ち上げ業務が入ってきました。お客様からは必要な書類が1製品につき27種類あるということで、すべて品質保証をしている私が作らなければならなくなりました。お客様からは書く書類の作り方のガイドみたいのものをいただきましたが、初めて聞く言葉が多く、さっぱりわかりませんでした。これでは書類が出来上がらない、と思った私はPCを持ってお客様のところに行き、1から教えていただきました。それでなんとか書類はできあがったものの、新製品の立ち上がりに伴い今度はお客様から不具合の連絡が毎日のようにありました。当然すぐにお客様のところで選別です。そんな状態で日々やっつけ仕事?をやっていました。
新規立ち上げも終わり、ある程度品質が落ち着いてきた頃に今度は客先による監査です。監査など受けたこともない私は何も準備することなく監査に応じました。結果はボロボロ… 当然の結果です。よく術からは監査時の指摘に対する改善計画書作りです。それをやった後、今度は改善です。改善といっても、書類の不備などは自分でできますが現場の指摘については現場とやるしかありません。そこで現場の責任者と力を合わせてなんとか改善をしてその結果をエビデンスとともに客先報告です。一度提出したエビデンスの内容がお客様の想いと違っていたらまたやり直しです。それを2回3回と繰り返してようやくクローズです。夜遅くまでかかっていました。
そんな感じで品質保証の仕事に従事して3年くらい経過した後、カーメーカーの品質保証の方が月に1回来社して変化点管理のしくみを一緒に作ろうというイベント的なことがありました。その時は変化点管理って聞いても聞いたこともない言葉で、何のことかさっぱりわかりませんでしたが、その先生(カーメーカーの品質保証の方)がわかりやすく教えてくれました。でもどうやってうちの会社にこの変化点管理を導入すればいいのかわからず手探り状態で開始しました。
自分なりにいろいろ考えて、その先生に相談しながら約半年。ようやくたたき台が完成しました。さっそく社内にリリースし、社内の基準としました。基準を新たに導入するにあたり、まずは作業者教育です。まだ変化点管理という言葉が出始めのころでしたので、誰も内容はよく知りません。そこで教育資料を作って、全従業員に教育を行いました。まずは監督者を巻き込んで、定着化を狙って活動しました。変化点管理をやっていると、客先への流出不良が減っていっていることが目に見えてわかるようになりました。変化点管理のルールもやりながら不足があれば追加、不要なら削除というようにPDCAをまわしながら改善していきました。気が付けば、あれだけ品質が悪かった会社がいつのまにか品質有料会社となっていて、お客様から品質改善賞の表彰を受けたりもしました。うちでやっている変化点管理がかなり効果を出しているという評判を聞き、他の会社が見学をさせてほしいと、見学にこられることもよくありました。
こんな流れで品質が向上し、胸を張って会社名を人に言えるまでになりました。頑張ってきてよかったと心ら思うことができました。
皆さんもこの変化点管理に力を入れることで会社の品質は大幅に改善することを実際に体験してほしいです。複雑な管理を導入しても続かないので、ポイントを絞ったシンプルな変化点管理をぜひ実現してください。