上位足と下位足で言うことが違う。仲値トレードの環境認識は「優先順位」を先に決める
仲値トレーダー
4時間足は上に伸びている。 15分足は下を向いている。
どっちを信じればいいのか分からなくて、時間足を行ったり来たりする。
そうしているうちに9時50分。狙っていた場面はもう終わっている。
私も何度も経験あるのですが、分析力の問題ではありません。見る順番を決めていないだけです。
1.環境認識でいちばん多い失敗は「見る順番が毎回違う」こと
環境認識というのは、エントリーの前に今の相場の状態を確認する作業のことです。
上位足で向きを見て、下位足で入る場所を探す。こう説明されますが、実際は両者が違うことを言う日のほうが多いです。
そして困ると、その日の気分に合う時間足を探しにいくようになります。
含み損があると上位足を開いて「まだ上目線だから大丈夫」。 含み益があると5分足を開いて「そろそろ止まりそう」。
順番が毎回違うので、毎回違う結論が出ます。手順が固定されていないだけです。
では、解説していきます。
2.私の13営業日の記録。同じ9時台でも、ロングとショートは別物でした
まずは自分の記録からです。7月20日から8月7日までの13営業日、朝9時台のドル円だけを記録しました。私1人の記録なので、母数は小さいです。
ロングは12回成立。平均エントリー9:24、平均決済9:55で、平均保有は30.6分。
ショートは11回成立。平均エントリー9:54、平均決済9:56で、平均保有は2.2分です。
30.6 ÷ 2.2 = 14.0倍。獲得幅もロング23.2pips、ショート7.9pipsで2.9倍の差でした。
つまり、同じ「朝9時台のドル円」の中に、性質のまったく違う相場が2つ入っているということです。
「今日は上目線か下目線か」を先に決めると、この2つを1つの目線で処理することになります。片方は必ず噛み合いません。
見るべきは向きではなく、今どちらの時間帯にいるのかでした。ここが環境認識の入口だと思っています。
3.判断がブレる原因は2つあります
ここからは一般則の裏づけです。原因は2つあると思っています。
1つ目は、同じ人の判断が日によって動くことです。
北欧の研究者、グリムスタッド氏とヨルゲンセン氏が、専門家7人に同じ課題の見積もりを3か月のあいだに2回ずつ出してもらった実験があります。
同じ人が、同じ課題を見ています。それでも1回目と2回目の差は平均71%、中央値でも50%ありました。
損切り幅に置き換えます。ある日「20pipsだな」と見たチャートを、別の日には34pipsと見る。20 × 1.71 = 34.2pipsのズレです。ロットが同じなら1回のリスクが1.7倍変わります。
2つ目は、情報を増やしても精度が上がらないことです。
シカゴ大学とトロント大学の研究チーム、ツァイ氏らが、予測に使える手がかりを増やしながら正解率と自信の変化を測っています。結果は、自信は情報量に比例して上がるのに、正解率はほとんど上がらなかったというものでした。
月足から5分足まで全部見れば正しくなる気がします。でも上がるのは「よく見た」という感覚のほうです。
しかも時間足を増やすほど矛盾が混ざり、人は見たい結論を選びます。
4.上位足と下位足が食い違うのは、そもそも参加者が違うからです
「矛盾するのはおかしい」と感じている方に、1つデータを紹介します。
国際決済銀行が3年に1度行っている為替市場調査では、2025年4月の世界の1日あたり取引額は9.6兆ドルでした。
内訳を見ると、輸出入企業などの非金融顧客の取引は全体の5%しかありません。残り95%は銀行同士か、投資ファンドや年金などとの取引です。
仲値というのは、この5%側の代表です。輸入企業が決済に使うドルを朝9時55分の基準レートで買う。その事前のフローが9時台の値動きの一部をつくっています。
つまり、9時台のドル円を動かしている力と、日足のトレンドをつくっている力は別のものだということです。
だから食い違って当たり前です。矛盾ではなく、別のことを表示しているだけになります。
ここから優先順位が決まります。触る時間軸に近い情報から順に見る。上位足は方向を決めるためではなく、行ってはいけない場所を除外するために使います。
5.実際のやり方。環境認識を3行のチェックリストにする
では、実際の手順です。その前にもう1つだけ。アメリカの心理学者ドーズ氏、ファウスト氏、ミール氏が科学誌に発表した論文で、専門家の直感と、単純なチェックリストによる判断を比べたものがあります。
多くの分野で、チェックリストのほうが専門家の直感と同等かそれ以上でした。しかも直感で判断していた本人たちは、自分のほうが正確だと信じていたそうです。
判断の質に効くのは情報量ではなく、毎回同じ手順で処理することのほうでした。
- 触る時間足を1つ決める。 私の場合は15分足です。ここが基準になります
- その1つ上の足だけを見て、避ける場所を書き出す。 直近の高値と安値、それだけでOKです。方向は決めません
- 時間帯を確認する。 9時30分台なのか、9時50分台なのか。この2つは別物として扱います
3行です。増やさないことが目的なので、増やさないでください。
書き出したら、チャートを閉じてから判断する。開いたままだと、ローソク足が動くたびに結論が動きます。
6.私の負けパターン
私がやってしまった負けパターンをお伝えします。
- 上位足を見に行く時刻が決まっていない 入る直前に日足を開いて目線が変わり、見送る。5分後に狙っていた形が出ます。
- 前日の結論を持ち越す 昨日レンジと見たから今日もレンジ。確認していないので当然ズレます。
- 含み損が出てから時間足を上げる 「大きい流れではまだ生きている」は、損切りを遅らせる言葉でした。
- 9時30分台と9時50分台を同じ気分で入る 保有時間が14倍違う場面に、同じロットを置いていました。
順番を決める。これが大事だと改めて気付きました。
7.まとめ
覚えて帰っていただきたいのは3行です。
- 環境認識がブレるのは能力ではなく手順を決めていないから。同じ人が同じものを見ても平均71%ずれます
- 時間足を増やしても正解率は上がりません。上がるのは自信です
- 上位足と下位足の食い違いは矛盾ではありません。動かしている参加者が違うだけです
今日やることは一つだけでOKです。
次のエントリーの前に、触る時間足を1つだけ紙に書く。
それだけで、その日の判断を前日と比較できます。比較できないと検証が始まりません。
以上が、環境認識の優先順位の決め方になります。ここまでご覧いただき、ありがとうございました。
環境認識の続きについて
ここに書いたことは、すべて無料で学べる範囲です。ただ、実際にやると次の壁が出てきます。
時間足を切り替えているうちに、狙っていた場面が終わっている。 疲れた日は日足を飛ばし、含み損があると都合のいい時間足だけを見る。 昨日レンジと見たチャートを、今日は上昇トレンドと見てしまう。
これも意志の問題ではありません。毎回同じ基準で確認し続けること自体が重い作業だからです。
その確認作業を、私はnoteにまとめています。
note:環境認識に、毎日何分使っていますか
判断を任せるものではなく、その前の確認作業を引き受けるだけです。使っても負けるときは負けます。
急いで見る必要はありません。まずは3行を紙に書くところから始めてみてください。
