【8月に届く"忘れた頃の税金"】あなたのフリーランス、個人事業税かかる?かからない?
オービット
「確定申告、無事に終わった〜」
そう思って半年近くたった8月。ポストに見慣れない封筒が入っています。差出人は「都道府県税事務所」。開けてみると、そこには数万円の請求書。
——え、税金ってもう払ったよね?
これ、個人事業税というやつです。所得税でも住民税でもない、第三の税金。しかも確定申告からずいぶん時間がたって、すっかり忘れた頃にやってくる。だからネットでは「忘れた頃にやってくる税金」なんて呼ばれています。
私はこの春、2026年6月に個人事業主になったばかりの新米です。開業届を出したとき、いちばん最初に不安になったのが、まさにこの個人事業税でした。「私、これ払うことになるの?いくら取られるの?」と。
正直に言うと、私は最初、この税金の存在すら知りませんでした。所得税と住民税を払えば「税金は終わり」だと思い込んでいたんです。開業仲間に「事業税って払った?」と聞かれて、はじめて「何それ?」と青くなった、というのが本当のところです。
そこで一週間ほど、調べられるだけ調べました。結論から言うと——多くのフリーランスは、そもそも払わなくていい可能性があるんです。しかも、同じような仕事内容でも「名乗り方ひとつ」で課税・非課税が変わってしまう、かなりクセの強い税金でした。
この記事では、私が調べて「これは最初に知っておきたかった」と思ったポイントを、なるべくやさしくまとめます。読み終わる頃には、「自分はかかる側か、かからない側か」の見当がつくはずです。専門用語はできるだけ避けるので、税金が苦手な人も安心して読み進めてください。
そもそも個人事業税って何?「290万円の壁」がすべて
まず大前提から。個人事業税は、フリーランスや個人事業主の“事業のもうけ”にかかる地方税です。都道府県に納めます。
ここでいちばん大事な数字がひとつあります。
290万円。
これは「事業主控除」といって、すべての人に一律で認められている控除です。計算式はこうなっています。
(事業の所得 − 290万円)× 税率(3〜5%)= 個人事業税
見ての通り、所得から最初に290万円がまるっと引かれます。つまり、
- 経費を引いたあとの所得(もうけ)が290万円以下 → 税額は0円。かからない。
- 290万円を超えた分にだけ、3〜5%の税金がかかる。
たとえば所得が280万円の人は、290万円を引くとマイナスになるので、個人事業税はゼロ。所得が390万円の人なら、(390−290)×5%=5万円、というイメージです。

副業や、始めたばかりのフリーランスの多くは、そもそも所得が290万円に届きません。その時点で個人事業税とは無縁、というわけです。
しかも嬉しいことに、所得が290万円以下なら、個人事業税のための特別な申告もいりません。確定申告さえきちんとしていれば、そのデータが都道府県に自動で共有され、「この人は非課税」と判断されて、8月になっても通知書が届かない仕組みになっています。ここは覚えておくと、無駄に身構えずにすみます。
落とし穴は「業種」。70種類に入っているかどうか
「じゃあ290万円を超えたら全員払うの?」というと、そうでもないのが面白いところ。
個人事業税は、法律で決められた70種類の業種(法定業種)に当てはまる場合だけ課税されます。逆に言えば、この70種類のリストに載っていない仕事は、いくら稼いでも個人事業税はかからないんです。
課税される主な業種はこんな感じです。
- 第1種事業(税率5%):物品販売業、請負業、製造業、広告業など。フリーランスに多い“モノを売る・受注して納品する”系はだいたいここ。
- 第3種事業(税率5%):デザイン業、コンサルタント業、理容・美容業、医業など。
- 第2種事業(税率4%):畜産業、水産業など。
いっぽうで、リストに載っていない=非課税の代表格がこちら。
- 文芸・芸術系:作家、漫画家、画家、音楽家、作曲家、書家など。
- 専門職・技能系:通訳、翻訳、学術研究、スポーツ選手、芸能人など。
- その他:農業(作物の栽培)、保険の外交員、社会保険診療にかかわる医療従事者など。
考え方のベースにあるのは、「その人個人の才能・技能で稼いでいる仕事は、“事業”というより“個人の労働”だよね」という発想です。だから作家や画家、スポーツ選手は非課税になっています。
いちばんの落とし穴:「名乗り方」で課税・非課税が変わる
ここからが、私がいちばん「うわ、これは知らなかった」と思ったところです。
まったく同じような仕事でも、契約の形や“何を名乗るか”で、課税と非課税が分かれることがあるんです。境界がめちゃくちゃ曖昧。代表例を挙げます。

● 絵を描く仕事 ── クライアントの依頼で描く「イラストレーター」は、デザイン業として課税。でも、自分の作品を作って売る「画家」は、芸術家として非課税。同じ「絵を描く人」でも扱いが真逆になります。
● プログラマー・IT系 ── 完成品を納品する請負契約のプログラマーは課税対象。でも、企業に常駐してコーディングするような準委任契約の働き方だと、非課税になることがあります。
● 文章を書く仕事 ── これがフリーランスに直結します。ブログの広告収入がメインなら「広告業」として課税。でも、雑誌の原稿料などをもらうライターや小説家は「文筆業」として非課税。同じ「文章で稼ぐ」でも、収入の出どころで変わるんです。
● 動画制作・YouTube ── 企業案件や広告収入がメインなら「広告業」で課税。でも、自分の非課税の本業を宣伝するためにYouTubeを使っているだけなら非課税、という判断もあります。
ここで大事なのは、これらが「自治体ごとに判断が違う」地方税だということ。同じ仕事でも、住んでいる都道府県で結論が変わることが普通にあります。だから「ネットで◯◯業は非課税って書いてあった」を鵜呑みにせず、最後は自分の管轄で確認するのが安全です。
私の場合はどうだったか(同じ立場の人へ)
さて、冒頭で「私は2026年6月に個人事業主になったばかり」と書きました。せっかくなので、自分のケースで当てはめてみます。同じような立場の人の参考になればと思います。
私の収入源は、大きく2つあります。
① 本業:会社(法人)からもらう給与 ── 実は、これが私の主な収入です。ここで一つ、多くの人が誤解しがちなポイントがあります。会社からもらう「給与」は、そもそも個人事業税の対象外なんです。個人事業税がかかるのは“事業所得”であって、“給与所得”は完全に別枠。だから、会社勤めしながら副業でフリーランス、という人の給与部分は最初から関係ありません。私はここで一つ肩の力が抜けました。
② 個人事業:note等での発信・執筆 ── こちらが個人事業主として届け出た部分ですが、始めたばかりで所得はまだごくわずか。当然、290万円の壁のはるか手前です。しかも内容としては文章を書く発信なので、方向性としては「文筆業」寄り。現状の私は、どう転んでも個人事業税はかからない、という結論でした。
さらにタイミングの話も。私が開業したのは2026年6月。初めての確定申告は2027年の年明けで、仮に将来対象になったとしても、通知が来るのは早くて2027年8月。つまり「開業した年にいきなり請求が来る」ことはありません。ここも新米にはありがたい事実でした。
——と、私の場合は「ほぼ心配なし」で着地しましたが、正直、ここにたどり着くまでの数日間はけっこう不安でした。ネットで「個人事業税」と検索すると、「数十万円を請求された」「知らずに滞納していた」という体験談がずらっと出てきて、「私も同じ目に遭うのでは」と本気で心配したんです。実際に調べてみたら、そのほとんどが所得が何百万円もある専業フリーランスの話で、始めたばかりの私のケースとは前提がまったく違いました。“正しく怖がる”ためには、まず自分の前提を知ることが大事だと痛感した瞬間です。
調べる過程で見えてきたのは、“自分がどっち側か”を早めに知っておくだけで、無駄な不安も、無駄な支払いも減らせるということです。特に、事業が伸びて所得が290万円を超えてきたときに、①「そもそも自分は70業種に入るのか」②「入るとしても名乗り方は妥当か」を押さえているかどうかで、結果が変わってきます。今は関係なくても、“未来の自分”のために知っておいて損はありません。
知っておくと得する「考え方」4つ
具体的な書類の書き方までは長くなるので、ここでは「損しないために持っておきたい考え方」を4つだけ、押さえておきます。
1. まず“自分の業種が70種類に入るか”を確認する ── 入っていなければ、原則かかりません。作家・画家・音楽家・スポーツ選手などの非課税業種に該当しそうなら、そこをきちんと主張することが第一歩です。
2. 確定申告書の“事業税の欄”を意識する ── 確定申告書の2枚目には、事業税に関する欄があります。ここに自分の業種を正しく書くことで、「これは法定業種ではない(=非課税だ)」と伝えることができます。何気なく空欄にしたり、実態と違う業種を書いたりしないことが大事です。
3. 実態に合った“名乗り”を選ぶ ── 前述の通り、「イラストレーター」か「画家」か、「広告業」か「文筆業」かで結果が変わります。ウソをつくのはもちろんNGですが、自分の仕事の実態がどちらに近いのかを正しく整理して名乗ることは、立派な自衛策です。
4. 青色申告特別控除は“使えない”ことに注意 ── ここは要注意ポイント。所得税では最大65万円の青色申告特別控除が使えますよね。でも、個人事業税の計算では、この65万円は差し引けません。個人事業税は「所得+青色申告特別控除額 −290万円」で計算するルールで、いったん控除分を“戻して”から計算するイメージなんです。だから「所得税では290万円を切っていたのに、事業税の計算だと超えていた」という食い違いが起こり得ます。290万円ギリギリのラインの人は、ここを見落とさないように。
もし通知書が来ても、あわてない
最後に、「非課税のはずなのに通知が来ちゃった」ケースの話も。
個人事業税は、8月末と11月末の年2回に分けて納めるのが原則です。8月ごろに都道府県から納税通知書が届き、第1期を8月末、第2期を11月末に払う流れです。
もし、自分は非課税業種のはずなのに納付書が届いてしまったら——あわてて払う前に、管轄の都道府県税事務所に相談してください。事情を説明して非課税業種だと認められれば、課税が取り消されるケースもあります。実際、ネット上でも「相談したら取り消せた」という報告がいくつも見つかります。
また、通知が来る前の段階でも、都道府県税事務所から「あなたの仕事内容を教えてください」という質問書(お尋ね)が届くことがあります。ここで自分の仕事が非課税に当たることをていねいに説明すれば、そのまま対象から外れることもあります。
いずれにしても、個人事業税は地方税で、自治体によって判断が違うのが大原則。迷ったら早めに都道府県税事務所に聞く——これがいちばん確実で、いちばん損をしない方法です。役所というと身構えがちですが、私が問い合わせたときも、想像よりずっと丁寧に教えてくれました。
まとめ:あなたはどっち側?
長くなったので、要点だけおさらいします。
- 個人事業税は「所得290万円」と「70種類の業種」の2つがカギ。
- 所得が290万円以下なら、そもそもかからないし、特別な申告もいらない(確定申告だけでOK)。
- 同じ仕事でも「名乗り方・契約形態」で課税/非課税が変わる(イラストレーターと画家など)。
- 給与所得は最初から対象外。会社員の副業フリーランスの給与部分は関係なし。
- 青色申告特別控除(最大65万円)は個人事業税では引けないので、290万円ギリギリの人は注意。
- 通知が来ても、非課税のはずなら都道府県税事務所に相談で取り消せることも。
私自身、開業してみて痛感したのは、「税金は、知っているかどうかだけで手取りが変わる」ということです。難しそうに見えて、要点だけ押さえれば怖くない。むしろ「知らずに払っていた」がいちばんもったいない。
このnoteでは、私が新米フリーランスとして実際につまずいたこと、調べて分かった「最初に知っておきたかったお金の話」を、これからも自分の言葉で発信していきます。確定申告の事業税欄の具体的な書き方や、個人事業主が最初にやるべき節税など、もう一歩踏み込んだ話も順番に書いていく予定です。
「同じところでつまずきたくない」という方は、フォローして待っていてもらえたら嬉しいです。あなたのフリーランス人生が、少しでも“損しない”ものになりますように。
※本記事は一般的な情報の共有であり、個別の税務アドバイスではありません。最終的な判断は、お住まいの都道府県税事務所や税理士にご確認ください。
