ネットのIQテストで7,679円取られた私が、AIに相談して4日で5,490円取り戻した話
オービット
先に結論を書きます。
私はネット上のIQテストをきっかけに、合計7,679円を引き落とされました。そこからAI(Claude)に相談し、4日で5,490円の返金を取り付けました。
この記事は「気をつけましょう」で終わる注意喚起ではありません。
伝えたいのは、AIを「調べもの用の便利な検索窓」として使うのと、交渉の実務パートナーとして使うのとでは、得られる結果がまるで違うという話です。今回の件では、資料の整理、規約の読み込み、法的根拠の洗い出し、交渉メールの作成、相手の返信の解読、そして最後の引き際の判断まで、すべてAIと一緒にやりました。
私は43歳からAIツールを学び始めて、今はAI導入支援を仕事にしています。日々「AIは業務でこう使えます」と人に説明している立場です。それでも、まさか自分のトラブル処理でここまで実務に効くとは思っていませんでした。今回はその一部始終を、包み隠さず全文無料で書きます。
1. 何が起きたか
まず状況を整理します。
- 8月18日:SNS経由で見かけたIQテストを受験。20分ほどかけて全問回答し、結果を見るために199円を決済
- 8月19日:カードから2件の引き落とし(199円/1,990円)。このとき同時に「7日間無料トライアル」が自動で開始されていた(この時点では気づいていない)
- 8月26日:トライアル期間が満了し、本課金として5,490円が引き落とされる
- 8月30日:カード明細アプリを見ていて、身に覚えのない金額に気づく
合計7,679円が、私の口座から消えていました。
種明かしをすると、最初の199円の購入には7日間の無料トライアルが付帯していて、期間内に解約しなければ4週間ごとに5,490円が自動で引き落とされる契約へ移行する設計になっていました。
規約には、たしかにそう書いてあります。読めば分かる話です。ただ、20分かけて問題を解き終えた直後の、テンポよく進む決済画面の流れの中で、そこに立ち止まって気づける人がどれだけいるでしょうか。もし気づかずに放置していたら、年間で約71,000円が自動的に引き落とされていた計算になります。
なお本記事では、特定の事業者について「詐欺である」と断定することはしません。私が実際にどう課金され、どう対応したのかという事実だけを、淡々と書きます。結果として、先方は最終的に返金に応じています。
こういう手口自体は、正直それほど珍しいものではないと思います。「最初は数百円」「結果を見たいという心理につけこむ」「無料トライアルからの自動更新」という組み合わせは、検索すれば似たような事例がいくつも出てきます。ただ、私が今回書きたいのは手口の告発ではなく、気づいたあと、実際にどう動けば取り戻せるのかという、その先の部分です。

2. 最初にやったこと:カードを止める
気づいた瞬間、私が真っ先にやったのは「返金交渉」ではなく「カードを止めること」でした。
理由は単純です。交渉している間にも、次の課金日はやってくるからです。相手にメールを書いている数日の間に、もう一度4週間分の5,490円が落ちてしまっては意味がありません。まず出血を止める。話をするのはそのあとです。この順番を逆にすると、交渉している最中に追加でやられるというケースを、私は過去に他の人の話として聞いたことがあります。
ここまでは、誰かに相談したわけではなく、自分の判断で動きました。AIに相談を始めたのは、この直後からです。
3. AI活用①:スクショを丸ごと投げる
最初にやったのは、手元の資料をいっさい整理せず、そのまま渡すことでした。
具体的に投げたのは次の4つです。カード明細アプリのスクリーンショット、決済時に届いた取引確認メールのスクリーンショット、解約完了メールのスクリーンショット、そして自分がNotebookLMに事前にまとめさせていた「この手口に関する調査メモ」。これらをそのままAIに渡し、「詐欺っぽく騙された感じです。資料を渡すので確認してください」とだけ書きました。

余談ですが、この取引確認メールにはもう一つ奇妙な点がありました。「金額」欄には199円と書かれているのに、すぐ下の「報告金額」欄には1,990円と記載されていたのです。この食い違いも、そのままAIへの相談材料になりました。

解約完了メールのほうは逆に、拍子抜けするほどあっさりしたものでした。「ご契約は正常にキャンセルされました。お試しいただき、誠にありがとうございました。」という、定型文一つだけ。トラブルの深刻さに対して、あまりにもそっけない対応だと感じたのを覚えています。
ここが最初のポイントだと思っています。きれいにまとめてから相談しようとしなくていい。 むしろ混乱している当事者ほど、自分で状況を整理しようとすると、大事な情報がどこかに抜け落ちてしまいます。生の材料をそのまま渡すほうが、結果的に速いのです。
返ってきたのは、次のような整理でした。8月18日の決済に7日間トライアルが付帯していて、8月26日に引き落とされた5,490円がその本課金にあたること。明細に並んでいたもう1件の決済は、実は私が普段から使っている別のサブスクリプションの代金で、今回の件とは無関係であること。被害額の合計は7,679円であること。そして「すでにカードを止めた」のは正しい順序で、出血はもう止まっている状態であること。
自分の頭の中では「なんかいろいろ引かれている」というモヤモヤした状態だったものが、明確な構造として見えた瞬間でした。ここで一段落ち着けたことが、その後の対応を冷静に進めるうえで大きかったと思います。
ちなみにこのとき、「カードを止めたということは、別のサブスク決済も次回は失敗しますよ」という指摘までもらいました。実際そのとおりで、後日そちらの支払い方法も切り替える必要がありました。自分ではまったく気づいていなかった点です。
4. AI活用②:相手の規約を読ませる
ここが、今回の交渉における決定打になった部分です。
事業者のサブスクリプションポリシーのURLをそのままAIに渡し、読み込ませました。すると、次のような条項が見つかりました。
日本の消費者契約法に基づき、購入後8日以内かつサービス未利用の場合、返金を求めることができる
これは相手が自分で用意した、日本の消費者向けの条項です。
私が課金に気づいたのは8月30日。本課金があったのは8月26日。つまりちょうど4日目でした。「今日中に返金要求を送ってください。この期限を過ぎると、この根拠は使えなくなります」と言われて、その日のうちに送りました。
正直に言うと、自力でこの一文を見つけられたかどうかは、かなり怪しいと思っています。この手の利用規約は長くて読みにくく、しかもこちらは腹を立てている状態です。数千字にもおよぶ規約の中から、自分に有利な一文だけを的確に抜き出す作業は、AIが得意で人間が苦手とする作業の典型だと感じました。
5. AI活用③:交渉メールを作る
ここで、多くの人がやってしまいがちな失敗があります。「詐欺だから返金しろ」と、感情のままに書いてしまうことです。
これでは、まず動きません。相手は世界中から同じような苦情メールを毎日大量に受け取っていて、定型のテンプレートで淡々と処理しているからです。感情をぶつけても、その他大勢のクレームに埋もれるだけです。
そこで作ってもらった交渉メールは、次のような構造になっていました。
- 対象取引の特定:請求ID、購入日、課金内容を箇条書きで明示。登録メールアドレスから送信していることも明記する
- 請求理由を番号付きで整理:一回限りの支払いのつもりで、自動更新契約を結ぶ意思はなかったこと。サービスを一切利用していないこと。相手の規約が定める「購入後8日以内・未利用なら返金可」に該当すること。相手の規約が返金対象として認めている「不正または無断取引」にも該当すること。補強として、日本の特定商取引法15条の4(定期購入契約における表示不備に関する規定)にも言及する
- 要求事項を金額付きで明示:返金額、全サブスクリプションの解約、カード情報の削除、個人情報の削除
- 期限と、応じない場合の次の行動:7営業日以内に回答がない場合、国民生活センターの越境消費者センター(CCJ)およびカード発行会社への申し立てを行う旨を明記する
この最後の一項目が、地味に効いたと感じています。「この人は、次の一手をすでに持っている」ということが、文面から相手に伝わるからです。
相手のルールブックの中から、こちらの武器を探す。 これが今回の交渉の核心でした。感情で殴るのではなく、相手が自分で公開している文章を根拠にして、相手自身を動かすという発想です。
実際に送ったメールの書き出しは、こんな雰囲気でした(請求IDなど特定できる箇所は伏せています)。
以下の取引について、返金を請求いたします。 【対象取引】 ・請求ID:●●●●●●● ・購入日:2026年8月18日 ・課金内容:199円/1,990円/5,490円(サブスクリプション課金) 【請求理由】 1. 私は「テスト結果の閲覧」に対する一回限りの支払いとして決済を行ったものであり、自動更新型の契約を締結する意思はありませんでした……
事実だけを淡々と、しかし根拠を積み重ねて並べていく。読み返してみても、感情的な言葉はほとんど出てきません。これがAIと一緒に作ったからこそ保てた温度感だったと思います。
6. AI活用④:返信を解読する
メールを送った当日中に、丁寧な日本語で返信が届きました。要点を整理すると、次のような内容でした。
- サブスクリプションは解約済みで、今後の課金は発生しない
- 5,490円については、購入から8日以内にあたるため返金する
- レポート代1,990円については、デジタル商品として提供済みのため返金には応じられない
- 199円については、特に言及がない
嬉しい気持ちもありましたが、ここでもう一度、返信の内容をそのままAIに読ませて相談しました。返ってきた読み解きが、非常に的確でした。
これは典型的な「部分和解」です。一番金額の大きい部分だけを返して、残りは規約を盾にして断る。相手にとっては、これ以上揉め続けるコストをかけるより、返金してしまったほうが安く済むという計算が働いています。
さらに、こんな指摘もありました。
メールに貼られている結果閲覧リンクは、まだ開かないでください。「支払い後にサービスが提供されなかった場合」という返金の例外条項があるので、今このリンクを開いてアクセスしてしまうと「サービスは提供済みだった」という記録が残り、その主張が使えなくなります。
これには正直、自分では絶対に気づけなかったと思います。メールの末尾に結果を見られるリンクが普通に貼ってあって、私はほとんど無意識にそれを開こうとしていました。善意で貼られているように見えるリンクが、実はこちらの交渉材料を消してしまう仕掛けにもなり得る。 これは今回の件で得た、大きな学びのひとつです。
7. AI活用⑤:引き際を決める
残っているのは1,990円と199円、合計2,189円です。ここをさらに追撃するかどうかを相談しました。
そこで得られた見立ては、率直なものでした。相手の主張(デジタル商品として提供済み)は、相手側の規約と一応整合しているため、これ以上押し切れる可能性は高くない。ただし材料がまったくないわけでもない。最初に届いた取引確認メールでは、単一の請求IDの中に199円と1,990円が並記されていて、「別画面で手動確認された独立したオプション商品」という相手の説明とはやや噛み合わない部分がある。もう一往復してみる価値はあるが、深追いをすれば、それだけ時間のコストがかさむ——という内容でした。
追撃するとしたらどんな文面になるかまで作ってもらったうえで、最終的に私は送らないことに決めました。
2,189円を取り戻すためにやり取りを続けるより、その時間を本業に使ったほうが、確実に上回るリターンになると考えたからです。損切りの判断は、被害額の大小ではなく、時間単価で決める。 これが、今回の件で私がいちばん持ち帰った考え方かもしれません。
ここで印象に残っているのは、AIが「もう諦めましょう」とも「まだ戦いましょう」とも言わなかったことです。判断材料を両方きちんと出したうえで、最終的な決定は私に残してくれた。 相談相手として、これはとても大事な振る舞い方だと思っています。
8. 結果
最終的に、5,490円は返金され、残りの2,189円については、判断として回収を見送りました。
7,679円のうち、約71%を、気づいてからわずか4日で回収したことになります。サブスクリプションもすでに解約済みで、今後の課金が発生することもありません。

9. この経験を通じて、AI導入支援の仕事で気づいたこと
普段、私は法人にAI導入の支援をする仕事をしています。「AIは業務効率化に使えます」「文章作成が速くなります」という説明は、これまでも数えきれないほどしてきました。
ただ今回、自分自身がトラブルの当事者になって初めて分かったことがあります。それは、AIの価値がいちばん出るのは「定型業務の効率化」ではなく、普段やり慣れていない、感情も絡む、しかし放置できない場面だということです。
規約を読み込む集中力、交渉文を組み立てる冷静さ、相手の返信の裏を読む注意力。こうしたものは、動揺している状態の人間からはいちばん失われやすいものです。そこを補ってくれる相手がいるかどうかで、結果はまったく変わります。今回それを、身をもって体験しました。
10. AIに相談するときのコツ
今回の一連のやり取りから、誰でも再現できそうな部分を5つにまとめます。
① 整理せずに、生のまま投げる
スクリーンショットでも、メールの文面でも、自分用のメモでも構いません。きれいにまとめようとせず、そのまま渡したほうが速いです。当事者本人が混乱している状態で情報を整理しようとすると、その過程で大事な情報がどうしても抜け落ちてしまいます。
② 相手の規約のURLを必ず渡す
これが、今回いちばん効いた一手でした。長文の利用規約から、自分に有利な条項だけを的確に抜き出すのは、AIが最も得意とする作業のひとつです。「この規約の中に、私が返金を求められる根拠はありますか」と聞くだけで十分です。
③ 「どう書けばいいか」ではなく「何を主張できるか」から聞く
いきなり交渉文の作成を頼むと、それらしいだけで中身の薄い文章が出てきがちです。先に主張できる根拠をきちんと洗い出してから、それを文面に落とし込む。この順番が逆になると、交渉文そのものの説得力が弱くなります。
④ 相手の返信も、必ず読ませる
意外とここを飛ばしてしまう人が多いのではないかと思います。丁寧な文面であればあるほど、こちらの選択肢をさりげなく狭めるような仕掛けが混ざっていることがあります。今回の「結果閲覧リンク」の一件が、まさにその典型でした。
⑤ 最終判断は、自分でする
AIの仕事は、判断のための材料を出すことです。最終的に決めるのは、あくまで自分の仕事です。ここを混同してAI任せにしてしまうと、あとになって後悔することになりかねません。
この5つは、今回の返金交渉に限った話ではないと感じています。契約書の確認、クレーム対応、値上げ交渉など、「相手の書いた文章の中に根拠があり、それを見つけて筋道立てて主張する」という構造を持つ場面であれば、同じやり方がそのまま応用できるはずです。
11. これはやらないでください
カード番号、セキュリティコード、パスワードは、絶対にAIに貼らないでください。
今回私がAIに渡したのは、カード明細アプリの「店名と金額」だけが写った画面と、事業者から届いたメールの本文だけです。カード番号そのものは、一度も渡していません。相談のために必要な情報と、絶対に渡してはいけない情報は、はっきり分けて扱ってください。
もうひとつ注意点があります。「返金代行します」という内容のDMや広告には、絶対に触れないでください。 こうしたものは、二次被害の温床になっています。頼っていいのは公的な窓口とカード会社だけです。ここは徹底することをおすすめします。
具体的な相談先としては、次の2つを覚えておくとよいと思います。
- 越境消費者センター(CCJ):国民生活センターが運営している、海外事業者とのトラブルを専門に扱う窓口です
- 消費者ホットライン188:局番なしでつながる全国共通の相談ダイヤルです
おわりに
正直、課金に気づいた瞬間はかなり腹が立ちました。
それでも、AIと一緒に規約を読み込み、使える根拠をひとつずつ並べていったことで、4日という短い期間で被害額の7割を回収することができました。感情のままに殴りかかるのではなく、相手のルールブックの中から使える武器を探す。 これは今回の件に限らず、事業を続けていくうえでずっと使える考え方だと思っています。
そして何より実感したのは、AIは「調べるための道具」としてではなく、「一緒に考えてくれる相手」として使ったときに、いちばん力を発揮するということです。ひとりで事業をやっていると、こういう場面でとっさに相談できる相手が、意外と身近にいなかったりします。今回、その空白をAIが埋めてくれた実感がありました。
7,679円の授業料としては、決して悪くない学びだったと感じています。
同じような実体験やAI活用の話は、今後もこのnoteで書いていく予定です。よろしければ、フォローしていただけると嬉しいです。
