「外資IT企業への転職を考えているけれど、英語力が不安で一歩踏み出せない」そんな声をよく聞きます。私自身、日系大手メーカーで働いた後、外資IT企業に転職しました。転職前は「英語ができないと外資は無理だろう」と思い込んでいましたが、実際に働いてみて分かったのは、巷で言われている「外資=英語ペラペラ必須」は必ずしも真実ではないということです。
この記事では、外資IT企業で実際に働いて分かった「本当に必要な英語力」について、リアルな体験をもとにお伝えします。英語力に不安がある方、でも外資IT企業に興味がある方の参考になればと思っています。
第1章:転職前の私の英語力
正直に告白します
転職時の私の英語力は、お世辞にも高いとは言えませんでした。
- 海外留学経験:ゼロ
- 仕事での英語使用:メールとたまにある会議で少し話すくらい
製造業の生産計画部門では、海外拠点とのやり取りも基本的には日本語話者が相手でした。たまに現地の方と話す際も、英単語をつなぎ合わせたような文章で話す程度で、英語を頻繁に使う環境ではありませんでした。
それでも応募した理由
英語力に自信はありませんでしたが、次の理由で外資IT企業への挑戦を決めました。
- キャリアの選択肢を広げたかった
- グローバルな環境で働きたいという憧れ
- 持っている知識や技術を最大限活かせるような環境で働いてみたかった
- 「ダメ元でも挑戦してみよう」という気持ち
今振り返ると、この「とりあえず挑戦してみる」という判断が正解でした。
第2章:面接で求められた英語力
実際の面接プロセス
私が受けた外資IT企業の面接は以下の流れでした。
カジュアル面接:日本人の採用担当者 (日本語)
会社概要の紹介やカルチャー、基本的な福利厚生についての説明を受け、こちらの基本的なスキルや経験を確認されるカジュアルな面接。英語は一切使いませんでした。
1次面接:日本人営業担当者(日本語+英語)
面接の途中に「英語で自己紹介とこれまでの経験を話してもらえますか?」と聞かれました。事前に準備していた内容を何とか話せましたが、正直かなり緊張しました。
2次面接:日本人マネジャー(日本語)
志望動機というよりは、これからどのようなキャリアを築いていきたいかというような質問が多かったです。また、入社した際に身につけて欲しいスキルなどについて話を伺いました。
3次面接:外国人の営業責任者(英語)
転職活動中、最大の山場となったのが、外国人営業担当との1時間のWeb面接でした。正直、画面がつながる直前まで、心臓の音が聞こえるほど緊張していました。しかし、私は「英語力」で勝負するつもりはありませんでした。勝負したのは「準備量」です。聞かれそうな質問をリストアップし、回答のスクリプトを作り、口が覚えるまで徹底的に練習して挑みました。また、相手のバックグラウンドが私と似ていた部分があったのも救いでした。共通の業務経験があったおかげで、「あ、この話なら分かる」と準備していたフレーズと身振り手振りを交えて、自分の言葉で説明しきることができました。
最終面接:複数名のシニアマネージャー(日本語)
各部署のシニアマネージャーやマネージャー4名が参加する中で、事前に与えられたテーマについてプレゼンテーションを行いました。質疑応答も含めて約1時間。すべて日本語で実施されました。
面接官が見ていたポイント
- 英語でコミュニケーションを取ろうとする意欲
- 学習する意欲と成長ポテンシャル
完璧な英語は求められていませんでした。むしろ、「英語環境に飛び込む覚悟があるか」を確認されていたのだと思います。
第3章:入社後に直面した「英語の壁」
最初の1-2ヶ月は正直きつかった
入社してすぐ、想像以上に英語を使う場面が多いことに驚きました。
困った場面①:全社やアジアのミーティング
全社ミーティングは英語で行われました。CEOやCTOが話す内容の半分も理解できず、最初は本当に焦りました。ただ、後で日本人の同僚に確認したり、録画を見返したりすることで何とかフォローできました。
困った場面②:グローバルチームとのメール
海外拠点のチームメンバーとのメールのやり取りが想定以上に多く、最初は1通のメールやチャットを書くのに時間を要していましたが、DeepLやGeminiを徹底的に使い倒して対応していました。
でも、意外と何とかなった
きつかった一方で、「思ったより何とかなる」とも感じました。1番の理由は、やはりツールの最大限の活用です。英語が話せたり聞けたりすることも重要ですが、ミーティングでは、自動字幕を活用したり、英語のドキュメントはDeepLで翻訳してから理解したり、と英語に頼らなくても問題のないような環境を作ることを心掛けました。
第4章:流暢さよりも重要な「必要な能力」
もちろん、英語を全く話さなくていいわけではありません。しかし、求められているのは「美しい発音」や「完璧な文法」ではなく、以下の3つのスタンスだと感じています。
①沈黙しない度胸
文法が間違っていても、単語の羅列でも、「私はこう思う」と発信する姿勢です。JTC(伝統的日本企業)では発言には非常に重い責任が伴うという空気がありましたが、こちらでは「発言しない=会議に参加していないのと同じ」と見なされます。Broken Englishでも、黙っているより100倍マシです。
②数字で語る
すべての報告を数字に置き換えるよう準備してから報告や連絡をするようにしています。英語に自信がないと、どうしても形容詞や副詞に頼りたくなります。
「It’s going well.(順調です)」
「Ideally...(理想的には…)」
しかし、この「順調」の定義が、私と外国人上司の間でズレていたらどうなるでしょう? 後で「話が違うじゃないか」と詰められるのは目に見えています。
「順調です」ではなく、「進捗率は85%です」
「少し遅れています」ではなく、「納期から2日遅れています」
当たり前のことかもしれませんが、数字で語る癖をつけることは、英語力が劣る私にとって、誤解を防ぎ、正確に物事を伝える最大の味方になります。
③専門知識・スキル
少し話は逸れますが、英語ができても、業務の専門知識がなければ元も子もありません。逆に、専門性があれば多少英語が拙くても重宝されます。プロジェクトが上手くいけば、「その内容を教えてくれ」ということもグローバルな環境では起こります。
おわりに:迷っているあなたへ
もしあなたが、「英語が話せないから」という理由だけで、外資IT企業への挑戦を諦めようとしているなら、どうかその切符を捨てないでください。
完璧な英語なんて、入ってからでも遅くありません。いや、もしかしたら一生完璧にならなくてもいいのかもしれません。
必要なのは、ツールを使い倒す柔軟さと、拙い英語でも「準備」と「数字」で食らいつく度胸。そして何より、新しい環境に飛び込もうとする、その好奇心です。
