本音を言えない心理について
アメリカの心理学者ジョン・ゴットマン博士の30年以上にわたる研究によると、長続きするカップルと破局するカップルの最大の違いは「コミュニケーションパターン」にあるそうです。特に、破局するカップルには「批判」「軽蔑」「防御」「石壁(無視)」という4つの有害なコミュニケーションパターンが見られるそうです。
たとえば、「批判」は相手の人格や性格を否定する言葉で、「軽蔑」は相手を見下すような態度です。「防御」は自分の非を認めないで、相手を攻撃することで身を守ろうとする行為です。「石壁(無視)」は相手からの働きかけを完全にシャットアウトしてしまうことです。これらのコミュニケーションパターンが頻繁に見られるカップルは、お互いに傷つけ合って、心が離れていってしまう可能性が高くなります。
ほとんどの人は「これらのコミュニケーションパターンを避けるべきだ」ということを頭では理解していても、実際にはなかなか難しいと感じているのではないでしょうか。それは、私たちの心が複雑な要因によって動いているからです。
2019年の国際恋愛心理学会の調査によると、約78%の人が「相手を傷つけることへの恐れ」から本音を言えないと回答しています。傷つけたくないという「思いやり」が「言えない」の原因になっています。私たちは、相手を傷つけたくない、嫌われたくないという気持ちから、自分の本当の気持ちを隠してしまうことがあります。
特に、日本人は相手の気持ちを察することを美徳とする文化の中で育ってきたため、直接的な表現を避ける傾向があります。しかし、恋愛関係においては、時には自分の気持ちを正直に伝えることが必要です。
では、どうすればこれらの課題を乗り越えて、より良いコミュニケーションを築けるのでしょうか?
健全な恋愛に必要な要素はたくさんありますが、この記事では、心理学や社会学の研究データを交えながら、3つだけご紹介します。
健全な恋愛に必要な3つの柱
1. 心理的安全性:「何を言っても大丈夫」という環境
グーグル社の「プロジェクト・アリストテレス」という研究では、最も生産性の高いチームの共通点として「心理的安全性」が挙げられました。これは恋愛関係にも当てはまります。
心理的安全性とは、「自分の意見や感情を表現しても、相手から否定されたり、見捨てられたりしない」という安心感のこと。2020年の東京大学の研究によると、カップル間の心理的安全性が高いほど、関係満足度が平均40%以上高くなるというデータもあります。
実践方法:
- 相手が話しているときは、スマホを見ないで目を見て聞く
- 「それで?」と促すより「それは大変だったね」と共感する
- 意見が違っても「でも〜」と否定せず「なるほど、そう思うんだね」と受け止める
2. 透明性:包み隠さず、でも思いやりをもって
「正直であること」と「思いやり」は両立できます。ハーバード大学の研究チームは、2018年の調査で「透明性のあるコミュニケーション」と「思いやりのある表現方法」を両立させたカップルの関係満足度が最も高いことを発見しました。
実践方法:
- 「あなたは〜だ」ではなく「私は〜と感じる」と自分の気持ちを主語にする
- 批判したいときは「〜してくれないと悲しい」ではなく「〜してくれると嬉しい」とポジティブに言い換える
- 大事な話は「今大事な話してもいい?」と相手の状態を確認してから始める
3. 定期的なメンテナンス:恋愛のアップデート
スマホもPCも定期的なアップデートが必要なように、恋愛関係もメンテナンスが必要です。カリフォルニア大学の10年追跡調査では、月に一度以上「関係についての対話」を持つカップルは、そうでないカップルに比べて別れる確率が67%低かったというデータがあります。
実践方法:
- 月に一度は「最近どう?」ではなく「私たちの関係はどう?」と聞く時間を作る
- 「〇〇してくれて嬉しかった」という感謝を伝える習慣をつける
- お互いの変化や成長を認め合い、期待も適宜アップデートする
伝え方のコツ:研究が示す効果的な方法
国際コミュニケーション学会の研究によると、メッセージの伝わり方は「言葉の内容」が7%、「声のトーン」が38%、「非言語(表情や姿勢)」が55%を占めるとされています。何を言うかよりも、どう言うかの方が重要です。
実践のコツ:
- タイミングを選ぶ:お互いが疲れていない、時間に余裕がある時に
- 場所を選ぶ:プライバシーが保たれ、リラックスできる環境で
- I(アイ)メッセージを使う:「あなたは〜」ではなく「私は〜と感じる」
- SBIフレームワークを活用:Situation(状況):「〇〇という状況で」Behavior(行動):「〇〇という行動があった時」Impact(影響):「私は〇〇と感じた/思った」
- Situation(状況):「〇〇という状況で」
- Behavior(行動):「〇〇という行動があった時」
- Impact(影響):「私は〇〇と感じた/思った」
最後に:完璧を目指さない
健全な恋愛に必要なのは「完璧なコミュニケーション」ではなく「修復する意志と能力」です。ゴットマン博士の研究によると、長続きするカップルも平均で69%の問題は解決しないまま、ただうまく付き合っているだけだそうです。
大切なのは、言えなかったこと、伝わらなかったことがあっても、何度でも話し合おうとする姿勢。そして何より、お互いを尊重して、理解しようとする気持ちではないでしょうか。
恋愛は完璧な二人がする完璧なものではなく、不完全な二人が少しずつ学び、成長していくプロセスなのかもしれません。あなたの「言えない」が少しでも「言える」に変わることを願っています。