「どうして私は、
こんなことも普通に
できないんだろう」
仕事をしていると、
そんなふうに感じる瞬間は
ありませんか。
周りの人は、
頼まれた仕事を
テキパキ片づけている。
会議になれば、
自分の意見を
スラスラ話している。
上司とのやり取りも
そつなくこなし、
多少嫌なことがあっても、
次の日には
ケロッとしているように見える。
それなのに自分は、
ひとつの仕事に
必要以上に時間がかかったり、
相手の何気ないひと言を
家に帰ってからも
ずっと引きずったり、
「もっとこうすればよかった」
と反省ばかり
してしまったりする。
そんな日が続くと、
「みんなは普通にできているのに」
という言葉が、
少しずつ自分の中に
積み重なっていきます。
そして気づけば、
「自分は仕事ができない」
「社会人として何かが欠けている」
「もっとちゃんとした人に
ならなければいけない」
と、
自信をなくしてしまうのです。

でも、
ここで一度だけ
考えてみてほしいことがあります。
あなたが見ている
その「普通」は、
本当に
みんなの普通なのでしょうか。
もしかすると、
あなたはずっと
誰かの「得意」を見ながら、
それを自分にもできて当然の
基準にしているのかもしれません。
「みんなは普通にできるのに」が、いちばん自信を削っていく
真面目な人ほど、
自分がうまくできなかったときに
理由を自分の中に探します。
「私の努力が足りない」
「もっと効率よく
できるようにならなきゃ」
「気にしすぎる性格を
直さなきゃ」
「もっとコミュニケーションが
上手にならなきゃ」
そうやって、
自分を改善しようとします。
もちろん、
できなかったことを振り返ったり、
新しいことを学んだりするのは
悪いことではありません。
ただ、
ひとつだけ
気をつけたいことがあります。
それは、
「できないことがある」
という事実と、
「自分は人より劣っている」
という評価を
同じものにしないことです。
この2つは、
まったく別の話だからです。
頑張っている人ほど「できない自分」を責めやすい
たとえば、
職場にこんな人が
いたとします。
人前で話すのが得意で、
会議でもすぐに意見を言える。
上司から突然質問されても、
その場で言葉をまとめて
返せる。
そんな人を見ていると、
「社会人なら、
あれくらいできて当然なのかな」
と思ってしまうかもしれません。
そして、
自分が会議で
うまく話せなかった日に、
「あの人はできるのに、
私はできない」
と落ち込む。
でも、
その比較には
あるものが抜けています。
それは、
相手にも
苦手なことがあるという視点です。
その人は、
その場で話すのは得意でも、
細かい作業を
長時間続けるのは
苦手かもしれません。
人との調整は得意でも、
ひとりでじっくり考える仕事には
疲れてしまうかもしれません。
それでも、
あなたから見えているのは、
その人が「できている瞬間」です。
つまり私たちは、
相手の得意な場面を切り取って、
そこだけを
自分と比較してしまうことがあります。
これでは、
自信がなくなるのも
無理はありません。
でも、その「普通」は本当にみんなの普通でしょうか?
職場にいると、
「仕事が早い人」
「説明がうまい人」
「細かいことに気づく人」
「人付き合いが上手な人」
「長時間集中できる人」
さまざまな人がいます。
そして私たちは、
無意識のうちに、
Aさんの仕事の速さ。
Bさんのコミュニケーション力。
Cさんの集中力。
Dさんのメンタルの強さ。
それぞれの人が持つ
一番目立つ長所を集めて、
頭の中に
「普通の社会人」
を作ってしまうことがあります。
でも、
よく考えてみれば、
そんな人は
どこにもいません。
いろいろな人の
得意なところだけを集めて作った、
存在しない理想像だからです。

ところが、
その理想像と
自分ひとりを比較すると、
当然ながら
足りないところばかりが
目につきます。
仕事はもっと早く。
もっと明るく。
もっと気を遣えて。
もっと堂々として。
もっとミスが少なくて。
もっと打たれ強くて。
もっと長く努力できる人に。
こうして、
終わりのない
「自分直し」が始まってしまいます。
自信をなくす比較には、3つのズレがあります
人と比べること自体が
悪いわけではありません。
他人を見ることで、
「こういうやり方もあるんだ」
と気づけることもあります。
問題は、
比べるときの条件です。
自信をなくしやすい比較には、
大きく3つのズレがあります。
1. 他人の「得意」を、自分にもできて当然の基準にしている
まずひとつ目は、
他人が自然にできていることを、
「自分にもできて当然」
と思ってしまうことです。
たとえば、
人との雑談が得意な人は、
初対面の相手とも
自然に話せます。
本人からすれば、
大したことをしている感覚は
ないかもしれません。
その姿を見て、
雑談が苦手な人は
「なんで私は、
あんなふうにできないんだろう」
と思います。
逆に、
文章を書くのが得意な人は、
頭の中にあることを
整理して伝えるのが
自然にできます。
雑談が得意な人からすれば、
「こんな長い文章を
よく書けるな」
と思うかもしれません。
つまり、
人によって
「簡単にできること」は違います。
ところが私たちは、
相手が簡単そうに
やっているのを見ると、
その行動自体が
簡単なのだと思ってしまいます。
ここに、
比較の落とし穴があります。
その人にとって簡単なことと、
あなたにとって簡単なことは、
同じではありません。
2. 相手の「できている部分」だけを見て、自分の苦手と比べている
2つ目は、
他人の強みと、
自分の弱みを
直接ぶつけてしまうことです。
これはかなり不利な比較です。
たとえば、
仕事を処理するスピードが
速い人を見て、
自分は遅いと
落ち込んだとします。
でも、
もしかするとあなたは、
相手よりも慎重に確認するから
時間がかかっているのかもしれません。
小さなミスに
気づきやすいのかもしれません。
相手が見落としたことを、
あとからあなたが
拾っていることも
あるかもしれません。
もちろん、
仕事によっては
スピードを上げる必要もあります。
けれど、
「遅い」
という一部分だけを見て、
「自分は劣っている」
まで話を広げる必要はありません。
比較するなら、
条件をそろえる必要があります。
相手が得意なことと、
自分が苦手なこと。
それだけを並べれば、
自分が負けて見えるのは
当然です。
これは、
100メートル走が得意な人と
自分のタイムを比べて、
「私は運動能力が低い人間だ」
と決めてしまうようなものです。
もしかすると自分は、
長距離なら強いかもしれない。
水泳なら得意かもしれない。
そもそも、
スポーツ以外の場所に
強みがあるかもしれない。
一部分の比較だけでは、
その人全体の価値までは
わかりません。
3. 「できない=劣っている」と意味づけしてしまっている
そして3つ目。
これが、
いちばん自信を削ります。
それは、
できないことがあるたびに、
「自分はダメだ」
という意味を
つけてしまうことです。
仕事が遅かった。
だから私はダメ。
うまく話せなかった。
だから私はダメ。
気にしすぎて疲れた。
だから私はダメ。
長く続かなかった。
だから私はダメ。
こうして見ると、
かなり大きな飛躍があることに
気づくと思います。
本来なら、
「この仕事には時間がかかった」
で終わる話です。
でも、
そこから
「私は仕事のできない人間だ」
まで一気に進んでしまう。

これを繰り返していると、
何か失敗するたびに、
仕事の問題ではなく
「自分自身の問題」
として受け取るようになります。
そうなると、
改善するための振り返りではなく、
自分を責めるための反省会が
始まります。
真面目な人ほど、
ここに入り込みやすいです。
ちゃんとしたい。
迷惑をかけたくない。
期待に応えたい。
そう思っているからこそ、
できなかったことを
簡単に流せません。
でも、
自分を責め続けても、
自分に合う働き方は
見つかりません。
必要なのは、
「どうすれば、
もっと普通になれるか」
ではなく、
別の問いです。
比べるのをやめなくていい。「比べ方」を変えればいい
よく、
「人と比べるのをやめましょう」
と言われます。
でも、
私は完全に比べないようにするのは
難しいと思っています。
職場には人がいます。
SNSを開けば、
誰かの成果が目に入ります。
同年代が昇進したり、
転職したり、
活躍していたりする話を
聞くこともあるでしょう。
人と比べることを
完全になくそうとすると、
今度は
「また比べてしまった」
と自分を責める原因にもなります。
だったら、
比べることをやめるのではなく、
比べ方を変えればいいのです。
「みんなはできる?」ではなく「これは私に合っている?」と考える
誰かを見て
落ち込みそうになったとき、
ひとつ質問を
変えてみてください。
「なんで私はできないんだろう」
ではなく、
「これは私に合っているだろうか」
です。
この質問に変えるだけで、
自分を評価する時間から、
自分を知る時間に変わります。

たとえば、
細かく管理される職場で
苦しくなっているなら、
「もっと我慢強くならなければ」
だけではなく、
「私は裁量がある方が
力を出しやすいのでは?」
と考えられます。
人とずっと関わる仕事で
疲れ切っているなら、
「もっと社交的にならなければ」
だけではなく、
「ひとりで集中する時間がある方が
力を発揮できるのでは?」
と考えられます。
これは逃げではありません。
自分がどんな条件で
動きやすいのかを知ることです。
人にはそれぞれ、
力を出しやすい環境があります。
だから、
苦手が出たときに
すぐ自分を直そうとしなくても
いいのです。
苦手を直す前に「別の場面なら何に使える?」と問い直す
もうひとつ、
試してみてほしいことがあります。
自分の嫌いな部分を
見つけたときに、
「これ、別の場面だったら
何に使えるだろう?」
と考えてみることです。
たとえば、
考えすぎてしまう。
それは、
決断に時間がかかる原因に
なることがあります。
でも別の場面では、
いろいろな可能性を
想像できる力かもしれません。
人の目を気にしすぎる。
それは、
疲れやすさにつながることがあります。
でも別の場面では、
相手の反応や
空気の変化に気づきやすいことでもあります。
慎重すぎる。
動き出すまでに
時間がかかることがあります。
でも、
大きな失敗を防ぐために
事前に確認できる力でもあります。
もちろん、
何でも無理に
長所へ言い換える必要はありません。
苦手なものは
苦手なままでもいい。
ただ、
「苦手だから価値がない」
と決めつける前に、
別の使い道がないかを
見てみる。
それだけで、
自分への見方が
少し変わってきます。

自分の基準がわかると、他人を見ても必要以上に揺れなくなる
人と比べて苦しくなるのは、
相手が優れているからだけではありません。
自分が何を大切にしていて、
何が得意で、
どんな環境なら
力を出しやすいのか。
その基準が
まだ見えていないときほど、
他人の基準を
借りやすくなるからです。
仕事が速い人を見れば、
速さが正解に見える。
話すのが上手な人を見れば、
コミュニケーション力が
正解に見える。
ひとつの仕事を
長年続けている人を見れば、
続けることが
正解に見える。
でも、
正解はひとつではありません。
大切なのは、
相手の得意を
否定することでもなければ、
自分の苦手を
全部肯定することでもありません。
「この人には、
この人の得意がある」
「私には、
私の使いやすい性質がある」
そうやって、
いったん分けて考えることです。
「みんなは普通にできるのに」
という言葉が浮かんだら、
こう言い換えてみてください。
「この人は、
これが得意なんだな」
それだけで構いません。
そこに、
「だから私はダメ」
を足さない。
他人の得意を、
自分の合格ラインにしない。
それだけでも、
比較によって削られていた自信を
少しずつ守れるようになります。
そして、
ここから先で大切になるのが、
「では、自分には
どんな性質があるのか」
を知ることです。
自分では欠点にしか見えない部分も、
見方や使う場所が変わると、
まったく別の役割を持つことがあります。
もし今、
「自分の欠点を
どう捉え直せばいいのかわからない」
「苦手を直すことばかり考えてきた」
「そろそろ、
自分に合う活かし方を知りたい」
と感じているなら、
こちらの記事も
参考にしてみてください。
『その欠点、実は才能です。数秘でわかる「自分を直さず活かす」生き方』

この中では、
数秘という切り口から
自分が持っている性質を知り、
欠点だと思っていた部分を
どう扱えばいいのか、
日常や仕事の中で
どう活かしていけばいいのかを
具体的に整理しています。
大切なのは、
誰かの得意を
そのまま自分の正解にしないこと。
そして、
できない自分を
すぐに直そうとする前に、
「これは本当に
直すべきものなのか」
と一度立ち止まってみることです。
あなたに必要なのは、
もっと誰かに近づくことではなく、
自分がどんな人なのかを
知ることなのかもしれません。
比べる相手を
消す必要はありません。
比べ方を変える。
そこから、
自分への見方も
少しずつ変わっていきます。
