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はじめに
ビジネスの世界では、「何を言うか」だけでなく「どう言うか」が重要です。同じ内容でも、言葉の選び方ひとつで相手の受け取り方が変わり、結果に大きな差が生まれます。上司への報告、クライアントとの商談、会議での発言、メールのやり取り——どのシーンでも、適切な言葉を選ぶことができれば、あなたの信頼度は向上し、仕事の成果にもつながります。
しかし、多くの人が「適切な言葉の選び方」を学ぶ機会がないまま、なんとなくビジネス用語を使っているのが現状です。その結果、「伝わらない」「誤解される」「説得力がない」といった問題が生じてしまいます。
本書では、会話・資料作成・商談の3つの主要なビジネスシーンにおいて、具体的にどのような言葉を使えばよいのかを体系的に解説します。単なる用語集ではなく、実際のビジネスシーンで「すぐに使えるフレーズ」を数多く紹介し、より効果的なコミュニケーションができるようになることを目的としています。
また、章ごとに「具体的なフレーズ」や「実践的な活用例」を交えながら、どのように言葉を選び、伝えればよいのかを詳しく説明しています。本書を読めば、「ただ話す」「ただ書く」のではなく、「伝わる」「影響を与える」言葉を使えるようになる はずです。
まずは、ビジネスにおいて言葉の選び方がなぜ重要なのかを解説する第1章から始めましょう。ここでは、言葉が仕事の成果にどのような影響を与えるのか、良い言葉と悪い言葉の違い、伝わる言葉の基本原則について掘り下げていきます。
第1章:ビジネス用語の基本 ― 言葉の力を理解する
1.1 ビジネスの現場で「言葉」が与える影響
ビジネスの現場では、私たちは常に言葉を使ってコミュニケーションを取っています。上司への報告、同僚との相談、クライアントとの交渉、会議での発言、メールでのやり取り——あらゆる場面で言葉が使われ、それによって仕事の結果が大きく左右されます。
例えば、同じ内容を伝える場合でも、言葉の選び方によって相手の受け取り方が異なります。
例1:「この企画には課題が多く、成功するのは難しいと思います。」例2:「この企画にはいくつかの課題がありますが、それをクリアすれば成功の可能性が高まります。」
どちらの方が前向きな印象を与えるでしょうか?もちろん、例2の方がポジティブで、聞き手に「解決策を考えよう」という姿勢を促すことができます。
このように、言葉は単なる情報伝達の手段ではなく、相手の感情や行動に影響を与えるツール なのです。適切な言葉を選ぶことで、信頼関係を築き、交渉を有利に進め、仕事の成果を高めることができます。
1.2 良い言葉・悪い言葉の違い
ビジネスシーンでは、何気なく使った言葉が誤解を生み、関係を悪化させることがあります。逆に、適切な言葉を選ぶことで、円滑なコミュニケーションが可能になります。
● 悪い言葉の例(ネガティブ・曖昧・攻撃的)
- 「無理です」 → 「難しいですが、こうすれば可能かもしれません」
- 「それは違います」 → 「その視点は興味深いですね。ただ、こういう考え方もあります」
- 「急ぎでお願いします」 → 「◯日までに対応いただけると助かります」
上記のように、直接的すぎる表現や否定的な言葉は、相手にストレスを与え、良好な関係を築く妨げになります。特に、「無理」「できません」「違います」 などの言葉は、できるだけ柔らかい表現に言い換えると、より建設的なコミュニケーションが可能になります。
1.3 「伝わる言葉」の3つの原則
「伝わる言葉」を選ぶためには、次の3つの原則を意識すると効果的です。
- 簡潔さ(Short)ダラダラと長い説明は、相手を疲れさせてしまいます。「結論 → 理由 → 補足」の順番で話す ことで、要点を明確に伝えることができます。例:「この企画は実施すべきです。なぜなら、コストが低く、効果が高いからです。」
- 具体性(Specific)抽象的な表現ではなく、具体的な数字や事例を入れることで、説得力が増します。例:「売上が伸びています」 → 「前期比10%増で売上が伸びています」
- 説得力(Strong)相手の立場や価値観に合わせた言葉を使うことで、共感を得られます。例:「我々の目標は〇〇です」 → 「御社にとって最適な解決策をご提案します」
この3つの原則を意識することで、相手にとってわかりやすく、納得感のある伝え方ができるようになります。
1.4 言葉選びで「信頼」を築くポイント
ビジネスにおいて最も重要なのは、相手に信頼されること です。言葉を通じて信頼を築くためには、次のポイントを押さえましょう。
✅ 「聞き手」を意識する
- 相手の立場や知識レベルに合わせた言葉を選ぶ
- 「専門用語を多用しない」「わかりやすい表現を心がける」
✅ ポジティブな言い回しを意識する
- 「できない理由」ではなく「どうすればできるか」を考える
- 例:「予算が足りません」→ 「この範囲で可能な施策を検討しましょう」
✅ 論理的な構成を意識する
- PREP法(Point→Reason→Example→Point) で話すと説得力が増す
- 例:「この施策を進めるべきです。理由は〇〇だからです。例えば〜。だから、実施すべきです。」
次の章への導入
ビジネスにおいて適切な言葉を選ぶことで、信頼を得たり、交渉を有利に進めたりできることがわかりました。しかし、実際の会話の場面ではどのようなフレーズを使うべきなのでしょうか?
次の章では、「社内コミュニケーションを円滑にするフレーズ」として、上司・部下・同僚との会話で役立つ具体的な言葉の選び方を解説していきます。
第2章:社内コミュニケーションを円滑にするフレーズ
2.1 上司とのやりとり ― 的確な報連相のためのフレーズ
社内でのコミュニケーションの基本は、「報・連・相(報告・連絡・相談)」です。上司とのやりとりでは、要点を押さえた言葉選びが求められます。
(1)報告の仕方 ― 上司が求める情報を簡潔に伝える
悪い例:✖ 「あの件、なんとか進めていますが、まだ結論が出ていません。」良い例:✅ 「A社の件は、現在〇〇まで進んでおり、残る課題は△△です。次のアクションとして□□を予定しています。」
上司は「結論」を求めています。「何が起こっているのか」「何をすればいいのか」を最初に伝えるようにしましょう。
(2)連絡の仕方 ― 必要な情報を適切なタイミングで伝える
連絡のポイントは「早さ」と「具体性」です。
✅ 「○○のプロジェクトについて進捗を共有します。現在、△△の段階です。予定通り進んでいますが、××の部分で調整が必要かもしれません。」
特に、トラブルが発生した場合は、「事実+影響+対策」の順番で伝えるとスムーズです。
✅ 「お客様からクレームがありました。内容は〇〇で、現在の影響としては△△です。対応として□□を検討しています。」
(3)相談の仕方 ― 上司が決断しやすいフレーズ
上司への相談は「選択肢を提示する」のがポイントです。
✖ 「この件、どうすればいいですか?」 → 「ゼロから考えてください」という丸投げになるためNG
✅ 「A案とB案を検討しました。A案のメリットは〇〇、B案のメリットは△△です。どちらが適切でしょうか?」
このように相談すると、上司も決断しやすくなり、的確なフィードバックを受けることができます。
2.2 部下・後輩との会話 ― やる気を引き出すフレーズ
部下や後輩とコミュニケーションを取る際には、「指示」ではなく「納得」を促す言葉が重要です。
(1)指示の出し方 ― 「やらされ感」をなくす伝え方
✖ 「これ、やっておいて。」(丸投げ)
✅ 「この業務をお願いしたい。理由は〇〇で、あなたの成長にもつながると思う。」
理由を伝えることで、納得感を持って取り組んでもらえます。
(2)フィードバック ― 叱るよりも成長を促す言い方
✖ 「なんでこんなミスをしたの?」(責める言い方)
✅ 「このミスの原因を一緒に考えよう。次回防ぐにはどうすればいいと思う?」(成長を促す言い方)
部下を責めるのではなく、「一緒に考える」スタンスで話すと、主体的な行動を引き出すことができます。
(3)褒めるときの言葉 ― 効果的にやる気を引き出す
部下を褒めるときは、「結果」よりも「プロセス」を評価するのがポイントです。
✖ 「すごいね!」(漠然としている)
✅ 「今回の提案、〇〇の部分が特に良かったね。理由は△△だから。」
具体的にどの点が良かったのかを伝えることで、部下の成長につながります。
2.3 同僚との関係を円滑にするフレーズ
同僚とのコミュニケーションでは、「協力を求める」「感謝を伝える」「意見を伝える」の3つが重要です。
(1)協力を求めるときの言い方
✖ 「これ、お願いできますか?」(曖昧で依頼の理由がわからない)
✅ 「このタスク、あなたのスキルが活きると思うのでお願いしたい。期限は〇〇です。」
相手の強みを認めながら頼むと、快く引き受けてもらいやすくなります。
(2)感謝を伝えるときのフレーズ
感謝の言葉は「具体的に伝える」ことが大切です。
✖ 「助かりました!」(何を助けたのか不明)
✅ 「あなたが〇〇を対応してくれたおかげで、△△がスムーズに進みました。本当に助かりました。」
具体的な理由を伝えることで、相手のモチベーションを高めることができます。
(3)意見を伝えるときの工夫
✖ 「私はこう思うけど、どう?」(主張が弱い)
✅ 「〇〇という理由で、私は△△が良いと思います。どうでしょうか?」(論理的に主張する)
意見を伝える際は、「理由+結論+問いかけ」の順番で話すと、納得感を持って受け入れられます。
次の章への導入
社内のコミュニケーションが円滑になれば、仕事の生産性が向上し、チームの協力体制も強化されます。しかし、社外のクライアントや取引先とのやり取りでは、より慎重な言葉選びが求められます。
次の章では、「クライアント・取引先との会話で信頼を得るフレーズ」として、ビジネスの現場で活用できる具体的な表現を詳しく解説していきます。
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第3章:クライアント・取引先との会話で信頼を得るフレーズ
社内でのコミュニケーションと異なり、クライアントや取引先との会話では、より慎重な言葉選びが求められます。一つの発言がビジネスの成否を左右することもあるため、信頼を築くための表現を意識することが重要です。この章では、「初対面」「商談」「クレーム対応」の3つの場面に分けて、実際に役立つフレーズを紹介します。
3.1 初対面・名刺交換の場面 ― 第一印象を良くするフレーズ
ビジネスでは「第一印象」が非常に重要です。特に、初対面のクライアントや取引先とは、最初のやり取りで信頼感を与えることが求められます。
(1)自己紹介のフレーズ
NG: 「〇〇株式会社の△△です。よろしくお願いします。」(ありきたりで印象に残らない)✅ 「〇〇株式会社の△△と申します。弊社では□□の事業を展開しており、今回の件で貴社とご一緒できることを楽しみにしています。」
ポイントは、「相手との共通点」や「関心を引く一言」を加えることです。
(2)名刺交換時のフレーズ
NG: 「名刺交換、お願いします。」(形式的すぎる)
✅ 「名刺をお渡しします。〇〇の担当をしております△△です。貴社の△△について以前から関心があり、本日お話しできることを楽しみにしておりました。」
このように一言添えることで、スムーズに会話が始まります。
3.2 商談・打ち合わせで使えるフレーズ
商談や打ち合わせでは、クライアントのニーズを引き出しつつ、こちらの提案を効果的に伝えることが求められます。
(1)話をスムーズに進める「共感の一言」
相手の話をしっかり聞き、共感を示すことで、関係がスムーズになります。
✅ 「なるほど、その点は確かに重要ですね。」
✅ 「〇〇の課題について、私たちも同じように考えています。」
共感を示すことで、相手は安心して意見を述べやすくなります。
(2)クライアントの要望を引き出す質問力
✖ 「ご要望はありますか?」(漠然としていて答えにくい)
✅ 「現状の〇〇について、特に課題に感じている点はありますか?」
具体的な質問をすることで、相手のニーズを引き出しやすくなります。
(3)断りづらい提案の言い回し
✖ 「このプランでどうでしょう?」(YES/NOで答えやすい)
✅ 「このプランのA案とB案では、どちらが貴社に合いそうでしょうか?」
選択肢を提示することで、よりスムーズに話を進めることができます。
3.3 クレーム・トラブル対応 ― 感情を逆なでしないフレーズ
クレーム対応では、相手の不満を受け止めながら、冷静に解決策を提示することが求められます。
(1)謝罪の言葉選び
✖ 「申し訳ありませんでした。」(機械的で不十分)
✅ 「ご迷惑をおかけし、申し訳ありません。今回の件について、詳細をお伺いできますでしょうか?」
謝罪とともに、「話を聞く姿勢」を示すことが重要です。
(2)クレームをポジティブに変える話し方
✖ 「それは規則なので対応できません。」(突き放した印象を与える)
✅ 「その点については、別の方法で対応できる可能性があります。例えば〜。」
問題点を指摘するのではなく、解決策を提示することで、前向きな会話になります。
次の章への導入
クライアントや取引先との会話では、言葉の選び方ひとつで信頼関係を築くことができます。特に、商談やクレーム対応では、適切なフレーズを用いることで、交渉を有利に進めることが可能です。
次の章では、「説得力を増すプレゼン・提案の言葉」として、プレゼンの導入からクロージングまで、効果的なフレーズを紹介していきます。