アメリカ経済において、無視できない変化の兆候が現れ始めました。その起点となったのは、先日発表されたPPI(生産者物価指数)の結果です。
なぜ今、スタグフレーション(景気後退とインフレの同時進行)の可能性を考慮すべきなのか。最新のデータと、その背景にある構造的な要因について、一つの視点をお伝えします。
1. PPIの結果が示す「企業のインフレ」
まずは、直近のPPIの結果を振り返ります。
• 11月 PPI(前年比)
• 市場予想: 2.6%
• 結果: 3.0%
予想を大きく上回る伸びを見せました。PPIは「企業のインフレ指数」とも呼ばれます。
この数値が上昇している背景には、輸入コスト、とりわけ関税による負担が影響しているのではないかと私は考えています。
2. 関税のメカニズムとインフレへの影響
関税は、一義的には「輸入した側の企業」が支払う税金です。企業にとってこれはダイレクトなコスト増となります。
企業が利益を維持するためには、上昇したコストを販売価格に転嫁せざるを得ません。
そうなれば、最終的な負担は消費者に回ることになります。米国はこれまで長くインフレに苦しんできましたが、関税という障壁が加わることで、金利を下げたくても下げられない状況が続いてました。
3. 企業努力の限界と「関税のツケ」
これまで米国経済が、高い金利を維持しながらもインフレをある程度抑制し、緩やかな利下げ局面を模索できていたのは、各企業のたゆまぬ努力があったからだと捉えています。
しかし、コスト増を自助努力で吸収するのにも限界があります。今回のPPIの上昇は、いわば「企業努力の限界」が近づき、溜まっていた関税のツケが表面化し始めたサインのようにも見受けられます。
4. スタグフレーションの兆候をどう捉えるか
スタグフレーションとは、物価上昇(インフレ)と景気後退が同時に進行する状態を指します。現在の米国市場を見渡すと、いくつかの相反するデータが混在しています。
• CPI(消費者物価指数): 鈍化の傾向
• PPI(生産者物価指数): 上昇
• 雇用: 求人枠の縮小傾向
• 個人消費: 11月の小売売上高は堅調(ただし、ブラックフライデーによる一時的な影響の可能性)
これらを総合すると、現時点でスタグフレーションが「確定」したわけではありません。しかし、その兆候は明確に現れ始めているというのが、現在の私の分析です。
5. 今後の戦略:不透明な時こそ哲学に立ち返る
今後の注視すべき指標は、引き続き「PPI」の推移、そして「失業率」です。失業率に本格的な上昇の兆候が見えれば、経済へのインパクトはさらに強まるでしょう。
このような局面において、私の投資戦略に変わりはありません。
• 大きく動かない: 市場のノイズに惑わされず、静観する。
• 価格を待つ: 割安、あるいは適正価格になるまで無理に買わない。
• 本質を見る:
• フリーキャッシュフロー(FCF)を生み出せる構造があるか。
• 豊富なキャッシュを保有しているか。
• 10年後もそのビジネスが存在し続けているか。
スタグフレーションの兆候という厳しい環境下だからこそ、この投資哲学を愚直に守り、信頼できる企業にのみ目を向けていきたいと考えています。
まとめ
市場が不安定な時ほど、短期的な利益や恐怖に流されず、思考のプロセスを整理することが重要です。今回のPPI上昇を一つの警鐘として捉え、長期的な視点で企業価値を見極める姿勢を大切にしていきます。
