
AIは、こちらが出した案をだいたい褒めてくれます。
「いいアイデアですね」「実現できそうです」と返ってくると、考えが整理された気がします。背中を押してほしいときには助かりますが、店舗で実行する案を決める場面では、肯定だけで進めると見落としが残ります。
僕は普段、2店舗を経営しながら、店舗集客の自動化をして、3年以内に10店舗を目標に活動しつつ、AIの活用サポート/AIを使った自動集客の仕組みづくり/AIに関するセミナーを行っています。実店舗では、よさそうな案でも、人員、告知、受付、既存業務との重なりなど、動かして初めて見える条件が少なくありません。
そこで僕は、案を考えてもらう役だけでなく、「反対役」もAIにお願いしています。目的は案を否定することではありません。動き出す前に止まりそうな場所を見つけ、直す順番を決めることです。
褒められたまま進めると、動き出してから手が止まる
AIはこちらの意図をくみ取り、会話を前に進める答えを返そうとします。そのため、こちらが「この案はどうですか」と聞くと、案のよいところを拾いながら改善案を足す流れになりやすいです。
ただ、案の魅力と実行のしやすさは別です。たとえば新しい企画そのものはよくても、受付を誰が担うのか、既存のお客さまへの案内とぶつからないか、問い合わせが増えたときに対応できるかが曖昧なら、開始直前や開始後に手が止まります。
この状態でさらにアイデアを足すと、やることだけが増えていきます。必要なのは新しい案ではなく、「何が原因で止まるか」を先に確認することです。
- 案のよさを評価する会話と、弱点を探す会話を分ける
- 「改善点はありますか」ではなく、「実行を止める弱点」を聞く
- 弱点を全部直そうとせず、直す順番まで決める
反対役をお願いする3行

使うのは、次の3行です。先に自分の案を具体的に書き、その下へ続けて貼り付けます。
次の案に賛成するのではなく、実行を止める可能性がある弱点を反対役として5つ挙げてください。
各弱点を「起きやすさ:高・中・低」「起きたときの影響:大・中・小」「理由」の順で示してください。
最後に、起きやすい順に並べ直し、先に直す2つだけを選んで、最小限の修正案を出してください。ポイントは「反対してください」だけで終わらせないことです。それだけだと、細かな欠点や極端な反論まで並び、判断材料が増えすぎます。ここでは「実行を止める可能性」に絞り、評価の項目と、最後に選ぶ数まで指定しています。
掲載前の検証では、2店舗で同じ体験企画を始め、既存の発信と店内掲示で案内し、通常業務の担当者が受付も兼ねる、というサンプル案を入力しました。AIは、受付負荷、店舗ごとの条件差、案内の届き方、判断材料の不足、既存業務との衝突を弱点として分け、指定した形式で整理できました。
先に直す候補:①通常業務と受付が重なる時間を確認し、受付方法を一つに絞る。②2店舗を同時に固定せず、開始前に店舗ごとの人員と導線を確認する。実際にAIが出力した文章(一部)
この出力は、案を無条件に否定せず、止まりやすい場所を具体化できていました。一方で、AIは現場の正確な混雑や担当者の状況を知りません。出力は決定ではなく、現場で確かめる項目として使います。
出た弱点の並べ替え方

弱点が5つ出たら、怖そうな順ではなく「起きやすい順」に並べます。影響が大きく見える話ほど目を引きますが、めったに起きない事態ばかり考えると、準備が重くなって企画を始められません。
最初に見るのは、今の人員や運用のままで起こりそうかどうかです。次に、起きた場合にお客さまや通常業務へどの程度影響するかを見ます。同じ「起きやすさ」なら、影響が大きい方を上へ置きます。
- 現状のまま実施したときに起きやすいものを上へ置く
- 起きやすさが同じなら、影響が大きいものを上へ置く
- 現場で事実確認できるものには、確認する担当と期限を添える
- AIの推測と、すでに確認できている事実を混ぜない
たとえば「受付が通常業務と重なる」は、実際の時間帯と担当表を見れば確かめられます。反対に「企画の反応が想定より弱い」は、始める前には断定できません。前者は開始前の確認、後者は開始後に見る観察項目として分けます。
直すのは上位2つだけ、残りは「起きたら考える」
弱点を全部直してから始めようとすると、準備のための準備が増えます。そこで、並べ替えた上位2つだけを開始前に直し、残りは「起きたら考える」に置きます。
ここでいう「起きたら考える」は放置ではありません。起きたことが分かる合図と、そのとき最初に確認する人だけを決めておく方法です。たとえば問い合わせ対応が詰まったら受付方法を見直す、店舗ごとの差が出たら運用を分ける、という程度の短いメモを残します。
修正案も大がかりにしません。新しい仕組みを増やす前に、受付窓口を絞る、実施時間をずらす、案内文に対象者を一文足すなど、止まりやすさを下げる最小限の変更を選びます。
うちの教室の判断で使うと、こんな流れになります
固有名や個別の条件は伏せますが、僕が店舗の判断をするときは、次のように進めます。例として、2店舗で同じ時期に新しい体験企画を始めるかを考える場面に置き換えます。
- まず自分で、目的、対象、実施時期、受付方法、担当者を書き出す
- AIには案を広げさせず、3行の指示で反対役をお願いする
- 出た弱点を、担当表や店内の動線など確認できる事実と照らす
- 起きやすい順に並べ、上位2つだけ開始前に修正する
- 残りは起きたと分かる合図を一言残し、企画を動かす
仮に上位が「受付と通常業務の重なり」「2店舗の条件差」なら、まず受付時間と方法を整理し、次に各店舗で同じ運用が可能かを確認します。告知文の細かな言い回しや、まだ起きていない例外対応は、その時点では広げません。
この順番にすると、AIの役割が「正解を決める人」ではなく「見落としを探す人」になります。最終判断は、現場の事実を持っている僕たちが行います。
反対させすぎると動けなくなるので、線を引いておく
反対役は便利ですが、何度も反対させると、どんな案にも新しい不安を作れます。弱点を直した案をもう一度見せ、さらに反対させ、また直す。この往復を続けると、判断の質より迷いが増えてしまいます。
僕が線を引くなら、「反対役は1回」「弱点は5つ」「開始前に直すのは2つ」です。上位2つを修正したら、法令、安全、契約など別途確認が必要な事項がない限り、小さく動かして実際の反応を見ます。
また、AIの指摘に根拠が見当たらないときは、そのまま採用しません。「それは何を前提にした推測ですか」と聞き返し、現場で確認できる質問へ変えます。AIに反対させることと、AIの答えを信じ切ることは別です。
まずは今週の判断ひとつで試してみてください
新しい企画だけでなく、営業時間の変更、告知方法、スタッフへの渡し方、備品の追加など、店舗には小さな判断が続きます。その中から、すでに決めかけているものを一つ選んでください。
案を具体的に書き、3行の指示で反対役をお願いし、起きやすい順に並べる。そして上位2つだけ直して動く。これなら、褒められて安心するためではなく、止まりそうな場所を先に減らすためにAIを使えます。
大切なのは、弱点をなくすことではありません。見落としを減らしながら、動けるところで線を引くことです。まずは今週の判断ひとつで試してみてください。
こうした店舗経営とAI活用の実例は、ThreadsやInstagram(@tatsuya.nishiwaki_)でも発信しています。必要なときに、のぞいてみてください。
