
2店舗を経営していると、人を増やすかの話になります
「そろそろ人を増やさないと回らない」と思ったときに起きること
予定が埋まり、返事が遅れ、閉店後も事務が残る。そんなとき、もう一人いたら楽になるのに、と考えたくなります。僕も2店舗を経営する立場として、人の数と自分の時間は分けて考えたいと思っています。
たとえば、スタッフに仕事をお願いしたのに、資料の場所を教え、判断を聞かれ、最後は自分で仕上げる。これは説明用の場面ですが、作業する人が増えても、判断の入口が自分に集まったままだと起きやすいことです。
今回扱うのは、採用の是非をAIに決めさせる話ではありません。増員を考える前に、いま持っている仕事から「渡せる一つ」を見つけ、渡す準備をする手順です。読み終えたら、仕事名と完了条件が書かれた一枚を手元に残せます。
増やしても手が空かないのは、渡す仕事が決まっていないから
人を増やしても忙しい理由は一つではありません。仕事量そのものが多い場合も、慣れるまで時間が必要な場合もあります。そのうえで、最初に点検したいのが「何を、どこまで渡したか」です。
「事務をお願い」「在庫を見ておいて」だけだと、終わりが見えません。受け取った人は、間違えないよう何度も確認します。その確認に答えるたび、あなたの作業が止まります。
ここで「自分でやったほうが早い」と全部引き取ると、次も同じ場所で止まります。相手の能力を評価する前に、材料、判断の基準、完成した状態が共有されていたかを見ます。
仕事の渡し方は「業務名」より「成果物」で決めると具体的になります。在庫管理を丸ごと渡す代わりに、確定した在庫表から不足品の候補メモを作ってもらう。購入を決める工程は自分に残せます。
1週間の仕事を3つに分ける

まず直近1週間の予定、送った連絡、作った資料を見返します。記憶だけで立派な業務一覧を作らず、「実際に手を動かしたこと」を一行ずつ書き出してください。所要時間が分からないものは、無理に数字を埋めなくて構いません。
- 自分しかできない仕事:いまの役割や権限では、自分に残す必要がある判断。
- 手順をそろえれば渡せる仕事:必要な情報、操作方法、完了条件を共有できる作業。
- そもそも要らない仕事:使い道がなくなった可能性があり、必要性を確かめる作業。
図の2つ目は、経験や権限が不要という意味ではありません。担当する人が必要な情報を見られ、手順を試せることが前提です。1つ目も永久に自分にしかできないと決めず、現時点の分類として扱います。
たとえば備品の仕事なら、「在庫表を確認する」「不足品を並べる」「購入する物を決める」「注文する」に分けます。表を読む作業と、お金を使う判断を同じ箱に入れないことが大切です。
また、昔から同じ情報を別形式の週報へ写しているなら、その週報を誰が何の判断に使っているかを確認します。用途が不明なだけで、すぐ不要とは決めません。必要な記録まで消さず、使い手を確かめてから見直します。
AIに分けさせる前に、うちの店舗の前提を先に渡す
仕事の一覧だけをAIに見せると、現場の権限や事情を含まない分類案になることがあります。先に、自分の事業で任せられる条件を書きます。長い会社紹介より、今回の仕事の境界が分かる情報が役立ちます。
- 目的:自分に戻る日常の確認を減らし、判断が必要な仕事に時間を使いたい。
- 対象:まずは顧客対応を含まない、社内の備品資料に絞る。
- 権限:担当者は在庫表を閲覧し、候補メモを作れる。購入の決定は自分に残す。
- 基準と期限:最低在庫数の記載場所、提出日時、保存先を決める。
- 例外:数値が欠けている、記録が食い違う場合は補完せず相談する。
これは説明用の前提例です。実際には、自分の店舗で確定している条件に置き換えます。顧客名や連絡先を含めなくても、仕事の流れと判断の境界は説明できます。
AIとの作業は、前提を渡す、仕事メモを追加する、三分類の案と理由を受け取る、元のメモと照合する、の順で進めます。最初から分類と手順書と研修資料をまとめて完成させようとせず、分類が合っているかを先に見ます。
確認するのは「渡せる」とされた理由です。担当者が見られない資料を使う案や、未設定の基準をAIが作った案なら、そのまま採用しません。分からない条件は未確認として残し、自分が埋めてから次へ進みます。
渡す仕事を1つだけ決めて、5ステップの手順に縮める
候補が出たら、繰り返し発生し、材料がそろい、完成を見れば終わりが分かる仕事を一つ選びます。最初は、外部への送信や購入の確定を含まない範囲が試しやすいです。新しく複雑な道具を入れるより、いまの共有フォルダとメモで形にできます。
ここでは架空例として「確定した在庫表から不足品の候補メモを作る」を選びます。AIには採用した分類と確定した条件を渡し、動作ごとに手順を整理させます。出てきた手順に、元の仕事にない判断が増えていないかを確認します。
- 共有フォルダで対象週の確定済み在庫表を開き、版を確認する。
- 現在数が最低在庫数を下回る品目を拾う。
- 品目、現在数、最低数、不足数、参照した版を候補メモに記入する。
- 元の表と照合し、欠損や食い違いがあれば、その箇所を分けて相談する。
- 確認できたメモを指定先へ保存し、完了または相談待ちの状態を知らせる。
不足数は、この例では最低数から現在数を引いた数です。発注単位や予算を考慮した購入数ではありません。候補メモを作ることと、注文してよいことを混ぜないようにします。
完成見本も一行添えます。架空例なら「備品A/現在2/最低5/不足3/参照:対象週の確定版」です。在庫不足がなければ「該当なし」と残し、未着なのか、調べて該当しなかったのかを区別します。
5ステップは、手順を短く読めるようにする目安です。一つの番号に大量の操作を押し込む必要はありません。収まらないなら「在庫管理」から「候補メモ作成」へ、さらに仕事の範囲を小さくします。
渡す前に用意する3点

手順ができても、これだけは手元にそろえます。AIの文章がきれいかより、受け取った人が止まらずに動けるかを見るための3点です。
- 判断の基準を1行で書く:確定版の最低在庫数を下回る品目を候補にし、購入は決めない。
- 手順を5ステップまで縮める:何を開き、何を記入し、どこへ置くかが順に読める形にする。
- 迷ったときの相談先を決める:記録の食い違いは自分へ相談し、不在時の連絡先も決める。
この3点に、成果物の見本と提出日時を添えれば、口頭の説明を毎回やり直さずに済む土台になります。最初の一回は一緒に試し、相手が止まった箇所を手順に書き足してください。
「分かりましたか」と聞くだけで終わらず、同じ材料で候補メモを作れるかを見ます。資料が開けないならアクセスの準備不足です。数字を選べないなら基準の不足なので、説明を増やす場所を分けて直します。
渡したあとの確認は週1回でいい|見る項目を2つに絞る
初回の試行を終え、手順が安定した定型作業なら、振り返りを週1回にまとめる設計ができます。すべての仕事を週1回しか見ないという意味ではありません。期限が迫る未処理、記録の食い違いなどは、その場で相談する流れを残します。
- 期限内に完了したか:完成したメモ、該当なし、相談待ちを区別して確認する。
- 自分に戻った確認・修正の内容と時間:どこで説明や手直しが必要になったかを記録する。
完成件数だけを見ると、自分の確認が増えていても成功に見えてしまいます。二つ目を見ることで「作業は渡ったけれど判断が戻っている」状態に気づけます。最初に教えた時間と、毎週繰り返す確認の時間は分けて残します。
時間を比べるときは、仕事の量や難しさが違わないかも見ます。記録がなければ削減できたと断定せず、次の一週間から測れば大丈夫です。毎回同じ質問が来るなら、その答えを基準か見本に一つ追加します。
AIは、この確認記録を似た原因ごとに整理する補助にも使えます。採用する改善は一つに絞り、翌週の戻り方を見て判断します。人を増やす検討も、その時点で残っている仕事量をもとに進められます。
今日15分でできること
今日のゴールは、採用を決めることでも、手順書を全部完成させることでもありません。「渡す仕事を一つ選び、何ができたら終わりかを書いた一枚」を作ることです。15分は取り組む時間の目安として使ってください。
- 最初の5分:直近1週間に繰り返した仕事をメモし、三つに仮分類する。
- 次の5分:渡す候補を一つ選び、使う資料、自分に残す判断、完成した状態を書く。
- 最後の5分:手順を5ステップ以内に整理し、相談先と最初に試す日時を添える。
完了条件は、仕事名、材料、完成条件、手順、相談先が一枚にあることです。決められない欄は未確認と書き、誰に何を確認するかを添えれば、準備の次の行動まで決まります。未確認のまま実務を渡す必要はありません。
人を増やす話の前に、自分の手元の仕事を小さくほどいてみる。AIには、その整理と手順の言語化を手伝ってもらう。僕はまず、ここから考えるのがよいと思っています。
普段、2店舗を経営しながら、店舗集客の自動化をして、3年以内に10店舗を目標に活動しつつ、AIの活用サポート/AIを使った自動集客の仕組みづくり/AIに関するセミナーを行っています。日々の気づきはThreadsやInstagram(@tatsuya.nishiwaki_)でも共有しています。
