「あれ、どこに置いたかな」と、鍵や書類を探して家じゅうを歩き回る。出かける前の忙しい時間に限って、そういうことが起きて、気持ちまで慌ててしまう。以前の私は、そんな場面がとても多い人間でした。探し物をしている時間は、振り返ってみると意外と長く、しかもその間はずっと落ち着かない気持ちが続きます。せっかく早めに準備を始めたのに、探し物のせいで結局ぎりぎりになってしまう、ということも珍しくありませんでした。今回は、そんな探し物の時間を少しでも減らすために、私が日々続けている小さな習慣を、体験を交えながらお話しさせていただきます。どれも特別な道具がいるわけではなく、今日からでも始められることばかりですので、気になったものだけでも取り入れていただけたら嬉しいです。あくまで私に合っていたやり方ですので、ご自身の暮らしに合う形にゆるやかに変えていただければと思います。
「置き場所を決める」だけで探し物は減る
いろいろ試してきて、いちばん効果を感じたのは、よく使うものの置き場所をあらかじめ決めておくことでした。鍵はここ、財布はここ、と決めておくと、帰ってきた時に自然とそこへ戻すようになり、次に使う時も迷わなくなります。以前の私は、その日の気分でとりあえず近くに置いてしまい、あとで思い出せなくなる、ということを繰り返していました。置き場所を一つに決めるというのは、当たり前のようでいて、意外と続けるのが難しいものです。けれども、一度習慣になってしまえば、探すという行為そのものがぐっと減っていきました。ポイントは、使う場所のなるべく近くに定位置を作ることです。使う場所と戻す場所が離れていると、どうしても面倒になって続かないからです。まずは一番よく失くすものから、定位置を決めてみるのがおすすめです。
戻す動作を「ついで」にしてしまう
置き場所を決めても、そこへ戻すのを忘れてしまっては意味がありません。そこで私は、戻す動作を別の行動の「ついで」にしてしまうようにしました。たとえば玄関で靴を脱ぐついでに鍵を決めた場所に掛ける、上着を脱ぐついでに財布を定位置に置く、という具合です。何かのついでにしてしまうと、わざわざ意識しなくても体が動くようになり、忘れにくくなります。新しい習慣を一から作ろうとすると気が重いものですが、すでにある習慣にくっつけてしまうと、驚くほど自然に続けられるように感じました。人は、まったく新しいことを始めるより、いつもの流れに少し付け足すほうがずっと楽なのだと思います。小さな工夫ですが、これだけで戻し忘れがずいぶん減り、探し物の回数も目に見えて少なくなりました。
「一時置き場」をひとつだけ作る
とはいえ、すべてのものにきちんと定位置を作るのは大変ですし、帰宅直後は疲れていて片づける気力がないこともあります。そこで私は、細かいものをとりあえず置いておく「一時置き場」を一つだけ用意しました。玄関近くに小さなトレーを置いて、郵便物や小物はまずそこへ入れる、という決まりです。あちこちに散らばらず、一か所に集まっているだけで、探す範囲がぐっと狭まります。大切なのは、一時置き場を増やしすぎないことです。いくつも作ると結局どこに置いたか分からなくなるので、あくまで一つに絞るのが、私にはちょうどよいようでした。そして、週末などに一度だけその一時置き場を空にして中身を片づけると、物が溜まりすぎず、いつも使いやすい状態を保てるように感じています。
寝る前や出かける前に「ひと目確認」
探し物で朝慌てないために、私は前の晩のうちに、翌日必要なものをひと目確認するようにしています。鞄の中に必要なものが入っているか、明日着る服はどれか、といったことを、寝る前に軽く見ておくのです。ほんの一分ほどのことですが、これをしておくと朝の気持ちがずいぶん落ち着きます。慌てている時ほど、あるはずのものが見つからず、焦ってさらに見つからない、という悪循環に陥りがちです。前もって一度確認しておくだけで、その悪循環に入りにくくなりました。もし足りないものに気づいても、夜のうちなら落ち着いて対応できます。夜の小さな準備が、翌朝のあわてん坊な自分を助けてくれるように感じていて、今ではすっかり手放せない習慣になりました。
「増やさない」ことも探し物対策になる
探し物が多かった頃を振り返ると、そもそも物が多すぎたのだと気づきました。物が多いと、それだけ置き場所も分散し、どこに何があるか把握しきれなくなります。そこで、新しいものを一つ迎えたら、似た役割の古いものを一つ手放す、というゆるやかな目安を持つようにしました。無理に断捨離をするのではなく、少しずつ量を保つイメージです。持ち物が把握できる範囲に収まっていると、探すこと自体が減っていきます。物を減らすというと大げさに聞こえますが、増やしすぎないと意識するだけでも、暮らしはずいぶん軽くなるように感じました。数が少なければ、一つひとつを大切に使うようにもなり、結果として身の回りが気持ちよく整っていくのを実感しています。
よく使う場所ほど「見える化」する
引き出しや戸棚の中は、閉めてしまうと何が入っているか忘れがちです。私は、よく開ける場所ほど、開けた瞬間に中身が分かるように整えるようにしました。ざっくりと種類ごとに分けて、ひと目で見渡せるようにしておくだけで、奥に埋もれて忘れる、ということが減ります。きっちり細かく仕切る必要はなく、「だいたいこの辺」が分かれば十分でした。見える状態にしておくと、使ったあとも戻す場所が分かりやすく、自然と整った状態が保たれます。奥にしまい込んだものほど存在を忘れて、同じものをまた買ってしまう、ということもありました。しまい込むより、ほどよく見えるようにしておくことが、探し物を減らす近道だと感じています。
デジタルの探し物も同じ考え方で
探し物は、家の中のものだけではありません。パソコンやスマートフォンの中で、ファイルやメモが見つからず困ることもあります。私は、これも家の中と同じ考え方で整えるようにしました。よく使うものはすぐ手が届く場所にまとめ、保存する時に後から探せる名前を付けておくのです。あとで見返すことを少しだけ想像して名前を付けておくと、時間が経っても見つけやすくなります。日付を頭に付けておくだけでも、ずいぶん探しやすくなりました。デジタルの整理も、完璧を目指すと続きませんので、よく使うものだけでも整えておく、くらいの気持ちで取り組むと、無理なく続けられるように感じています。画面の中が片づいていると、不思議と気持ちまですっきりするものです。
見つからない時は「一度手を止める」
それでも、どうしても見つからないことはあります。そんな時、焦ってあちこちを探し回ると、かえって見落としてしまうものです。私は、見つからないと感じたら、一度手を止めて深呼吸をするようにしています。落ち着いてから、最後に使ったのはいつか、その時どこにいたかを思い出すと、意外とすんなり見つかることが多いのです。慌てている時は視野が狭くなり、目の前にあっても気づけないことがあります。一度探した場所を、思い込みでもう見なくなってしまうこともあるので、落ち着いてもう一度見てみると、案外そこにあったりします。焦る気持ちは分かりますが、急がば回れで、一度立ち止まるほうが結局は早いのだと、経験から思うようになりました。
家族と暮らすなら「場所を共有する」
家族や誰かと一緒に暮らしている場合は、置き場所を自分だけで決めても、うまくいかないことがあります。私は、共有で使うものについては、置き場所をお互いに知っておくようにしています。ここに戻す、と一言決めておくだけで、「あれどこ」と聞き合う回数がぐっと減りました。押し付けにならないよう、無理のない範囲で、みんなが戻しやすい場所を一緒に考えるのがよいように思います。誰か一人が頑張るのではなく、ゆるく共有できると、暮らし全体が少し楽になります。ラベルを貼って場所を分かりやすくしておくのも、言葉で伝えるより角が立たず、みんなが自然と協力しやすくなるように感じました。小さなことですが、余計なやりとりが減るのは思いのほか心地よいものです。
入れ物は「中身が分かるもの」を選ぶ
収納に使う箱やケースを選ぶ時、私は中身が分かりやすいものを選ぶようにしています。中が見える透明なものにしたり、そうでない場合は外側に一言だけ内容を書いておいたりするのです。見た目をそろえたくて中身の見えない箱で統一すると、きれいではあるのですが、どこに何を入れたか分からなくなってしまうことがありました。おしゃれさと分かりやすさは、時にぶつかることがあります。私は、よく使うものほど分かりやすさを優先し、あまり開けないものだけ見た目を重視する、という具合に使い分けるようにしました。この小さな選び方の違いが、日々の探し物の多さに、思いのほか響いてくるように感じています。
探した経験を次に生かす
同じものを何度も探しているな、と気づいたら、それは置き場所を見直す合図だと考えるようにしています。よく失くすということは、今の置き場所がその物や自分の動きに合っていない、ということかもしれません。私は、二度も三度も探したものについては、思い切って定位置を変えてみます。実際に使う場所のすぐそばに移してみると、それだけで失くさなくなることが多いのです。失くすたびに自分を責めるのではなく、仕組みのほうを少し調整すればいい、と考えると気持ちが楽になります。探し物は、暮らしを自分に合わせて整えていくための、小さなヒントをくれているのかもしれません。
おわりに
ここまでお話ししてきたことは、どれも小さな習慣ばかりですが、積み重なると探し物の時間はずいぶん減っていきます。置き場所を決める、ついでに戻す、増やしすぎない、そして見つからない時は一度立ち止まる。特別な才能も道具も必要なく、少しの意識で始められることばかりです。探し物が減ると、時間だけでなく、あの落ち着かない気持ちからも解放されて、一日をおだやかに過ごしやすくなりました。すべてを一度にやろうとせず、まずは一番よく失くすもの一つから、置き場所を決めてみてはいかがでしょうか。一つうまくいくと、それが小さな自信になって、次の工夫にもつながっていきます。この記事が、あなたの毎日を少し軽くするきっかけになれば嬉しいです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
