技術士R03【1203農業部門-農業農村工学】Ⅲ-2|1800字では伝えきれない!骨太論述と全詳解|農地整備における生産性向上と環境配慮計画
小泉士郎🎈|技術士(建設・総監部門)×セルフケア
🔶R03_Ⅲ-2|過去問題
環境との調和に配慮した農業農村整備の取組は、着実に定着してきている。近年、農業生産性の一層の向上を図るため、農地の大区画化・汎用化等の整備が展開される一方で、農業者の減少と高齢化が進むなど、農地の整備工法や農業形態等の状況の変化があり、これに対応した生物のネットワーク等への環境配慮が重要となっている。このような状況を考慮して、以下の問いに答えよ。
(1)今後の農地整備において、環境に配慮した計画・設計を行うため、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうちあなたが最も重要と考える課題を1つ選択し、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で提示したすべての解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
「日本技術士会」HP
🔶R03_Ⅲ-2【1.5倍論述のための】骨子例
(1)環境配慮型農地整備の課題
〇観点1:生態系ネットワークの保全
・大区画化に伴う生物移動経路の分断
・水田と周辺環境を結ぶネットワークの寸断
〇観点2:水環境の質的変化への対応
・圃場汎用化による水質浄化機能の低下
・用水路改修に伴う水質環境の悪化
〇観点3:農業者減少下での環境保全機能の維持
・維持管理作業困難化による生息環境の劣化
・中山間地域における二次的自然環境の消失
(2)最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・生態系ネットワークの保全を最優先課題として選択
・不可逆的影響回避と農業生産への寄与
▽解決策1:エコロジカル・ネットワークの計画的配置
・GISによる生態系ネットワーク図の作成
・魚道や休耕田ビオトープの計画的配置
▽解決策2:環境配慮型施設の設計・導入
・多自然型水路や土畦の採用
・圃場内への生態系保全エリアの配置
▽解決策3:順応的管理手法の導入と継続的モニタリング
・事前・事中・事後の継続的生物調査
・参加型モニタリングとデータベース化
(3)解決策実行に伴う波及効果、懸念事項及びその対応策
◇波及効果
・環境ブランド価値向上と付加価値創出
・生態系サービス維持による持続可能な農業生産の実現
◇懸念事項及びその対応策1:事業費増加と経済性の確保
・環境配慮施設導入によるコスト増加
・標準工法化と非市場的価値評価による対応
◇懸念事項及びその対応策2:維持管理負担の増大
・多自然型施設の維持管理作業増加
・省力化設計と協働体制構築による対応
🔶R03_Ⅲ-2【深掘り考察】設問(1)解答
(1)環境配慮型農地整備の課題
〇観点1:生態系ネットワークの保全
農地の大区画化に伴い、従来の水路や畦畔が撤去され、生物の移動経路が分断される課題がある。特に両生類や水生昆虫などの小型生物にとって、圃場間の連続性が失われることで生息域が孤立化する。また、水田と周辺の河川、ため池、里山などを結ぶ生態系ネットワークが寸断される懸念がある。農業生産性の向上と生物多様性の保全を両立させるため、魚道や水路の連続性、ビオトープの配置など、生物の生活史に配慮した施設配置の検討が求められる。
〇観点2:水環境の質的変化への対応
圃場の汎用化に伴う排水改良により、水田の湛水期間が短縮され、脱窒作用や土壌吸着による水質浄化機能が低下する課題がある。排水性の向上は降雨時の表面流出を増加させ、農薬や肥料成分の流出リスクを高める。また、用水路のコンクリート化や直線化により流速が増加し、水温上昇や溶存酸素の減少など水質環境が悪化する傾向がある。農業用水の反復利用が行われる地域では、下流域の水質保全のため、適切な水管理と水質モニタリング体制の構築が不可欠である。
〇観点3:農業者減少下での環境保全機能の維持
農業者の減少と高齢化により、水路の草刈りや泥上げなどの維持管理作業が困難になっている。これまで農業者によって維持されてきた水辺部や畦畔の植生多様性が損なわれ、生物の生息環境が劣化する課題がある。特に中山間地域では、伝統的な農業によって形成されてきた二次的自然環境が消失しつつある。省力的な維持管理を可能とする施設構造の採用と、地域住民や多様な主体との協働による環境保全活動の仕組みづくりが必要である。
🔶R03_Ⅲ-2【重要課題特定と解決策の提示】設問(2)解答
(2)最重要課題およびその解決策
