技術士R04【1203農業部門-農業農村工学】Ⅱ-2-1 |1200字では伝えきれない!骨太論述と全詳解|農業構造変化に対応した用水量算定
小泉士郎🎈|技術士(建設・総監部門)×セルフケア
🔷R04_Ⅱ-2-1|過去問題
水田農業を主体とするある地区では、農業用水を河川から取水し、主に開水路を通じて配水しているが、作付作物の多様化、経営の大規模化が進み、一部では住宅地等への農地転用も見られる。この地区において、用水施設の更新事業を実施するため、用水量を見直すこととなった。用水量算定業務を担当する責任者として業務を進めるに当たり、以下の内容について記述せよ。
(1)本地区の特性を踏まえて、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)業務を進める手順とその際に留意すべき点、工夫を要する点について述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
「日本技術士会」HP
🔷R04_Ⅱ-2-1【1.5倍論述のための】骨子例
(1)調査・検討すべき事項およびその内容
①土地利用および営農計画の調査
・将来の受益面積と農業利用の継続性精査
・作付体系と省力的水管理ニーズの把握
②既存施設の機能診断
・通水能力と送水損失率の定量的把握
・配水管理労力と無効放流の実態調査
③用水量算定基礎諸元の収集
・基準蒸発散量と有効雨量の算定
・水田・畑利用時の土壌定数の決定
④水源の安定性評価
・河川取水可能量と水利権整合性の検討
(2)本業務を進める手順及び留意点・工夫点
▽手順① 現地調査と基礎データの収集
・営農繁忙期回避と施設診断の安全管理
・ドローン活用と複数年気象データ解析
▽手順② 用水量の算定と将来需要の予測
・最新技術基準による作物別必要水量算定
・複数作付パターンシミュレーション実施
▽手順③ 施設更新工法の比較検討
・用水量に基づく適切な施設規模決定
・パイプライン化による省力効果試算
(3)関係者との調整方策
〇地元農家及び水利組合との調整
・複数回の事業説明会と個別訪問実施
・中間報告会による意見反映の仕組構築
〇市町村及び農業委員会との調整
・土地利用動向の定期的情報交換
・地元負担と補助制度の早期調整
〇河川管理者との調整
・取水実績に基づく適正取水量の事前協議
・水利権変更手続きの事業工程組込み
🔷R04_II-2-1【深掘り考察】設問(1)解答
(1)調査・検討すべき事項およびその内容
①土地利用および営農計画の調査
本地区は混住化と営農形態の変化が進行しているため、将来の受益対象と用水需要の質を確定する必要がある。具体的には、農地転用実績と都市計画等を照合し、将来にわたり農業利用が継続される受益面積を精査する。また、作付作物の多様化に対応するため、水稲と転作作物の作付構成およびブロックローテーション等の作付体系を関係機関と調整し、計画基準年における営農計画を策定する。さらに、経営の大規模化が進む担い手に対し、省力的な水管理へのニーズを調査し、施設計画への反映を検討する。
②既存施設の機能診断
開水路方式である既存施設の現状を定量的に把握し、更新後の計画諸元設定の根拠とする。既存水路の粗度係数変化や堆積物の状況、漏水箇所を調査し、現状の通水能力と送水損失率を把握する。これにより、更新施設における適切な送水効率および水路断面を検討する。また、現在の分水工やゲート操作による配水管理労力と無効放流の実態を調査し、大規模経営に対応した操作性の向上や無効放流削減による還元水利用の可能性を検討する。
③用水量算定基礎諸元の収集
変動する気象条件や汎用化利用に対応した科学的な用水量算定を行うため、過去の降水量、気温、蒸発量データを収集し、ペンマン・モンテース法等による基準蒸発散量および有効雨量を算定する。土壌の透水性や保水性を調査し、水田利用時の減水深に加え、畑利用時の有効水分量や消費水量を算定するための土壌定数を決定する。
④水源の安定性評価
河川流況データを分析し、計画基準年における河川取水可能量を算定する。その上で、算出された必要用水量が現在の水利権の範囲内で整合するか、あるいは再編が必要かを検討する。
🔷R04_II-2-1 <1200字では伝えきれない!解答(2)・(3)全文>
(2)本業務を進める手順及び留意点・工夫点
