技術士R04【1203農業部門-農業農村工学】Ⅲ-1|1800字では伝えきれない!骨太論述と全詳解|デジタル技術活用による水田農業の構造改革
小泉士郎🎈|技術士(建設・総監部門)×セルフケア
🔷R04_Ⅲ-1|過去問題
水田地域における農地整備については、担い手育成や農地利用集積、作物転換などの農業の構造改革に向け、関係施策と連携しながら大区画化、汎用農地化等に取り組んでいるが、いまだ大区画水田は田全体の約1割で、汎用田は5割弱に留まっている状況であり、取組の加速化が必要である。このような中、近年、農業技術が進歩するとともに、情報通信・デジタル技術が急速に進展しており、これらの新しい技術を活用し、水田農業現場のイノベーションを推進することも重要となっている。
このような状況を考慮して、以下の問いに答えよ。
(1)水田農業の構造改革に向けた農地整備を実施するに当たり、現在の取組を加速化するうえで、農業農村工学の技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
「日本技術士会」HP
🔷R04_Ⅲ-1【1.5倍論述のための】骨子例
(1)水田農業構造改革の課題
〇観点1:基盤整備の推進と合意形成
・大区画化における技術的・経済的制約
・地権者等との合意形成の長期化
〇観点2:汎用化対応の技術
・排水性確保のための土壌・施設改良
・作物転換に対応した水管理体制
〇観点3:ICT基盤の整備遅延
・圃場高平坦化の技術水準
・ICT施設の整備・維持管理体制
(2)最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・汎用化対応技術の遅れによる経営多角化阻害
▽解決策1:地下水位制御排水技術の導入
・制御管埋設による水位管理機能
・補助事業活用による導入促進
▽解決策2:排水路ネットワークの再編
・用排分離による系統的整備
・排水機場設置による強制排水
▽解決策3:客土と土壌改良の実施
・心土破砕と客土による透水性改善
・土壌調査に基づく工法選定
▽解決策4:弾力的水管理体制の構築
・配水施設の柔軟化
・水利権見直しと配分ルール確立
(3)解決策実行に伴うリスク及びその対策
◇リスク及びその対策1:水循環への影響
・地下水位低下と生態系への影響
・広域調査とモニタリング体制
◇リスク及びその対策2:水質汚濁と土壌保全
・富栄養化と土壌侵食リスク
・浄化施設整備と環境保全型農業
◇リスク及びその対策3:維持管理負担の増大
・専門知識要求と費用負担
・組織強化と計画的施設更新
🔷R04_Ⅲ-1【深掘り考察】設問(1)解答
(1)水田農業構造改革の課題
〇観点1:基盤整備の推進と合意形成
大区画水田が田全体の約1割に留まる要因として、大型機械導入に必要な区画形状の見直しや用排水路の再編には多額の事業費と長期の工期を要することが挙げられる。特に既存農業水利施設との整合性を図りつつ水管理システムを再構築する技術的困難が存在する。また、複雑な権利関係を持つ地権者や水利関係者との合意形成には長期間を要し、水路廃止や経路変更、水利権調整が必要な場合は事業着手が大幅に遅延する課題がある。
〇観点2:汎用化対応の技術
汎用田が5割弱に留まる主因は、水稲栽培を前提とした水田構造にある。水田特有の鋤床層や低透水性土壌により畑作に必要な排水性が確保できず、暗渠排水施設や地下水位制御技術の導入が不十分である。また、畑作や園芸作物では必要水量や時期が水稲と異なるため、用排水分離を徹底した弾力的な水管理体制の構築が課題となる。
〇観点3:ICT基盤の整備遅延
自動走行農機やドローンによる精密農業には高精度測量に基づく圃場の高平坦化が前提となるが、従来の整備水準では不十分である。また、水管理の自動化・遠隔操作を実現するパイプライン化やICT対応型給水栓の設置には多額の初期投資が必要であり、センサーやネットワーク機器の維持管理には専門知識が求められ、その体制確立が課題である。
🔷R04_Ⅲ-1【重要課題特定と解決策の提示】設問(2)解答
(2)最重要課題およびその解決策
