技術士R01【1203農業部門-農業農村工学】Ⅲ-2｜1800字では伝えきれない！骨太論述と全詳解｜大規模土地利用型農業と生産構造改革
小泉士郎🎈｜技術士(建設・総監部門)×セルフケア
🔶R01_Ⅲ-2｜過去問題
我が国農業においては、経営マインドや意欲を持った農業者が活躍できる環境を整備する必要がある。とりわけ水田農業においては、従来の高コストの生産構造から脱却し、農業者の自立的な経営判断に基づく生産を促すことが重要である。このため、大規模土地利用型農業の展開により高い労働生産性の追求や省力化技術の活用による生産コストの削減を促進する必要がある。 このような状況を考慮して、以下の問いに答えよ。（１）大規模土地利用型農業の展開を図るためのほ場整備計画策定に当たって、対象とする農地のほ場条件について技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。（２）（１）で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。（３）（２）で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ
「日本技術士会」HP
🔶R01_Ⅲ-2【1.5倍論述のための】骨子例
（１）大規模営農のほ場条件課題
〇観点１：ほ場区画と作業効率性
・大型機械による効率的作業体系確立の阻害要因
・労働生産性向上と生産コスト削減目標達成の困難性
〇観点２：用排水施設と水管理労力
・省力的水管理システム構築の制約条件
・維持管理費用増大と適期作業実施の困難性
〇観点３：農道網と輸送効率性
・大型機械の円滑な移動と収穫物輸送の障害
・作業効率低下と大規模経営展開の制約
（２）最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・ほ場区画規模と形状が及ぼす労働生産性への直接的影響
・大区画化実現による用排水施設・農道網改善効果の最大化
▽解決策１：大区画ほ場整備の実施
・畦畔撤去による整形長方形区画の形成
・作業時間削減と労働生産性向上の実現
▽解決策２：レーザーレベラーによる高精度均平化
・三次元測量に基づく精密整地の実施
・湛水深均一化と水管理労力削減効果
▽解決策３：弾力的区画配置による営農対応
・将来の営農形態変化に対応可能な区画構造
・汎用化対応と担い手への農地集積促進
（３）解決策実行に伴うリスク及びその対策
◇リスク及びその対策１：地権者間の合意形成困難化
・権利関係調整の複雑化と事業長期化の恐れ
・3Dシミュレーション活用による理解促進と公平性の高い換地設計
◇リスク及びその対策２：初期投資コストの増大
・多額の初期投資と事業費確保の困難性
・補助制度活用と段階的整備による地元負担軽減
◇リスク及びその対策３：生態系及び景観への悪影響
・水田依存生物の生息環境破壊と伝統的農村景観の変化
・環境影響評価実施と多自然型整備手法の採用
🔶R01_Ⅲ-2【深掘り考察】設問（１）解答
（１）大規模営農のほ場条件課題
〇観点１：ほ場区画と作業効率性
大規模土地利用型農業では大型機械による効率的作業体系の確立が不可欠である。しかし既存水田は1区画面積が小さく、大型機械の旋回や方向転換に時間を要し作業効率が著しく低下する。不整形な区画形状や狭小な農道幅員により大型トラクターやコンバインの進入が困難である。さらにほ場間の高低差が大きい場合、機械移動に時間がかかり燃料消費量が増加する。ほ場内の均平度が低いと湛水深管理が困難となり水稲の生育ムラが発生する。これらにより労働生産性向上と生産コスト削減の目標達成が困難となっている。
〇観点２：用排水施設と水管理労力
大規模経営では限られた労働力で広範囲の水管理を行う必要があり、省力的な水管理システムの構築が求められる。しかし既存施設では用排水系統が分離されておらず、水質管理や適期灌漑が困難である。取水施設が各ほ場に分散配置され水管理に多大な労力を要する。老朽化した施設では漏水や破損が頻発し維持管理費用が増大する。排水能力不足により降雨後のほ場乾燥に時間を要し適期作業の実施が困難となる。パイプライン化や自動給水栓の整備が不十分な地域では水管理労力削減が進まず大規模経営の障害となっている。
〇観点３：農道網と輸送効率性
大規模営農では収穫物の効率的輸送と大型機械の円滑な移動が経営の鍵となる。しかし既存農道は幅員が狭く大型機械同士のすれ違いや転回が困難である。農道の舗装率が低く降雨後は路面がぬかるみ収穫物運搬に支障をきたす。農道と公道の接続部分に十分な待避所や視距が確保されず交通安全上のリスクが存在する。ほ場と乾燥調製施設との距離が遠い場合、輸送コストが増大し適期収穫が困難となる。幹線農道から末端ほ場への到達性が悪い地域では作業効率が低下し大規模経営の展開が制約される。
🔶R01_Ⅲ-2【重要課題特定と解決策の提示】設問（２）解答
（２）最重要課題およびその解決策
この記事のライター
