技術士R05【1203農業部門-農業農村工学】Ⅲ-2|1800字では伝えきれない!骨太論述と全詳解|ため池の保全管理と集中豪雨対策
小泉士郎🎈|技術士(建設・総監部門)×セルフケア
🔶R05_Ⅲ-2|過去問題
全国に約16万箇所以上ある農業用ため池は、地域の過疎化・高齢化等により持管理の粗放化が進むと同時に、堤体や付帯施設の老朽化が進行している。近年は、集中豪雨等の自然災害が一層頻発化・激甚化する中で、農業用ため池の決壊等に伴う災害が発生し、人命や財産に多大な被害が生じるおそれがあり、防災・減災への取組が急務となっている。このため、国の政策においても関連する法制度の整備や財政支援等が措置されている。このような状況を考慮して、以下の問いに答えよ。
(1)農業用ため池について、多数のため池を抱える各地域において保全管理を含めた防災・減災対策を計画的に実施するに当たって、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で提示した解決策に関連して新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項とそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
「日本技術士会」HP
🔶R05_Ⅲ-2【1.5倍論述のための】骨子例
(1)ため池保全管理と防災・減災の課題
〇観点1:施設の老朽化と技術的対策
・江戸時代以前築造施設の経年劣化と構造的安全性低下
・洪水吐流下能力不足と越流決壊リスク
〇観点2:管理体制の脆弱化と人的資源
・水利組合等管理組織の弱体化と人材不足
・ため池台帳整備不足と広域管理体制構築の必要性
〇観点3:防災情報とリスクコミュニケーション
・ハザードマップの住民浸透不足と避難体制未確立
・ICT監視システム導入と防災訓練実施の必要性
(2)最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・施設老朽化による決壊リスクと根本的対策の重要性
▽解決策1:詳細調査と劣化診断の実施
・非破壊試験技術による堤体内部異常の早期検出
・継続的モニタリング体制構築とリスク評価に基づく優先順位決定
▽解決策2:堤体補強と洪水吐改修
・表面遮水工・フィルター工による浸透経路遮断と法尻部補強
・洪水吐拡幅・補助洪水吐新設による計画洪水量流下能力確保
▽解決策3:統廃合と機能集約
・小規模ため池統合による管理コスト縮減と防災機能強化
▽解決策4:緊急時対応設備の整備
・リアルタイム監視システム構築と自動通報体制整備
(3)新たな懸念事項及びその対策
◇懸念事項及びその対策1:改修後の維持管理費用の増大
・ライフサイクルコスト増大と早期再劣化リスク
・広域管理組織設立とICT活用による効率化・省力化
◇懸念事項及びその対策2:気候変動による想定外の豪雨への対応不足
・計画規模超過豪雨による越流決壊リスク残存
・事前放流ルール策定と気象情報システム連携による先行的対応
◇懸念事項及びその対策3:技術継承と専門人材の不足
・専門技術職員不足と技術継承の危機
・技術マニュアル整備とAI・VR活用による効率的技術伝承
🔶R05_Ⅲ-2【深掘り考察】設問(1)解答
(1)ため池保全管理と防災・減災の課題
〇観点1:施設の老朽化と技術的対策
農業用ため池の約7割以上は江戸時代以前に築造された施設であり、堤体や付帯施設の老朽化が著しく進行している。堤体については、経年劣化による浸透・漏水、法面侵食、のり面保護工の損傷等が顕在化し、構造的安全性が低下している。取水施設や斜樋等の付帯施設も金属部の腐食や操作機構の破損が進行し、適切な水位管理機能が損なわれている。特に集中豪雨時には計画規模を上回る流入により越流決壊リスクが高まるため、洪水吐の流下能力不足が深刻な課題である。ため池管理保全法に基づく詳細調査と耐震診断を実施し、リスク評価による優先順位付けと長寿命化計画の策定が重要である。
〇観点2:管理体制の脆弱化と人的資源
農村地域の過疎化・高齢化により、水利組合や財産区等の管理組織が弱体化している。日常的な草刈りや点検、維持補修を行う人材が不足し、特に小規模ため池では管理責任の所在が不明確になっている事例も見られる。ため池の構造や操作方法に関する技術的知識を持つ人材が減少し、適切な水位管理や緊急時対応が困難となっている。また、ため池台帳の整備が不十分であり、施設諸元や管理状況等の基礎情報が把握できていない地域も存在する。ため池管理者、市町村、都道府県、土地改良区等が連携した広域的管理体制の構築が求められる。
〇観点3:防災情報とリスクコミュニケーション
住民の防災意識が十分でなく、ため池決壊時の被害想定や避難方法等の情報が周知されていない。近年の宅地開発により下流域に新たな住宅地が形成され、浸水想定区域における災害リスクが高まっている。ため池ハザードマップの作成は進められているが住民への浸透が不十分であり、要配慮者を含めた実効性ある避難体制が確立されていない。豪雨時の管理者による巡視・監視体制や緊急連絡網の整備が遅れており、迅速な避難情報伝達ができない状況にある。ICT技術を活用した監視システムの導入や定期的な防災訓練の実施により、地域全体の防災力向上とリスクコミュニケーションの深化が必要である。
🔶R05_Ⅲ-2【重要課題特定と解決策の提示】設問(2)解答
(2)最重要課題およびその解決策
