Gemini 4 Argon が発表:出力100万トークン・料金・提供元のベンチマーク・いま使える人
AI開発者の手帖
Google が9月30日、新しい最上位モデル Gemini 4 Argon を発表しました。出力の上限が100万トークンに広がり、料金も公表されています。ただし、社外でいま使えるのは審査を通ったサイバー防御の組織などに限られ、一般の開発者はまだ API から呼べません。Gemini や他社の最上位モデルを仕事で使っていて、乗り換えの候補になるかを見ておきたい方に関係します。Gemini を使っておらず、モデルの選定にも関わらない方には、まだ関係しません。筆者は AI モデルの API 仕様や提供条件を公式資料と照らして追い、有料記事でも扱ってきました。本稿は、Google の発表記事、DeepMind のモデルページ、Fairwind Program のページ、Gemini API の changelog を10月1日に突き合わせてまとめたものです。筆者は Argon を呼んで確かめてはいません。
何が出たか
発表記事によると、Argon は長く複雑な作業を深い推論で進め続けるためのモデルで、実務のソフトウェア開発、法務や金融などの知的作業、サイバー防御を得意分野に挙げています。出力の上限は、これまでの6万4千トークンから100万トークンに広がりました。Google は、1回の流れで数十万トークンを生成できる余裕があると、難しい問題を一度で解く推論の深さが増すと説明しています。
料金
導入価格は100万トークンあたり入力2ドル・出力10ドルで、キャッシュされた入力は入力価格の95%引きです(計算すると0.10ドル)。導入期間が終わると入力4ドル・出力20ドルになります。
比べると、導入価格は Claude Sonnet 5.5 や GPT-6.1 Sol の標準料金(GPT-6.1 Sol は入力272Kトークン以下のとき)と同じ入力2ドル・出力10ドルで、期間後の価格は Claude Opus 5.5 と同じ入力4ドル・出力20ドルです。導入価格だけを見て費用を見積もると、期間後に倍になる点に注意が要ります。
提供元が示すベンチマーク
次の数字はどれも Google がモデルページの比較表で示したもので、筆者は確かめていません。比較相手は GPT-6 Astra、Claude Fable 5.1、Claude Opus 5.5 です。
- DeepSWE v1.1(長い作業の実務的なコーディング):77.9%。GPT-6 Astra は74.1%、Opus 5.5 は74.2%
- Vals Index(金融・コーディング・法務・税務の知的作業):68.9%。Opus 5.5 は67.0%
- GraphWalks の256K〜100万トークン(長いコンテキスト):84.2%。GPT-6 Astra は71.8%
- CWE-bench v1(脆弱性の修正):68.0%で GPT-6 Astra と同点
同じ表には、Argon が1位でない項目が5つあります。FrontierSWE v2 は GPT-6 Astra が65.5%で Argon は55.0%、Terminal-bench 4.0 は Opus 5.5 が66.4%で Argon は57.4%、PostTrainBench(機械学習の開発)は Opus 5.5 が49.3%で Argon は45.3%、Terminal-Bench Science 0.1 は GPT-6 Astra が68.1%で Argon は57.6%、OSWorld-2.0(コンピュータの操作。オフラインの部分集合での部分点)は GPT-6 Astra が72.6%で Argon は69.2%です。どの作業でも上というわけではないので、自分の作業に近い項目を見るのがよいと筆者は考えます。
Google は社内での使用例も挙げています。動画デコーダの libgav1 では、Argon のエージェントが既存の Rust 版を書き直し、出力を変えずに2.7倍速くしたとしています。これも Google の主張です。
いま誰が使えるか

発表記事と Fairwind Program のページをもとに、Gemini 4 Argon を社外でいま使える組織と、次に広がる予定の範囲、料金を筆者が1枚にまとめたものです。「いま」の組織は Fairwind の提携先のうち一部で、2行目は対象の例です。「これから」の日付は、10月1日時点で公表されていません。
発表記事によると、Argon はまず Fairwind Program を通じて、信頼できるサイバー防御の組織に提供されています。Google の社内ではすでに使われており、発表記事は初期の試験利用者や、米国政府の公開前のアクセスにも触れています。Fairwind Program のページによると、Fairwind の提携先は世界で650を超え、そのうち一部が Argon を使えます。対象の例として、政府や国のサイバー当局、医療・通信・エネルギー・金融などの重要インフラの運営者、多くの利用者を抱える技術基盤の提供者を挙げ、防御の評価に取り組む大学などの研究室の申請も受け付けています。参加する組織は、Argon へのアクセスを社内のセキュリティ・インシデント対応・侵入テストのチームに限り、利用を記録する必要があります。
開発者・企業・一般の利用者へは、有料の API 利用者と Google AI Ultra の加入者から順に広げるとしています。10月1日に見た Gemini API の changelog は最新の項目が9月22日で、Argon の項目はまだありませんでした。Fairwind の対象外の組織には、公開済みのモデルで CodeMender(コードの脆弱性を直すエージェント)を使う道が案内されています。
安全面の説明
Google は、広く公開する前に安全策を強めるとしています。悪用につながる依頼は断るよう設計し、モデルの推論の過程と行動を見張って、利用者の意図を超えた動きをしたら実行を止める仕組みを入れるとしています。Fairwind Program のページによると、間接的なプロンプトインジェクションの攻撃成功率を測る Gray Swan IPI では、15回試行時の成功率が0.7%で比較対象の中で最も低かったとしています。一方、審査を通ったサイバー防御の組織と Google の社内チームには、サイバー分野の制限を外した Argon を出すとしています。
まだ分からないこと
- 一般の開発者が API で使える日付と、モデル ID
- 入力のコンテキストの長さ(資料が示しているのは出力の上限だけです。比較表には100万トークンまでの長いコンテキストの評価が載っています)
- 導入価格の期間がいつまでか
次にやること
いま Argon を試せる開発者は限られるので、まずは提供が広がったときに比べる準備をしておくのが現実的だと筆者は考えます。乗り換えの候補にするなら、自分の作業に近いベンチマークで Argon が上か下かを見ておき、提供が始まったら同じ作業を今のモデルと並べて試すと判断しやすくなります。費用は導入期間後の価格でも見積もっておくと安全です。
モデルを乗り換えるときは、モデル名を差し替えるだけでは済まないことがあります。既刊の有料記事では、Claude の Sonnet 5 から 5.5 へ移るときに、自分のコードで何を点検するかを扱っています。

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