マスタリングでやりたいこと
いとうたかし
こんにちは。伊藤貴志です。
Tipsを初めてみました。
ここでは私がやっているミキシングとマスタリングについて書いていこうと思います。
今回はマスタリングでやりたいことです。
マスタリングは品質コントロールをするための作業工程とよく言われますが、
私は世界観の見え方を調整する工程だと感じています。
世界観やストーリー自体はミキシングで完成されています。
その完成された世界と物語を心の奥へ丁寧に届けるために、
再生環境に対する理想的なバランスを実現するのがマスタリングの役割だと思います。
マスタリングで行いたいことの一番は、
「世界観にそぐわないことをしないこと」
です。
当たり前なのですが、意外と間違えやすいことです。
機材やプラグインが発達して、その機能性は魅了的になってきていますが、
その機能や技術がもたらす音の意志みたいなものが、曲に必要なのかどうかを見極めることがマスタリングでは必要です。
例えばイコライザで言うと、
アナログモデリングのイコライザとデジタルのイコライザでは、音の温度やリズムが異なります。
曲が持っている温度やリズム(呼吸)感に合っていないものを使用した場合、
曲の世界観が崩れることになります。
曲が行きたい方向に向かわせてあげることが、私にとっていいマスタリングであると考えています。
ですので、曲の意志に反するものを選んで使わないように気をつけることで、
曲がのびのびと響いてくれるような気がしています。
具体的には、必要だと思った物だけを使うことです。
「せっかく買ったから使おう」とか「今流行ってるから使おう」とかの判断基準で選ばないと言うことです。
それは都合で選んでいることになり、
曲の声に耳を傾けて選んでいることにはならない気がしています。
ミキシングもマスタリングも、小さな選択の積み重ねが音楽を形作っていきます。
プラグイン一つ、ツマミの位置一つの選択を曲の声に合わせて作っていけば、
よいものができるだろうなあと思っています。
技術的なことよりも、心持ちのお話が大切だと思いましたので、
今回は曲を理解する中で何をしたいか、何ができるかを考えることが、
何よりマスタリングでしたいことだなあ、と言うお話でした。
次回は音圧の設定で気をつけていることを話したいかもしれません。
でも変わるかもしれません。
風の吹くまま、またお越しください。
いとうたかし