2025年8月4日
東京地裁第1刑事部B係
事件番号:令和7年刑(わ)第282号
罪名:死体損壊、死体遺棄
被告人:柳瀬宗達
裁判官:今井理
書記官:白須隆裕
<事件概要>
2024年9月、伊豆大島で、女性Aの行方が解らなくなった。翌年1月、畳屋経営の柳瀬宗達被告人が、死体損壊、死体遺棄で逮捕された。柳瀬被告人は、Aとトラブルになっており、Aの殺害も疑われた。しかし、今のところ、被告人は殺人では起訴されていない。現在、裁判にかけられているのは、死体損壊、死体遺棄のみである。殺人での起訴に、この裁判の行方は関係するのか。非常に注目された。
<法廷の風景>
13時10分には、25,6人ほどが並んでいる。13時27分に入廷が許され、すぐに満席になった。傍聴人の入廷が許される前、2分間の撮影が行われた。
弁護人は、オールバックの40代ぐらいの男性と、髪の後退した初老の男性。
検察官は、眼鏡をかけた中年男性と、髪を後ろで束ねた若い女性。
裁判官は単独体制である。眼鏡をかけ、髪を七三分けにした、皺の目立つ50代ぐらいの男性一人。
関係者席は弁護人側に2席指定され、すべて埋まる。
記者席は9席指定され、すべて埋まる。
被告人は、浅黒く、白髪交じりの髪を短く刈った、精悍な風貌の40代の男性。引き締まった体格である。白いマスクを下にずらしている。黒い半そでのシャツ、グレーの長ズボン、茶色いサンダルという恰好。畳屋というより、サーファーに見える風貌であった。眉間に皺をよせ、やや下を向いて入廷する。保釈されていないらしく、被告人用入り口から、刑務官二人に挟まれて歩いてくる。被告席に座ってからは、足の間で手を組んでいる。
13時30分より、柳瀬宗達被告人の第二回公判は開廷した。
裁判官『開廷します。6月19日の第一回の後、進行について、打ち合わせ。弁護人は、第一回の冒頭陳述で、事件は、死者の希望に沿うと。検察官はどう立証するか、証人11名の請求。本日、被告人質問を行い、11人を採用するか決める。本人、被告人質問を行う。検察官証拠請求』
検察官『甲79から92まで、取り調べを請求します』
弁護人『79~83同意。84,85不同意。86,87同意。88~92不同意』
裁判官『甲64号証、証拠意見変更は』
弁護人、同意する。令和6年9月8日18時4分6秒から、9月13日12時43分49秒まで、同意する。
裁判官『甲64号証、メッセージについての証拠。同意は』
検察官『本体も同意と』
裁判官『9月8日~13日12時43分49秒まで同意と。同意部、79~83、86~87,いずれも採用』
<要旨の告知>
甲64号証、同意部、被告人とAさんのメッセージのやりとり。一覧表となっている。内容、9月8日から10日まで、被告人とメッセージやり取りある。被告人とYさん、Kさんとのやり取りもある。9月12日、午後3時48分、被告人からAさんに、「気を付けて、沖縄旅行行ってきてね、見送りできなくて悪かった」などとメッセージ。
甲79号証、令和7年3月31日、骨片、釣り人が一つ発見。佐野浜の海岸。それ以外見つからず。
甲80号証、発見場所の写真添付。
甲81号証、発見場所の写真。
甲82号証、発見者のTさんの調書。砂浜を歩いていたところ見つける。
甲83号証。解剖報告書。発見された骨片は、左恥骨の一部と考えられる。
甲86号証、死体燃やして損壊した、小清水の倉庫の場所明らかに。
甲87号証、発見された骨片のDNA、Aさんと一致する。
裁判官『続いて、被告人質問』
弁護人『はい』
裁判官『双方60分ずつ』
弁護人『はい』
裁判官『被告人質問行う、座って』
被告人は、どうすればいいか解らない様子だった。促され、証言台の椅子に座る。
オールバックのシライ弁護人が被告人質問に立つ。被告人は、膝に手を置き、終始はっきりした声で質問に答えていた。
<シライ弁護人の被告人質問>
弁護人『弁護人のシライから。罪状認否で、起訴状認める』
被告人『はい』
弁護人『Aさんの遺体を損壊した』
被告人『はい』
弁護人『何時』
被告人『令和6年9月12日です』
弁護人『時間は』
被告人『午前中です』
弁護人『場所は』
被告人『小清水・・・倉庫です』
弁護人『地名は』
被告人『元町、の・・・』
弁護人『小清水ですか』
被告人『はい』
裁判官『マイク口元に近づけて、大きい声で』
被告人『はい』
裁判官『記録とっている』
被告人『はい』
裁判官『聞き取れないと困る』
被告人『解りました、はい』
弁護人『死体損壊は』
被告人『えー、木材と一緒にガソリンをかけて燃やしました』
弁護人『燃やした跡、骨を損壊した』
被告人『はい』
弁護人『壊したのは』
被告人『袋に入れる際に、えー、スコップで集めまして、その際に、えー、入れやすいように、小さくしました』
弁護人『死体を遺棄する』
被告人『はい』
弁護人『遺棄はいつ』
被告人『えー、令和6年9月13日です』
弁護人『場所はどこ』
被告人『佐野浜です』
弁護人『どうした』
被告人『袋に詰めて、海に投げました』
弁護人『遺棄しなかった死体の部分はあるか』
被告人『ありません』
弁護人『何故』
被告人『袋に、全部詰めて、海に流したくて』
弁護人『焼いた後ですね』
被告人『そうです』
弁護人『詰めた』
被告人『はい』
弁護人『Aさんとの関係、恋愛関係』
被告人『いいえ』
弁護人『友人関係』
被告人『はい』
弁護人『Aさん、貴方に対して、恋愛感情持っていた』
被告人『持ってたと思います』
弁護人『貴方は、Aさんに、恋愛にならないと伝えた』
被告人『はい、であった当初から、最初から伝えておりました』
弁護人『複数回』
被告人『いえ、最初から何回も伝えています』
弁護人『貴方の家に、友人宿泊させたりすること』
被告人『はい、ありました』
弁護人『Aさんも』
被告人『ありました』
弁護人『何故』
被告人『他の友人と同じように、えー、彼女も家に泊めてた、泊めてました』
弁護人『Aさんはどんな人か』
被告人『はい、かなり感情の、えー、浮き沈みのある方でした』
弁護人『酒飲む』
被告人『はい』
弁護人『夜の人』
被告人『はい』
弁護人『飲むと、どうなる』
被告人『お酒を飲むと、さらに感情が、えー、高くなりまして、私に対してだけだか解らないんですけど、暴言、暴力あります。家の壁にも穴開けられたこともありましたし、TVも壊されたこともあります。あと、酷いと、死ぬと口にしていました』
弁護人『死ぬ、ですか』
被告人『はい』
弁護人『Aさん、本当に死のうとしたことあるか』
被告人『はい』
弁護人『何ある』
被告人『海のまま、そのまんま、身投げする、入水という形で入ったこともありましたし、薬を大量に飲んだこともありました。あと、目の前手首で切ったこともありました。あと、宿泊施設の窓から飛び降りようとしたこともありましたし、えー、元町の桟橋、小舟の止まるところから海の中に飛び降りようとしたこともありました。あと、私の家の二階のカーテンレールで自殺しようとしました』
弁護人『入水は時間帯は』
被告人『えー、夜中ですね。夜中そのまま、洋服着たまま海の中に入っていったことがありまして』
弁護人『どこ』
被告人『元町のコウノ浜です』
弁護人『元町の』
被告人『コウノ浜です』
弁護人『桟橋入る』
被告人『はい』
弁護人『具体的に』
被告人『えっと、座った状態で、えーと、来たら飛び降りると言われました』
弁護人『助けた』
被告人『はい、えーと、私自身、えー、海の中に飛び込んで、彼女を、えー、引き上げたりしました。えー、窓から飛び降りる時も、えー、窓から、自分が落ちそうになるぐらいのとこまで、彼女を引っ張って助けました』
弁護人『自殺未遂は何回あった』
被告人『20回以上はあったと思います』
弁護人『手首切る』
被告人『はい』
弁護人『それはいつ』
被告人『えー、詳しくはちょっと覚えてません、すみません。あと、包丁を持ちだしたこともありました』
弁護人『それはいつ』
被告人『えー、令和5年9月です』
弁護人『包丁、貴方の家にあった』
被告人『いいえ、日中、えー、彼女と口論になった際に、彼女が一回家を飛び出し、外で包丁を買ってきたんです』
弁護人『どう使う』
被告人『彼女自身の、えー、包丁つけてました』
弁護人『どのように』
被告人『刃先、えーと、刃の部分を、自分の包丁につけてました』
弁護人『どう』
被告人『刃の部分を首につけてました』
弁護人『誰の』
被告人『彼女自身の首です』
弁護人『どこを』
被告人『刃先です、はい』
弁護人『何と』
被告人『えー、付き合わなければ死ぬと言いました』
弁護人『誰と付き合わないと』
被告人『私と付き合うことがないと死ぬと言ってました』
弁護人『包丁取り上げた』
被告人『取り上げられました。ただ、もう一本隠し持ってたので、えっと、もう一本出して、さらに、えー、私の方に向けました』
弁護人『取り上げる時、傷は』
被告人『いえ、その際に、どっちの手か忘れましたが切れました』
弁護人『どこにあった』
被告人『ベッドの下に隠してたみたいです』
弁護人『貴方の部屋に包丁ない』
被告人『はい、二本買って来たみたいです』
弁護人『どう使う』
被告人『えーと、えーと、私の方に包丁向けてました』
弁護人『今まで、包丁を人から向けられたこと』
被告人『いいえ、ありません』
弁護人『恐怖心は』
被告人『えー、ありました』
弁護人『包丁向けられ、貴方は、一人でなだめることできたか』
被告人『いえ、できません。大島警察の方に助け求めました』
弁護人『それで対応は』
被告人『えー、保護してもらい、えー、彼女を北海道に戻してくれました』