FXで含み益が出ると、なぜすぐ利確したくなるのか
FXおじさん|20年以上退場していない
FXで含み益が出たとき、こんな経験はありませんか?
買ったあとに、思った方向へ価格が動き始める。
含み益が出て、最初はうれしい。
ところが、利益が少しずつ増えてくると、今度は別のことが気になり始めます。
「そろそろ利確したほうがいいかな」
「せっかく利益が出ているんだから、減る前に確定させたい」
そう考えて、まだ上がりそうだと思いながらも決済してしまう。
しかし、そのあとも価格は上昇を続ける。
「ああ、もう少し持っていればよかった……」
私も、こんなことを何度も繰り返していました。
いわゆる「チキン利食い」です。
今回は、なぜ含み益が出ると早く決済したくなるのか。そして、それがトレード全体にどのような影響を与えるのか、私の経験も交えながら書いてみようと思います。
含み益が出ると、なぜか落ち着かなくなる
FXを始めたばかりの頃、私は含み益が出るとうれしい反面、どこか落ち着かない気持ちになっていました。
エントリーする前は、
「ここから上がるだろう」
と考えていたはずです。
ところが、実際に上がり始めると、
「この利益がなくなったら嫌だな・・・」
という気持ちが出てきます。
まだ決済していない利益は、あくまでも含み益です。
価格が逆方向へ動けば減りますし、場合によっては含み損に変わることもあります。
頭では分かっているのですが、一度利益が出た数字を見てしまうと、どうしてもその金額を意識するようになります。
そして、利益をさらに伸ばすことよりも、今ある利益を失わないことを優先したくなるのです。
一度見た利益は自分のお金のように感じてしまう
たとえば、あるトレードで含み益が1,000円になったとします。
その後、価格が少し戻って、含み益が600円になりました。
この時点では、まだ600円の利益があります。
しかし、気持ちの上では、
「400円も損をした」
と感じてしまうことがあります。
実際には、1,000円の利益は一度も確定していません。
それなのに、一度見た1,000円という数字が、いつの間にか自分の中の基準になってしまうわけです。
こうした心理は、行動経済学の考え方でも説明できます。
たとえば「損失回避」というものがあります。
簡単にいうと、人は利益を得ることよりも、損失を被ることに強く反応しやすいという傾向です。
また、投資の世界には「ディスポジション効果」という言葉もあります。
これは、利益が出ている資産を早く売り、損失が出ている資産を長く持ち続けやすい傾向を指します。
1985年に発表されたShefrinとStatmanの研究では、こうした投資家の行動が取り上げられています。
もちろん、これはすべての投資家に当てはまるという意味ではありません。また、この研究だけでFXのチキン利食いの原因をすべて説明できるわけでもありません。
それでも、行動を振り返ってみて、思い当たる人は少なくないのはないでしょうか?
私の場合、チャートを見て決済を判断しているつもりで、実際には利益が減る不安を解消するために利確していたこともあったと思います。
含み損には耐えるのに、含み益には耐えられない
ここで少し不思議なのが、含み益と含み損では、まったく逆の行動を取ってしまうことです。
含み損が出ているときは、
「もう少し待てば戻るかもしれない」
と考えて、なかなか損切りできない。
ところが、含み益が出ているときは、
「今のうちに確定しておこう」
と考えて、早く決済してしまう。
つまり、
- 含み損は、できるだけ確定させたくない
- 含み益は、できるだけ早く確定させたい
という状態です。
一見すると正反対の行動ですが、どちらも「損をしたくない」という気持ちが関係しているように思います。
含み損のときは、損失を確定させるのが怖い。
含み益のときは、利益が減るのが怖い。
そして、その恐怖から逃れようとして、売買の判断が変わってしまうのです。
ただし、含み損を我慢することと、利益を伸ばすためにポジションを保有することは、まったく別の話です。
損切りすべき場面で持ち続けることまで、正当化してよいわけではありません。
勝っている回数が多くても、資金が減ることがある
チキン利食いの厄介なところは、決済した直後には成功したように感じられることです。
実際に利益が出ていますし、口座残高も増えています。
ですから、
「今回も勝てた」
とうれしくなります。
しかし、FXでは勝った回数が多いからといって、最終的に利益が残るとは限りません。
ここで、簡単な例を考えてみます。
ある人が10回トレードして、次の結果になったとします。
- 8回の勝ち:1回につき300円の利益
- 2回の負け:1回につき1,500円の損失
勝率は80%です。
ところが、合計損益を計算すると、
利益:300円 × 8回 = 2,400円
損失:1,500円 × 2回 = 3,000円
差し引き600円のマイナスです。
※取引コストを考慮しない説明用の例です。
10回中8回も勝っているのに、最終的には資金が減っています。
小さな利益を何度も積み重ねても、一度の大きな損失で、それまでの利益がなくなってしまうことがあるわけです。
いわゆる「コツコツドカン」ですね。
もちろん、チキン利食いだけが、このような結果を生む原因ではありません。
損切りの遅れや、ロットの大きさなども関係します。
ただ、利益を必要以上に小さく確定させる行動を繰り返していると、結果として損失とのバランスが悪くなる可能性があります。
早期の利確が「悪」ではないものの・・・
私は、早い利確がすべて悪いとは思っていません。
相場の状況によっては、早めに利益を確定させる判断が適切なこともあります。
また、短い値動きを狙うトレードと、大きな値動きを狙うトレードでは、当然ながら利確の考え方も違います。
ですから、
「利益が出ても、とにかく長く持てばいい」
という話ではありません。
むしろ、何も考えずに長く持ち続けることも、別の問題を生む可能性があります。
私が問題だと思うのは、決済する理由が、相場の状況ではなく自分の不安になっていることです。
本当はまだ保有するつもりだったのに、含み益が減るのが怖くなって決済する。
反対に、もっと伸びると思い込み、決済すべき状況になっても持ち続けてしまう。
どちらも、最初に考えていたトレードとは違うものになっています。
決済する理由が途中で変わっていないか
ここで、少し考えてみてほしいことがあります。
エントリーする前には、誰でも何らかの理由を持っていると思います。
「ここから上がりそうだ」
「このあたりまで伸びるかもしれない」
「このラインが意識されていそうだ」
そのように考えてポジションを持つわけです。
ところが、含み益が出た途端、それまでの考えが頭から抜けてしまうことがあります。
代わりに気になるのは、利益の金額です。
もう500円増えた。
今度は300円減った。
また少し増えた。
そうしているうちに、チャートの状況よりも、損益の数字を追いかけるようになってしまいます。
私も昔は、そんな状態になることがありました。
最初は相場の動きを考えてエントリーしたのに、最後はお金の増減だけを見て決済していたのだと思います。
これは、かなり大きな違いです。
決済したくなったら考えること
含み益が出て決済したくなったときには、次のことを考えてみてほしいです。
「今、決済したくなったのは、相場の状況が変わったからなのか。それとも、利益が減るのが怖いからなのか」
この二つは、似ているようで違います。
もちろん、考えたからといって、必ず正しい判断ができるわけではありません。
ただ、自分が何を理由に売買しようとしているのかを意識するきっかけにはなります。
もし自分のトレードを振り返る機会があれば、過去の利確についても考えてみるとよいかもしれません。
たとえば、
- 当初の予定に沿って決済できたか
- 決済するとき、相場のどの部分を見ていたか
- 利益が減ることへの不安だけで、判断を変えていなかったか
という点です。
ここで確認したいのは、そのあと価格がどこまで伸びたかではありません。
決済した時点で、自分なりに納得できる判断だったかどうかです。
決済後に価格が大きく伸びたとしても、それだけで失敗だったとは言えません。
反対に、早く利確したあとで価格が下がったとしても、たまたま助かっただけかもしれません。
結果だけで判断するのではなく、そのときの考え方を振り返ることにも意味があると思います。
メンタルについて私が思うこと
私が長くFXを続けてきて強く感じるのは、利益を伸ばすには、チャートの見方だけでは足りないということです。
どれだけ良い場所でエントリーできても、含み益が出るたびに不安になって決済していたら、大きな値動きを取るのは難しくなります。
かといって、ただ我慢して持ち続ければよいわけでもありません。
私の場合、単に「もっと我慢しよう」と考えるだけでは、うまくいきませんでした。
トレードに対する考え方や、FXそのものとの付き合い方も関係していたように思います。
そして、エントリーする前の準備や、ポジションを持ったあとの過ごし方についても、少しずつ考え方が変わってきました。
なぜ早く利確してしまうのかを理解することと、実際に利益を伸ばせるようなトレードを考えることは、別の話です。
利益を早く確定させることと、適切なタイミングで利益を確定させることは、必ずしも同じではありません。
もし、含み益が出るたびにすぐ決済してしまうのであれば、ぜひ「なぜ今、決済したくなったのか」を振り返ってみてください。
同じような経験をしている方に、少しでも参考になればうれしいです。
参考文献
Shefrin, H., & Statman, M. (1985).
The Disposition to Sell Winners Too Early and Ride Losers Too Long: Theory and Evidence.
The Journal of Finance, 40(3), 777–790.
