「場を回す」役割
少し前に120人の乱交パーティが摘発されたことを記憶に新しいだろう。
私は摘発の経緯やパーティの実態などよりも、これについて報じた「デイリー新潮」の以下の記述が気になった。
乱交パーティーと言っても、参加する全員が全員、愛好家というわけではない。会場に集まった参加者が酒などを飲みつつ、徐々に行為が始まっていくというのが理想の展開だそうだが、きっかけがつかめずに「集団飲み会」に終わってしまうリスクもある。それでは高額な参加費を払った男性客からのクレームを招きかねない(一般的に男性の方が参加費は高く、女性は無料の場合が多い)。そこで主催者は、起爆剤となりうる「サクラ」をあらかじめ仕込んでおくのだ。“ある程度時間が経ったら、自分からお客を誘って”と。デイリー新潮
興味深いのは、パーティといっても、ハプバーと同じように「場を回す」役割の人間が必要であるということだ。
記事ではそれを「サクラ」と呼んでしまっているが、従来のハプバーでは、男女問わずに、そのような常連を育てることに腐心していた。
説明は省くが、ビジネスにおいては、「ファシリテーター」という重要なポジションである。
そのような常連を中心としたコミュニティが形成され、自律的にお客さんが遊ぶようになって、店の集客が安定するには、1年~2年の期間が必要であることを論じた。
SNSに特化したマーケティング
この意見については賛否両論はあると思うが、一部のハプバーでは、SNSでの集客のみにリソースを投下し、このようなコミュニティデザインを放棄していると私には考えられる。
Twitterでバズらせることが集客であるというのだ。
(短い期間で集客し、資金も回収できるので、経営的にはそれでも問題ないのだろう)
そうすると、お客さんのほうも、SNSで事前に口説いてから来店するという行動が常態化する。
全くの新規で来店したお客さんは、店や常連からのフォローもなく、そのような新規が多いお店では、「週末であっても何も起こらない」というハプニングに見舞われるのだ。
スタッフは人間性が要求される
もっとも常連だけでなく、スタッフが果たす役割も大きい。
場が停滞している場合は、スタッフと一部の常連が阿吽の呼吸で空気を変えるように動くのだ。
それがどう発展するかは、その場にいるお客さん同士の関係によって、ものの数秒で決まる。
場が流れることもあれば、ハプバー特有の祝祭が訪れることもあるのだ。
このスリルもハプバーの魅力のひとつである。
これは現場でのスタッフのスキルだ。
スタッフは常連(特に女性)と信頼関係を築いておかなければならないので、人間性が要求されるのである。
このように店員と一部の常連が連携により、従来のハプバーは成り立っていた部分がある。
今もその構図は有効であろうか?
極めて厳しいと考える。
なぜなら、お店には、Twitterという非現実で知り合った他人同士が集まり、スタッフや常連の評判とは関係なく、Twitterのフォロー関係により、店とは独立したコミュニティが成立してしまっているからだ。
これでは店員や常連が場をコントロールすることはできない。
もちろん、SNSでのマーケティングと適度な距離感を保ち、地道に集客している店もある。そのような店こそ、長く続いてほしいと思うのである。
【了】
【履歴】
2020/7/5公開