AIの文章に「透かし」。ただし4分の1直すと検出17%と、OpenAIが自分で書いた
kairos
こんにちは、カイロスAIです。毎朝、アメリカのAI副業事情を日本語でお届けしています。
10月5日、OpenAIが「AIが書いた文章に、見えない透かしを入れる」と発表しました。
これを聞いて「AIで書いた文章は、これから全部バレるのか」と思った方がいるかもしれません。先に結論を言うと、公式の発表には、そうは書かれていません。むしろ公式は、この技術でできないことを、数字つきで自分から書いています。
今日は、その発表を公式ページの記載だけで整理して、AIで文章を作って納品している人が今日できる一歩まで落とします。
■ 何が発表されたのか
きっかけは、ヨーロッパの法律(EU AI Act)です。この法律は、生成AIを提供する会社に「AIが作った文章を、機械で見分けられるようにすること」を求めています。
OpenAIはこれに応える形で、文章用の透かし技術「textGrain」を出しました。仕組みは、AIが言葉を選ぶときに、人の目には見えない統計的なクセをほんの少し足す、というものです。専用の検出ツールがそのクセを探します。
進め方は3段階です。
・開発者向けのAPIでは、世界中で「自分でオンにすれば使える」。最初の設定はオフのまま
・ChatGPTとCodexでは、今後数週間のうちに、EUの中だけで透かしを入れる
・検出ツールは、審査を通った研究者と専門機関だけに渡す。一般には公開しない
■ 先に誤解を3つ潰しておきます
1つめ。日本のChatGPTに、いきなり透かしが入るわけではありません。公式は「EUのみ」「開始時点で、世界共通の既定にはしない」と書いています。日本での予定は、公式ページのどこにも書かれていません。
2つめ。誰でも「これはAIが書いた」と調べられるようになるわけではありません。検出ツールは一般公開されません。理由も公式が書いています。見逃しと誤判定のリスクがあるから、です。
3つめ。透かしは、書いた人を特定しません。公式の言葉では、人・組織・アカウント・入力した指示・会話のどれとも結びつけない、とあります。
■ 公式が自分で出した「限界の数字」
ここが今日いちばん大事なところです。
OpenAIは、透かしがどのくらい見つかるかを、条件つきで公開しました。英語の文章を使った評価で、誤って「透かしあり」と判定する割合を1%に抑えた場合の数字です。
・そのままの文章(400トークン):約92%で見つかる
・単語の10%を言い換える:約66%に下がる
・単語の25%を言い換える:17%まで下がる
文章が短いと、さらに見つかりにくくなります。200トークンで約80%、400トークンで約95%。数学のように言葉を選ぶ余地が少ない内容では、もっと低いと書かれています。
念のため。これは「直せばバレない」という話ではありません。特定の条件で測った数字です。大事なのは、作った会社自身が「この道具は、確かな判定には使えない」と認めている、という点です。
■ 透かしが教えてくれない5つのこと
公式ページには「透かしが教えてくれないこと」という節があります。そのまま日本語にします。
・人がどれだけ手を入れたかは、測れない
・その文章が誰のものか、誰に責任があるかは、決まらない
・書いた人を特定しない
・内容が正しいかどうかは、分からない
・透かしが見つからなくても、人が書いた証明にはならない
最後の1つは、仕事で文章を受け取る側にとって重い一文です。短い文章、手を入れた文章、翻訳した文章、他社のAIで作った文章は、そもそも検出にかからない可能性があるからです。
■ 身近な例で言うと「郵便の消印」です
封筒に押される消印を思い浮かべてください。
消印で分かるのは「どこの郵便局を通ったか」だけです。誰が書いた手紙なのか、中身が本当のことなのかは、消印からは分かりません。こすれて薄くなれば読めなくなります。そして、消印がない手紙が、必ず手渡しで届いたとも限りません。
文章の透かしも同じです。分かるのは「OpenAIの仕組みを通った可能性がある」ことだけ。どれだけ人が考えたか、内容が正しいかは、別の話です。
■ これは「バレるかどうか」ではなく「説明できるかどうか」の話です
発注する側の立場で考えてみます。
透かしでは、納品された文章にどれだけ人の手が入っているかは分かりません。検出ツールも使えません。つまり、発注する人が知りたいこと——「どこまでAIで、どこを人が確かめたのか」——に、機械は答えてくれないのです。
答えられるのは、作った本人だけです。
ここが、AIで文章を作って納品している人の出番になります。聞かれてから答える人と、聞かれる前に書いてある人。同じ品質の文章なら、後者のほうが次も頼みやすい。これは技術の話ではなく、信用の話です。
■ 今日できる一歩
ひとつだけです。
次の納品物の末尾に、工程を一行足してください。
「下書きの作成にAIを使用。事実関係・数字・固有名詞は、すべて私が一次情報で確認しています。」
ご自身の実際の進め方に合わせて、言葉は変えてください。大事なのは、AIを使った工程と、人が確かめた工程を、分けて書くことです。
提案書にも同じ一行が使えます。
「AIを使う工程と、人が確認する工程を分けて、納品のたびに明記します。」
透かしが入る前から工程を書いている人は、透かしが入ったあとも、何も変える必要がありません。
■ 出典
OpenAI「Our approach to EU text provenance rules」(2026年10月5日)
https://openai.com/index/eu-text-provenance/
※ 公式ページに記載のない数字や予定は載せていません。日本での導入時期は公式に書かれていないため、触れていません。
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