最低賃金が東京1,280円に|106万円の壁も撤廃、社員10人以下の会社に人数の条件が関係するのは2035年から

最低賃金が東京1,280円に|106万円の壁も撤廃、社員10人以下の会社に人数の条件が関係するのは2035年から

オービット

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「最低賃金が上がった」「106万円の壁がなくなった」。10月1日を前後して、こんなニュースが並びました。

見出しだけを読むと、うちのような小さな会社も10月から社会保険の負担が増えるのでは、と身構えてしまいますよね。そこで、厚生労働省や日本年金機構などの公開情報を全部調べました。

先に結論を書きます。

  • 10月1日に、パートの社会保険の加入条件のうち「月額8.8万円以上」という賃金の条件が撤廃されました
  • 社員が10人以下の会社に、加入条件の「会社の人数」が関係してくるのは、2035年10月からです
  • ただし、正社員の4分の3以上働くパートさんは、会社の規模に関係なく、今も社会保険の対象です
  • 小さな会社に先に来るのは、社会保険より最低賃金です。東京は10月1日から時給1,280円です

この記事は、会社(法人)の側の話に絞って書いています。最低賃金の確かめ方、106万円の壁がなくなった理由、パートが社会保険に入ったときの会社の負担額(例:月16,005円)、そして小さな会社にいつから関係するのかを、順番に整理します。

この記事だけで読み切れるようにしてあります。図で見たいかた向けに、同じ内容の動画も用意しました(最後に案内します)。

1. 10月1日に何が変わったのか

まず、今回の変更を一枚にまとめます。

  • 月額8.8万円という賃金の条件が撤廃されました(10月1日)
  • 保険料調整制度が始まりました(10月1日)。パートの保険料負担を、会社が多めに持てるしくみです
  • 最低賃金が上がりました。東京は10月1日から1,280円です
  • 最低賃金の減額特例を受けているかたが、申し出により社会保険に任意で加入できる制度も、同じ10月から始まりました

ここで大事なのは、10月に加入の条件が変わったのは、今は従業員51人以上の会社だけという点です。50人以下の会社は、人数の条件が別にあるため、10月1日にすぐ変わるわけではありません。詳しくは後半で書きます。

2. 最低賃金:今年の上がり幅は過去2番目

全国平均は1,177円、東京は1,280円

まず最低賃金から見ていきます。最低賃金とは、会社が払わなければならない賃金の下限で、1時間あたりの金額で決まります。都道府県ごとに決まるので、正式には地域別最低賃金と呼ばれます。

今年の答申では、次のとおりです。

  • 全国の加重平均:1,177円(前年は1,121円で、56円の引き上げ)
  • 東京都:1,280円(前年は1,226円で、54円の引き上げ)
  • いちばん低い宮崎県:1,085円(前年は1,023円)

厚生労働省の発表では、56円の引き上げは、目安の制度が始まってから2番目の大きさです。全部の都道府県で、1,000円を超えました。

(出典:厚生労働省ホームページ「全都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75950.html 。2026年9月30日に画面を撮影)

決まり方は3段階

最低賃金は、次の順で決まります。

  1. 国の審議会(中央最低賃金審議会)が、目安を出します
  2. 都道府県の審議会が、地域の実情を見て答申します
  3. 都道府県労働局長が決定します

決めるときは、働くかたの生計費、賃金、そして会社の支払う力の3つを、あわせて考えることになっています。会社が払えるかどうかも見てくれるわけです。

上がる日は県ごとに違います

ここは注意点です。最低賃金は「全国一斉に10月1日」ではありません。

  • 東京都は、労働局長が時間額1,280円と正式に決定して9月1日に官報で公示し、10月1日から効力が生じます
  • 京都府や佐賀県は11月、いちばん遅い沖縄県は12月2日から、と答申の段階では示されています

東京以外の県の日付は、答申のあとの手続きによって変わることがあります。ご自分の県の発効日は、労働局の案内で確かめてください。

3. 月給の社員も、時給に直して確かめる

「うちは時給のパートさんがいないから関係ない」と思うかもしれません。でも、月給の社員も最低賃金の対象です。時給に直して、下回っていないかを確かめます。

確かめ方

式は単純です。

月給(対象外の手当を除いた額)÷ 1か月の平均の所定労働時間 = 時給換算額

この時給換算額が、最低賃金以上であればOKです。所定労働時間とは、会社の決まりで働くと定めている時間です。

計算の前に、月給から先に除くものがあります。

  • 通勤手当
  • 家族手当
  • 精皆勤手当
  • 残業代などの割増賃金
  • ボーナス

厚生労働省の計算例は、1日8時間、1年に250日働く前提です。8時間×250日で、1年の所定労働時間は2,000時間になります。この前提で、私が計算してみました。

  • 手当を除いた月給が20万円なら、20万円×12か月÷2,000時間で、時給換算は1,200円です
  • 東京の新しい最低賃金は1,280円なので、80円足りません
  • 東京で1,280円を満たすには、手当を除いた月給で約21万3千円が要ります(1,280円×2,000時間÷12か月)

月給20万円あれば大丈夫だろう、という感覚は危ないことがある、ということです。休みの日数や1日の時間で答えは変わるので、必ず自社の決まりの時間で計算し直してください。

下回ると罰金もあります

最低賃金を下回る額しか払わないと、法律で罰則が決められています。

最低賃金法第40条は、次のように定めています。

第四条第一項の規定に違反した者(地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係るものに限る。)は、五十万円以下の罰金に処する。

うちの会社の場合

うちの会社にも、時給で働くかたがいます。なので、この時期は、時給が新しい最低賃金を下回らないかを確かめます。

確かめ方は、時給のかたの今の時給を、新しい最低賃金と並べてみるだけです。月給のかたがいれば、上の式で時給に直して並べます。

なお、賃金を引き上げるときに使える国の助成金として、業務改善助成金があります。受付は最低賃金が上がる日の前までと短いので、毎年の案内を早めに確かめてください。

4. 106万円の壁とは何か

次は、106万円の壁です。パートのかたと、社会保険の話です。

会社の社会保険に入る線

106万円の壁とは、パートのかたが会社の健康保険・厚生年金に入るかどうかの線です。入ると、給料から保険料が引かれます。そのかわり、将来の年金などの保障が手厚くなります。

9月までの条件は、次の4つでした。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 所定内賃金が月額8.8万円以上
  • 学生でない
  • 厚生年金の被保険者が50人を超える会社(51人以上)で働いている

8.8万円に12か月をかけると105.6万円。これが「106万円の壁」と呼ばれた理由です。年収ではなく、月の給料で見る条件でした。しかも、残業代やボーナスは入れません。決まった仕事の分の給料で見ます。

週20時間も、実際に働いた時間ではなく、契約で決めた所定の時間で見ます。なお、2か月以内の期間を定めて使用されるかたや、臨時に使用されるかたは、加入の対象から除かれます。

「51人以上」はどう数えるのか

日本年金機構のページでは、同じ会社(同じ法人)のすべての事業所で、厚生年金に入るかたの合計で数える、と説明されています。

今後の段階については、厚生労働省の資料に「常勤の従業員数で判断」という書き方もあります。細かい数え方は、年金事務所で確かめてください。

会社の人数に関係ない基準もあります

ここが大事なところです。50人以下の会社のパートは、社会保険に入らないのでしょうか。そうではありません。

会社の人数に関係なく使われる基準が、もうひとつあります。4分の3の基準です。

1週の所定労働時間と、1か月の所定労働日数が、同じ会社の正社員(通常の労働者)の4分の3以上なら、パートでも加入します。たとえば正社員が週40時間なら、その4分の3は週30時間です。日数も同じように比べます。

つまり、小さな会社でも、長く働くパートのかたは、もう社会保険に入っているのが原則です。今回の話は、それより短く働くパートのかたの話です。

もうひとつ。50人以下の会社でも、働くかたの同意をもとに会社が申し出れば、短時間のパートを加入させることができます。これを任意特定適用事業所と呼びます。人数の条件を待たずに、先に入れることができます。

5. 最低賃金と106万円の壁は、つながっている

では、8.8万円の条件が、なぜ撤廃されたのでしょうか。理由は最低賃金です。

時給1,016円で、ちょうど106万円

計算してみます。時給1,016円で、週20時間働くとします。

1,016円 × 20時間 × 52週 ÷ 12か月 = 88,053円

月に88,053円。ちょうど8.8万円を超えます。1年に直すと約105.7万円で、106万円の壁とほぼ同じ金額です。時給1,016円が、分かれ目だったわけです。

去年の時点で、いちばん低い県の最低賃金でも1,023円でした。すでに全部の県で1,016円を超えていたことになります。

東京の1,280円なら、週20時間で月に約11万1千円(110,933円)。8.8万円を大きく超えます。

つまり、最低賃金以上で週20時間働けば、8.8万円の条件は自動で満たされる。条件を残す意味がなくなったので、撤廃されたのです。厚生労働省の資料にも、1,016円以上の地域では週20時間働くと賃金要件を満たすため、全国の最低賃金が1,016円以上になることを見極めて撤廃する、という趣旨の説明があります。

10月1日に撤廃が決まっていました

施行の日は、9月11日の官報に載った政令(令和8年政令第275号)で、令和8年10月1日と定められました。日本年金機構も、月額8.8万円の賃金要件は令和8年10月に撤廃される、と案内しています。

(出典:日本年金機構ホームページ「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内」 https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/tekiyokakudai.html 。2026年9月30日に画面を撮影)

「106万円の壁」はなくなった?

金額の壁は、なくなりました。そのかわり、週20時間という時間の線が残ります。これからは、年収いくらではなく、週に何時間の契約か、で決まるようになります。

ただし、ここまでの話が効くのは、今は51人以上の会社です。小さな会社には、人数の条件が先にかかります。

6. 社会保険に入ると、会社の負担はいくらか

パートのかたが社会保険に入ると、会社はいくら払うのか。計算してみます。

計算の前提

  • 協会けんぽ・東京の会社
  • 時給1,280円、週20時間(月の給料は約11万1千円)
  • 40歳未満
  • 2026年度の保険料率

保険料は、給料を区切った「標準報酬月額」で計算します。月の給料110,933円は、10.7万〜11.4万円の区分に入るので、標準報酬月額は11万円です。

雇用保険と労災保険は、別の決まりで考えるので、この計算には入れていません。

会社が払うのは4つ

保険料の半分を、会社が払います。増えるのは、次の4つです。

  • 健康保険(東京の率は9.85%):全体で10,835円。会社の分は半分の約5,418円
  • 厚生年金(18.3%):全体で20,130円。会社の分は半分の10,065円
  • 子ども・子育て支援金(0.23%):全体で253円。会社の分は約127円
  • 子ども・子育て拠出金(0.36%):396円。こちらは会社だけが払い、本人からは引きません

合計すると、会社の負担は月に16,005円です。給料(約11万1千円)の約14%にあたります。

1年では約19万2千円(16,005円×12か月)。これがパートのかた1人あたりです。東京の例で、パートのかたが5人いれば、1年で約96万円になります。

宮崎県の1,085円なら、週20時間で月に約9万4千円。健康保険の率を東京と同じにして計算すると、会社の負担は月に約1万4,300円です。

時給の上がり分も重なります

しかも、最低賃金の上がり分も重なります。東京の54円に、週20時間をかけると、月に4,680円の増加です(54円×20時間×52週÷12か月)。

給料の上がり分に、保険料の会社の分が重なる。これが、会社から見た2つのつながりです。

本人も、同じくらい引かれます。社会保険だけで、月に約1万5,600円です。手取りが減るなら、保険料を避けるために働く時間を減らす、いわゆる働き控えが起きるかもしれません。会社にとっては、人手の問題になります。

10月から始まった「保険料調整制度」

そこで10月から始まったのが、保険料調整制度です。パートのかたの保険料の負担を、会社が労使折半を超えて多めに持てるしくみです。

  • 対象:標準報酬月額が12万6千円以下の、短時間で働くかた
  • 期間:通算3年間
  • 例:標準報酬月額が11万円なら、本人の負担の割合を、半分(50%)から41%に下げられる

会社が多く払った分は、あとで調整されます。日本年金機構は、最終的に事業主が納める保険料は増えない、と説明しています。ただし、3年目は軽くする割合が半分になります。手続きの細かい点は、年金事務所で確かめてください。

7. 小さな会社には、いつから関係するのか

いよいよ、いちばん大事なところです。

人数の条件は4段階で下がります

「厚生年金の被保険者が50人を超える会社」という人数の条件は、法律で決まった予定に沿って、段階的に下がっていきます。

  • 50人超:2024年10月から(今はここ)
  • 35人超:2027年10月から
  • 20人超:2029年10月から
  • 10人超:2032年10月から
  • 10人以下:2035年10月から

2035年10月に、10人以下の会社も対象になり、人数の条件はなくなります。厚生労働省の資料では、新しく対象になるかたは、35人超で約10万人、20人超で約15万人、10人超で約20万人、10人以下で約25万人と見込まれています。

うちの会社は、厚生年金に入る社員が10人以下です。なので、この人数の条件が関係してくるのは、2035年10月からです。

ただし、ここで安心しきってはいけません。

安心しきるのが早い、3つの理由

1つ目:4分の3の基準は、今も、会社の人数に関係なく使われます。「2035年まで関係ない」のは、あくまで短時間のパートについての、人数の条件の話です。正社員の4分の3以上働くかたは、今も対象です。

2つ目:働くかたの同意があれば、会社は先に加入させることができます。保険料調整制度も、この場合に使えます。

3つ目:人手の確保です。大きな会社のパートは先に社会保険に入っていくので、保障の手厚い会社を選ぶかたも、いるかもしれません。

先に入れるかどうかは、会社と働くかたで話し合って決めることです。この記事では、どちらがよいとは言いません。

今からできる3つのこと

  • パートのかたの契約書で、週の所定労働時間を確かめる(これからは、時間の線がすべてです)
  • 毎年の最低賃金と、時給を比べる(月給のかたは時給に直して比べます)
  • 人件費の計画に、給料の約14%の保険料を、いつから足すかを書いておく

何年から増えるかを決めて、先に準備しておけば、慌てずに済みます。

8. ほかの壁との違い(短く)

パートのかたが気にする壁は、ほかにもあります。違いだけを短く整理します。

  • 週20時間の線(旧106万円):会社の健康保険・厚生年金に入る線
  • 130万円の線:家族の健康保険の扶養に入れるかどうかの線。原則130万円で、19歳以上23歳未満のかたは150万円。今年4月からは、労働契約の給料から年収の見込みを出して判定します
  • 178万円の線:所得税がかかり始める線。財務省の令和8年度税制改正の大綱の概要では、課税最低限を178万円まで特例的に引き上げるとされています

壁は別々で、決まりも別です。会社として見るのは、まず週20時間の線です。扶養や税金の細かい判断は、社会保険労務士さんや税理士さんなどの専門家に確認してください。

まとめ

今日の大事な数字を、5つにしぼります。

  • 10月1日に、月額8.8万円の条件が撤廃されました。これからは、週20時間の線です
  • 理由は最低賃金です。時給1,016円以上なら、週20時間で8.8万円を超えます
  • 東京の最低賃金は、10月1日から1,280円。月給のかたも、時給に直して確かめます
  • パートが社会保険に入ると、会社の負担は給料の約14%(例:月16,005円)
  • 社員10人以下の会社に、人数の条件が関係するのは2035年10月から。ただし、4分の3の基準は、今も使われます

まず最低賃金、そのあとに社会保険の準備、の順番です。数字は毎年変わるので、その年の発表で確かめてください。

動画でも解説しています

この記事の内容は、図で見られる動画にもまとめました。全体の流れをもう一度つかみたいときに、どうぞ。

Youtube再生

出典と注意事項

この記事は、2026年9月30日時点の、厚生労働省・日本年金機構・協会けんぽ・財務省などの公開情報にもとづきます。東京以外の最低賃金の発効日は、手続きによって変わることがあります。

  • 厚生労働省「全都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75950.html
  • 東京労働局(ハローワーク木場)「東京都最低賃金」 https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/list/kiba/minimum-wage-information_2026.html
  • 厚生労働省「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/chingin/newpage_43899.html
  • e-Gov法令検索「最低賃金法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000137
  • 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内」 https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/tekiyokakudai.html
  • 日本年金機構「短時間労働者の適用」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html
  • 日本年金機構「保険料調整制度」 https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/hokenryochosei.html
  • 官報(2026年9月11日 号外第203号) https://www.kanpo.go.jp/20260911/20260911g00203/20260911g002030007f.html
  • 厚生労働省 社会保障審議会医療保険部会資料(2025年6月19日) https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001505993.pdf
  • 協会けんぽ「保険料額表 東京支部」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/assets/R8_13tokyo.pdf
  • 財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」 https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_gaiyou.htm

この記事は一般的な情報の解説です。個別のケースは、社労士・税理士・年金事務所へご相談ください。


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