従来のベクター検索(Vector RAG)では困難だった「ドキュメントを跨ぐ複雑な推論」や「データ全体の要約」を可能にする Graph RAG(知識グラフを用いた検索拡張生成)。2026年現在、主要なクラウドベンダーやデータベースプロバイダーから実用的なソリューションが出揃っています。
本記事では、Google Cloudの最新アーキテクチャを中心に、競合となるMicrosoftやOSS系の実装パターンを徹底比較します。
1. Vertex AI Search と Google Cloud で実現する Graph RAG
Vertex AI Searchは、Google品質の検索エンジンをローコードで提供するマネージドサービスですが、2026年時点でも「ネイティブなGraph RAG機能」を単体で提供しているわけではありません。Google Cloudにおける正攻法は、「Vertex AI + Spanner Graph」 の組み合わせです。
2026年現在のGoogle推奨アーキテクチャ
Googleは、エンタープライズ級のスケーラビリティを確保するため、以下の構成をリファレンスとしています。
- 知識グラフ基盤:Cloud Spanner Graph特徴: リレーショナルデータとグラフデータを同一DB内で管理可能。ISO標準の GQL (Graph Query Language) をサポートし、SQLとの混在クエリが可能。強み: 99.999%の可用性と、グラフDBとしては異例の「ほぼ無制限のスケーラビリティ」。
- 特徴: リレーショナルデータとグラフデータを同一DB内で管理可能。ISO標準の GQL (Graph Query Language) をサポートし、SQLとの混在クエリが可能。
- 強み: 99.999%の可用性と、グラフDBとしては異例の「ほぼ無制限のスケーラビリティ」。
- 推論・生成:Vertex AI (Gemini 2.0)特徴: ML.GENERATE_* 関数により、DB内でエンティティ抽出や要約を完結。
- 特徴: ML.GENERATE_* 関数により、DB内でエンティティ抽出や要約を完結。
- オーケストレーション:Vertex AI Agent Engine / LangChainフロー: ベクター検索で初段の関連ノードを特定 → Spanner Graphで関係性をトラバーサル(多段探索) → Geminiで最終回答。
- フロー: ベクター検索で初段の関連ノードを特定 → Spanner Graphで関係性をトラバーサル(多段探索) → Geminiで最終回答。
2. Microsoft GraphRAG vs Google Cloud GraphRAG
Microsoft Researchが公開した「Microsoft GraphRAG」と、Googleのアーキテクチャは、アプローチが根本的に異なります。
主要比較表
項目 Microsoft GraphRAG (OSS) Google Cloud (Spanner Graph)
得意なクエリ Global Search (データ全体の要約) Local/Hybrid Search (関係性探索)
アルゴリズム Leiden等による階層的コミュニティ要約 ベクター検索 + GQLによるトラバーサル
構築コスト LLMコールが多く、インデックス作成が高価 DB実行環境の維持費(Spannerノード)
スケーラビリティ 中規模ドキュメント群に最適 巨大なエンタープライズデータに最適
ライターの視点: Microsoft型は「本を100冊読んで全体像を把握する」のに向き、Google型は「数億件の顧客・取引データから不正の繋がりを見つける」といったリアルタイム性とスケールが求められる現場に向いています。
