2026年現在、生成AI(LLM)の進化はテキストの枠を超え、画像や動画、複雑な図表を直接理解する「マルチモーダル」の領域で真価を発揮しています。Google Cloud が提供する Vertex AI Search は、このトレンドをリードする Vision RAG(視覚情報対応の検索拡張生成)のマネージド基盤として、製造業や設計現場を中心に急速に普及しています。
本記事では、Vertex AI における Vision RAG の主要技法から、実運用での課題、そして成功のためのベストプラクティスまでを詳しく解説します。
1. Vision RAG の主要技法:3つのアプローチ
Vertex AI では、データの性質やユースケースに合わせて、主に3つの技法を組み合わせて視覚情報を活用します。
① マルチモーダル・エンベディング(同一空間での検索)
テキストと画像を同じ「数学的空間(ベクトル空間)」にマッピングする技法です。
- 仕組み: multimodalembedding モデルを使用し、画像とその説明文を共通の数値表現(ベクトル)に変換します。
- メリット: 「赤いスニーカー」や「亀裂のある溶接部」といった言葉で、合致する画像を直接ヒットさせることができます。
② レイアウト認識型ドキュメント解析 (Document AI 連携)
PDFやスキャン文書内の「図表の配置」や「構造」を理解する技法です。
- 仕組み: Document AI Layout Parser を併用し、文書内のどこに図解があり、どこにその説明テキストがあるかを構造化して抽出します。
- メリット: 複雑なマニュアル内の「図1の注釈」と「図の本体」を紐づけたまま検索コンテキストとして保持できます。
③ 直接マルチモーダル推論 (Gemini による直接読み取り)
検索された画像や動画をテキストに変換(キャプション化)せず、そのまま LLM に渡す技法です。
- 仕組み: Vertex AI Search でヒットした画像の URI を、Gemini 1.5 Pro / 2.0 などの入力として直接渡します。
- メリット: 情報を言語化する際の「情報の欠落」を防ぎ、グラフの微細な数値や回路図の配線まで Gemini が直接読み取ります。
