対象:SNSやマッチングアプリを使う全年代の男女
ゴール:相手を疑い続けるのではなく、恋愛感情が強くなる前に「止まる・確認する・相談する」を実行できるようになること
知り合って数日なのに、毎朝と毎晩メッセージが来る。
「あなたは特別」「運命を感じる」「将来は一緒に暮らしたい」と言われる。
久しぶりに誰かから必要とされ、嬉しい。
ここで覚えておきたいのは、嬉しいと感じた自分が悪いのではない、ということです。
ロマンス詐欺は、恋愛感情や親近感を利用します。だまされる人が弱いのではなく、人を信じたい気持ちが狙われます。
だから対策は、「人を信じない」ではありません。
関係の速度と、お金の話だけは、感情と別に確認する。
この記事では、そのための具体的な停止手順を整理します。
「被害額1272億円」は何の数字か
警察庁の令和7年版警察白書によると、2024年の「SNS型投資・ロマンス詐欺」は、認知件数1万237件、被害額約1,272億円でした。
ここで重要なのは、1,272億円がロマンス詐欺単独ではなく、SNS型投資詐欺とSNS型ロマンス詐欺を合わせた数字だということです。
同じ2024年のSNS型ロマンス詐欺だけを見ると、認知件数3,824件、被害額400.9億円。うち投資名目は認知件数の73.1%、被害額の85.8%を占めました。
さらに2025年の確定値では、SNS型ロマンス詐欺は5,645件、被害額546.4億円へ増加しています。
2026年上半期の暫定値でも2,509件、246.6億円。40代から60代が被害の約8割を占めていますが、被害は全年代に起こり得ます。当初接触ツールは、被害額・認知件数ともマッチングアプリが最多でした。
| 期間 | 対象 | 認知件数 | 被害額 |
| 2024年 | SNS型投資・ロマンス詐欺の合計 | 10,237件 | 約1,272億円 |
| 2024年 | SNS型ロマンス詐欺 | 3,824件 | 400.9億円 |
| 2025年 | SNS型ロマンス詐欺 | 5,645件 | 546.4億円 |
| 2026年上半期 | SNS型ロマンス詐欺・暫定値 | 2,509件 | 246.6億円 |
参考:令和7年版警察白書、2025年確定値(警察庁)、2026年上半期暫定値(警察庁)
数字の大きさだけで怖がる必要はありません。
大切なのは、被害が始まる順番を知ることです。
ロマンス詐欺は「お金」から始まらない
警察庁が示す典型的な流れは、次のようなものです。
- SNSやマッチングアプリで接触する
- LINEなど別のサービスへ移動させる
- 恋愛感情を抱かせるメッセージを送る
- 投資サイトや副業を案内する
- さらに高額の入金を求める
- 出金時に税金・保証金・手数料などを要求する
- 相手と連絡が取れなくなる
最初の目的は、送金させることではありません。
まず「この人だけは自分を分かってくれる」と感じさせます。
愛情、安心、将来の約束を先に受け取ると、その後のお金の話を「営業」ではなく「二人の問題」として考えやすくなります。
数日で愛情表現が来たら、一度止まる
知り合って数日で好意を伝える人が、全員詐欺師というわけではありません。
ただし、相手がまだ知らないあなたの人格や人生まで褒め、結婚・同居・運命を急いで語る場合は、関係の速度を落とすサインです。
24時間停止ルール
次の言葉が出たら、その場で判断しません。
- あなたは特別
- 初めて本気で好きになった
- 運命の人だと思う
- 早く一緒に暮らしたい
- 二人の将来のためにお金を増やそう
- 私を信じるならできる
返信、送金、アプリ登録、個人情報の共有を24時間止めます。
「返事を遅らせたら嫌われる」と思うかもしれません。
安全確認を嫌がる相手なら、関係を急ぐ理由が相手側にあります。
初期に重なると危険度が上がる10のサイン
一つだけで詐欺と断定はできません。複数が短期間に重なるほど、止まって第三者へ相談する理由が増えます。
1.すぐ外部SNSへ移動したがる
「アプリをあまり見ない」「もう退会する」と言い、早い段階でLINEやTelegramなどへ誘導します。
警察庁も、マッチングアプリで知り合った後、早い段階でLINEへ誘導された場合は詐欺等を疑うよう注意喚起しています。
2.あなたを知らないうちから理想化する
仕事、家族、欠点、価値観をほとんど知らないのに、「完璧」「運命」「結婚したい」と言います。
これは好意の強さより、親密さを早く完成させる動きとして見ます。
3.連絡量が急に多い
朝から夜まで定型的に連絡し、短期間で生活の一部になります。
返事が遅いと寂しがる、罪悪感を与える、行動を確認する場合は要注意です。
4.会う話だけが具体化しない
海外赴任、軍人、医師、経営者、船上勤務などを名乗り、会えない理由は詳しいのに、日程は決まりません。
直前に事故、入国、荷物、仕事の問題が起こることもあります。
5.プロフィールの情報に小さな矛盾がある
年齢、居住地、勤務時間、家族構成、写真の季節、言葉遣いが少しずつ変わります。
矛盾を聞くと、話をそらす、怒る、あなたの不信感を責めます。
6.成功・投資・暗号資産の話が早い
「自分も最初は怖かった」「少額で試せる」「先生を紹介する」と、恋愛と投資をつなげます。
愛情と投資判断は、必ず切り離してください。
7.相手指定のサイトやアプリを使わせる
画面上の利益や残高が増えていても、それが実際の資産とは限りません。
金融庁は、振込額と同額が入金されたように表示されるなど、偽の残高表示を使う手口を注意喚起しています。
8.個人名義の口座や暗号資産へ送らせる
投資会社を名乗りながら、毎回違う個人名義口座を指定する、暗号資産ウォレットへ送らせる場合は止めます。
9.出金のために追加送金を求める
税金、保証金、マネーロンダリング審査、信用スコア、凍結解除料など、名目を変えて支払いが続きます。
出金のための入金はしません。
10.秘密にするよう求める
「二人の関係を邪魔される」「家族は理解しない」「銀行員には投資と言わないで」と言います。
相談を止める言葉は、安全装置を外す言葉です。
写真・電話・ビデオ通話だけでは本人確認にならない
写真が何枚もある。
電話で自然に話せた。
ビデオ通話で顔を見た。
身分証の画像も送られてきた。
それでも、安全とは断定できません。
警察庁は、公開写真、翻訳アプリ、生成AIを使えば、他人になりすましたり、本人のような音声や動画を作ったりできると注意喚起しています。
確認材料にはなっても、一つの証拠で信用を完成させないことが重要です。
だまされないための「5つの分離」
1.恋愛とお金を分ける
会ったことがあるかに関係なく、交際相手から勧められた投資へ送金しません。
旅費、治療費、荷物の手数料、事業資金、立替えも同じです。
2.相手と確認先を分ける
相手が送ったリンク、サポート窓口、投資の先生だけで確認しません。
金融事業者は、金融庁の登録情報を自分で検索します。登録企業と同じ名前をかたる場合もあるため、相手から渡された連絡先ではなく、公式サイトの窓口を使います。
3.感情と時間を分ける
愛情表現、お金、アプリのインストール、個人情報の要求が出たら、24時間止めます。
夜中、飲酒中、仕事や家庭で疲れているときは決めません。
4.秘密と相談を分ける
恥ずかしい、反対されたくないと思うほど、信頼できる人へ見せます。
相手とのメッセージを、感情の説明なしで最初から読んでもらうと、流れが見えやすくなります。
5.少額と安全を分ける
「まず1万円だけ」は安全確認ではありません。
少額の利益や出金成功で信用させ、その後に金額を上げる手口があります。
その場で使える停止メッセージ
説明や説得を重ねる必要はありません。
愛情表現が急すぎるとき
気持ちを伝えてくれてありがとう。私は関係を急がず、時間をかけて相手を知りたいです。
投資や副業を勧められたとき
恋愛関係とお金の判断は分けています。あなたから紹介された投資・副業には参加しません。
送金を求められたとき
理由にかかわらず、会ったことのない人や交際相手への送金・立替えはしません。
急かされたとき
今日中には判断しません。確認が終わるまで、この話の連絡を止めます。
相手が怒る、愛情を疑う、別れをちらつかせる場合も、送金しない判断は変えません。
送金・暗号資産移転をしてしまったら
恥ずかしさから一人で取り戻そうとすると、追加被害につながります。
1.追加送金を止める
出金手数料、税金、保証金、調査費用を払っても、回収できる保証はありません。
2.金融機関・暗号資産交換業者へすぐ連絡する
銀行振込の場合は、振込先の金融機関にも詐欺被害を伝えます。
金融庁は、SNS型投資・ロマンス詐欺でも預金口座への振込みが使われた場合、振り込め詐欺救済法の対象になり得ると案内しています。ただし、口座にお金が残っていることなどの条件があるため、早い連絡が重要です。
3.記録を消さない
- 相手のプロフィールとID
- メッセージ全文
- 電話番号、メールアドレス
- 振込先、暗号資産アドレス、取引ID
- サイトURL、アプリ名
- 入出金画面
- 送金日時と金額
相手を問い詰める前に保存します。
4.警察と消費生活センターへ相談する
- 緊急の被害・脅迫:110
- 警察相談専用電話:#9110
- 消費者ホットライン:188
国民生活センターも、ロマンス投資詐欺は一度支払うと資金を取り戻すことが極めて困難として、安易に支払わず188へ相談するよう案内しています。
参考:国民生活センターのFAQ
5.プラットフォームへ通報する
相手のアカウント、偽サイト、広告を通報します。ブロックは、必要な記録を保存した後に行います。
「被害回復」を名乗る二次被害にも止まる
被害を取り戻したい気持ちに付け込み、調査費、保証金、着手金、暗号資産の解除料を求める相手が現れることがあります。
SNSのDMで突然連絡してきた回収業者へ、追加で送金しません。
警察、金融機関、消費生活センター、弁護士会など、自分で公式窓口を探してください。
3分でできる緊急チェック
次のうち、一つでも「はい」があれば、その場で送金せず相談します。
- 実際に会っていない
- 知り合って数日で強い愛情表現が来た
- 早くLINEなどへ移動した
- 結婚や同居の話が早い
- 投資、暗号資産、FX、副業の話が出た
- 相手指定のサイトやアプリを使っている
- 個人名義口座や暗号資産へ送るよう言われた
- 出金に追加料金が必要と言われた
- 家族、銀行、警察に言わないよう求められた
- 今日中、今だけと急かされている
最後に:止まることは、相手を裏切ることではない
恋愛の始まりに疑う作業を入れるのは、寂しく感じるかもしれません。
しかし、本当にあなたを大切にする相手は、安全確認の時間を奪いません。
投資を断ったことで愛情が消えるなら、その関係は投資と結び付いていました。
送金を断ったことで怒るなら、あなたの安心より相手の目的が優先されています。
覚えるルールは一つです。
数日で愛情表現が来たら、一度止まる。お金の話が出たら、一人で決めない。
人を信じる気持ちは、捨てなくていい。
その気持ちと財産を同時に守るために、24時間止まり、公式窓口と第三者へ確認してください。
