
AIに「なんか違うんだよな」と返し続けて、同じような文章が5回戻ってきた日があります。
こちらには完成イメージがあるのに、AIへ返す言葉は「もう少し自然に」「もっとやわらかく」だけ。これではAIも、どの部分をどの方向へ動かせばよいのか判断できません。
普段、2店舗を経営しながら、店舗集客の自動化をして、3年以内に10店舗を目標に活動しつつ、AIの活用サポート/AIを使った自動集客の仕組みづくり/AIに関するセミナーを行っています。実務でAIを使うほど、最初の指示だけでなく「直し方の指示」が作業時間を左右すると感じます。
この記事では、AIの出力に感じた違和感を「どこが・なぜ・どうしたい」の3点に分けて返す型を紹介します。文章、メール、企画案、SNS投稿など、幅広い修正に使えます。
伝わらない返し方

「もっとこう、な感じで」「なんとなく固い」「もう少しいい感じに」。人同士なら表情やこれまでの会話から補える言葉でも、AIにとっては修正範囲も合格条件も曖昧です。
たとえば、AIが作った案内文に「もっと親しみやすく」とだけ返すと、語尾を軽くする、絵文字を足す、説明を短くするなど、複数の解釈ができます。こちらが求めていたのが「専門用語を減らすこと」なら、表面だけ変わって違和感が残ります。
大事なのは、違和感をきれいな言葉で説明することではありません。AIが次の操作を選べる程度まで、曖昧な感覚を分解することです。
なぜ同じような直しが返ってくるのか
AIは、こちらの頭の中にある完成形を見られません。渡された文章と指示から、可能性が高そうな修正を選びます。指示が広いほど変更候補も増え、元の文章に近い無難な直しへ寄りやすくなります。
「違う」という返答は不合格だったことは伝えますが、不合格の理由は伝えません。そのためAIは、語尾や単語を少し入れ替えながら、同じ方向の案を出し直すことになります。
ここで長い説明を足す必要はありません。修正対象、判断理由、到達点の3つがそろえば、AIが迷う範囲を狭められます。
修正指示の3点

修正指示は「どこが・なぜ・どうしたい」の順にそろえます。それぞれの役割は次のとおりです。
- どこが:直したい文、段落、見出し、言い回しを引用して、修正範囲を固定する
- なぜ:読み手、目的、事実、雰囲気のどれとズレているかを書く
- どうしたい:残す要素と変えた後の状態を、AIが確認できる言葉にする
たとえば「冒頭が違う」ではなく、「冒頭の『多くの方に選ばれています』の部分が、根拠のない実績に見えるため、事実を足さずに利用場面の説明へ変えてください」と返します。対象と理由と着地点が一続きになり、修正の方向が明確です。
「やわらかく」のような感覚語を使ってはいけないわけではありません。「命令形を避ける」「一文を短くする」「初めて読む人にも分かる語にする」など、観察できる条件を一つ添えると伝わりやすくなります。
そのまま使える返し方のテンプレ
次のテンプレは、文章の一部を直したいときにそのまま使えます。括弧の中を埋め、元の文章と一緒にAIへ渡してください。
次の文章を、以下の3点に沿って修正してください。
【元の文章】
(ここにAIの出力を貼る)
【どこが】
(直したい箇所を引用する)
【なぜ】
(読み手・目的・事実とのズレを書く)
【どうしたい】
(残す点と、変更後の状態を具体的に書く)
【出力条件】
・指定した箇所以外はできるだけ残す
・新しい事実や数字を足さない
・修正後の文章だけを出す検証では、「劇的に減ります」「今すぐ」「最大化」という表現を対象にし、効果を言い切って営業色が強いことを理由として、断定を避けた案内文へ直すよう入力しました。AIは新しい数値を加えず、「導入すると、作業の負担を減らせる可能性があります。現在の業務との相性や必要な機能を確認したうえで、検討してみてください」と修正しました。
3点の指定と出力条件を満たし、別の文章にも差し替えて使えることを確認できました。ただし、AIの出力は毎回同じになるとは限りません。重要な案内は、事実や表現を最後に人が確認してください。
直したい箇所が複数あるときの渡し方
直したい場所が複数ある場合は、思いつくまま一段落に並べず、番号を付けます。一つの番号の中に「どこが・なぜ・どうしたい」を一組ずつ置くのがコツです。
修正1
【どこが】冒頭の2文
【なぜ】結論が後ろにあり、忙しい読み手が要点をつかみにくいため
【どうしたい】最初の1文で結論を示し、理由は次の文に残す
修正2
【どこが】最後の「ぜひお申し込みください」
【なぜ】情報提供が目的の文章に対して、勧誘が強く見えるため
【どうしたい】選択肢を示す落ち着いた案内に変える
共通条件
・修正1と修正2を反映した全文を出す
・指定していない事実関係は変えない
・新しい実績や数字は足さないまずは一度に3か所ほどまでを目安に区切ると、どの指示がどの変更につながったか追いやすくなります。大幅な構成変更と細かな言葉直しが混ざる場合は、先に構成を直し、その後で表現を整える二段階に分けるほうが確認も簡単です。
修正後は、番号ごとに反映されたかを見ます。直っていない箇所があれば、全文を説明し直さず、その番号だけを再提示すると会話が散らかりません。
一度うまくいった直し方は保存して使い回す
毎回ゼロから「なぜ違うのか」を考えると、修正指示そのものが負担になります。うまく通った指示は、用途ごとの短い辞書として保存しておくと便利です。
- 固い文章:「専門用語を日常語に替え、一文を短くする。内容は削らない」
- 営業色が強い文章:「効果を言い切らず、判断材料を示す案内に変える」
- 自分らしくない文章:「元の意味を保ち、普段使わない大げさな形容を外す」
- 長すぎる文章:「結論、理由、次の行動の順に残し、重複説明を削る」
保存するときは「親しみやすくする」のような感覚だけで終わらせず、何を変えて何を残すかまで書きます。メール、社内共有、SNS投稿など用途別に数行ずつ持っておけば、次回は貼って微調整するだけです。
さらに、AIが返した文章ではなく、実際に採用した修正指示を残すのがポイントです。再利用したいのは一回の完成文ではなく、別の文章にも効く判断の型だからです。
手で直したほうが速い場面もある
3点の型は便利ですが、すべてをAIへ返す必要はありません。誤字を一つ直す、語尾を一か所替える、固有の数値を訂正するといった変更は、手で直したほうが早く、意図しない変更も防げます。
AIへ戻す価値があるのは、複数文のつながりを整えたいとき、同じ基準を文章全体へ反映したいとき、別案を比べたいときです。手直しに数十秒で済むか、同じ修正が今後も発生するかを目安に切り分けると、AIとの往復自体が目的になりません。
まとめると、「なんか違う」と感じたら、その感覚を無理に一言で表そうとせず、「どこが・なぜ・どうしたい」に分けます。修正範囲と判断基準と完成条件がそろうと、AIは直す方向を選びやすくなります。
まずは今日、AIの文章で一番気になる一文だけを引用して、3点で返してみてください。うまく通った指示は保存し、自分専用の修正辞書へ育てていくと、次の仕事が少しずつ軽くなります。AI活用の具体例はThreadsやInstagramの「@tatsuya.nishiwaki_」でも発信しています。
