AIを使えるようになると、文章、画像、資料、簡単な仕組みなど、作れるものが一気に増えます。ところが、選択肢が増えたぶん「結局、何を商品にすればいいのだろう」と止まってしまうこともあります。
ここで出発点を変えてみます。AIで何を作るかではなく、「相手がどんな状態から、どんな状態へ進めるのか」を先に決める。すると、AIは商品そのものではなく、変化を届けるための手段として扱えるようになります。
普段、2店舗を経営しながら、店舗集客の自動化をして、3年以内に10店舗を目標に活動しつつ、AIの活用サポート/AIを使った自動集客の仕組みづくり/AIに関するセミナーを行っています。そこで僕が感じるのは、価値になりやすいのは派手な生成物より、現場にある小さな詰まりを一つ解消する設計だということです。
AIで「作れるもの」から考えると、商品がぼやける
「AIで文章を作れます」「画像を作れます」だけでは、買う側が自分に必要かを判断しにくくなります。同じ文章でも、問い合わせ返信、採用案内、社内手順書では、解決したい問題がまったく違うからです。
機能から考えると、似た道具やサービスとの比較になりがちです。一方、相手の変化から考えると、「返信のたびに悩む状態を、確認して送れる下書きがある状態へ」のように、価値が具体的になります。
- 機能起点:AIで返信文を生成します
- 納品物起点:返信テンプレートを渡します
- 変化起点:返信の迷いを減らし、担当者が確認して送れる状態をつくります
三つ目まで言えると、必要な納品物も見えます。テンプレートだけで足りるのか、判断基準や使い方の説明まで必要なのかを、目的から逆算できるためです。
商品の中心は「納品物」ではなく前後の変化
新しい収益の柱を考えるときは、商品名を決める前に一文を作ります。型は「誰が、どんな場面で困っていて、何を妨げられ、どんな状態へ進むか」です。
少人数で店舗を運営する人が、問い合わせ返信を毎回ゼロから考えている状態から、内容に合わせた下書きを確認して返せる状態へ進む。変化を表す一文の例
この一文には、売上の約束も大げさな成果もありません。それでも、対象、困りごと、提供後の姿がわかります。検証したいのは「その変化にお金を払う人がいるか」と「自分が無理なく届けられるか」です。
変化は、自分の得意から無理に作る必要はありません。過去に頼まれたこと、何度も説明したこと、周囲がつまずく一方で自分には整理しやすいことを探すと、現実の困りごとにつながりやすくなります。
変化の一文をつくる4つの材料
紙やメモに、次の四つを書き出します。きれいな言葉に整えるのは後でよく、まずは実際に見聞きした表現を残すのがコツです。
- 相手:すでに接点があり、困りごとを聞ける人は誰か
- 困っている場面:いつ、どこで、何に手が止まるのか
- 妨げ:時間不足、判断基準の不在、情報の散在など、前に進めない理由は何か
- 変化した状態:何ができれば、その人は次の行動へ進めるのか
ここで「売上を増やす」のような大きな結果だけを置くと、原因も提供範囲も広がりすぎます。「初回相談の前に必要情報がそろう」「毎回探していた説明文を選んで使える」など、自分が責任を持てる手前の変化まで具体化します。
収益は、その変化が必要とされ、提供方法と価格が合った結果として生まれるものです。最初から金額だけを目標にすると、まだ確かめていない需要を事実のように扱いやすくなります。
人の判断とAIの作業を分ける
AIを使う商品で大切なのは、全部を自動に見せることではありません。人が責任を持つ部分と、AIで速く試せる部分を分けることです。
- 人が担うこと:相手の話を聞く、目的を決める、優先順位を選ぶ、事実を確認する、最終判断をする
- AIに任せやすいこと:情報を分類する、複数案を出す、決めた型へ整える、抜け漏れ候補を示す、表現を調整する
たとえば問い合わせ対応なら、断り方の方針や例外対応は人が決めます。AIには、確定した方針と事実を渡し、用途別の下書きや確認項目を作らせます。これなら、速さを得ながら、誤った案内をそのまま送る危険も抑えられます。
この線引き自体が商品の価値になります。単なる生成物ではなく、「どこを確認すれば使えるか」まで渡すことで、相手が現場で運用しやすくなるからです。
最初の商品は、小さな一往復で設計する
最初から動画講座、会員サイト、大きなシステムを作る必要はありません。まずは一人の困りごとを聞き、一つの変化を助け、使った感想を戻してもらえる形にします。
- 実際に困った場面を一つ聞く
- 困っている状態と変化した状態を一文にする
- 変化に必要な最小の提供物を作る
- 相手に使ってもらい、迷った箇所を聞く
- 提供物だけでなく、説明や確認手順も直す
たとえば「よくある問い合わせの返信下書き」と「送信前の確認表」を一緒に渡す形なら、生成して終わりではありません。どの場面で選びにくかったか、事実確認が必要だったかを聞き、次の版へ反映できます。
ここで見るのは、褒められたかどうかより、実際に使われたか、どこで止まったか、もう一度使いたい場面があるかです。小さな一往復には、次の商品設計に必要な情報が詰まっています。
変化起点の商品案を出す検証済みプロンプト
自分の材料を整理しにくいときは、次のテンプレートを使えます。空欄を埋めたあと、出てきた案をそのまま商品にせず、実在する相手への聞き取りで確かめてください。
あなたは小さな事業の商品設計を手伝う編集者です。私の経験・得意なこと・よく相談されることを材料に、「AIで作れるもの」ではなく「お客さまに起きる変化」から小さな商品案を考えてください。
【私の材料】
- 経験:[ここに記入]
- 得意:[ここに記入]
- よく相談されること:[ここに記入]
- 想定する相手:[ここに記入]
- 使える時間・手段:[ここに記入]
【出力条件】
1. 相手の「困っている状態」→「変化した状態」を1文で書く
2. その変化を助ける商品案を3つ出す
3. 各案に「提供物」「人が担う判断」「AIに任せる作業」「最初に確かめる質問」を付ける
4. 大きなシステム開発や初期投資を前提にしない
5. 数字・市場規模・成果を創作しない
6. 収益を断定せず、検証が必要な仮説として書く
7. 最後に、最初の1人へ提案するならどの案か、理由と一緒に1つ選ぶこのプロンプトは、店舗の問い合わせ対応を整理した経験を入力して実行確認しました。「返信下書きセット」「状況を聞いて整える個別作成」「運用ルール整理」といった案が出て、それぞれに人の判断、AIの作業、検証質問が分かれていました。
困っている状態:返信文を毎回考えるため対応が止まりやすい。変化した状態:事実を確認し、状況に合う下書きを選んで返せる。最初に確かめる質問:直近で返信に迷った問い合わせは、どのような内容でしたか。実際にAIが出力した文章(一部)
実行結果では、成果を作り話で補うことなく、仮説として比較できる形になりました。ただし、AIが出した案は需要の証明ではありません。相手の言葉と実際の利用を通じて、必要性を確認する工程は残ります。
よくある失敗は「作り込んでから聞く」こと
一つ目の失敗は、商品を完成させてから相手を探すことです。時間をかけたぶん方向転換しにくくなるので、最初は見本やたたき台で反応を確かめます。
二つ目は、AIの出力枚数や文章量を価値にすることです。量が多いほど選ぶ負担が増える場合もあります。相手が次の行動へ進むために必要な分だけに絞ります。
三つ目は、人の確認を商品設計から外すことです。事実、権利、個人情報、相手との関係に関わる判断は人が担います。「AIが作ったから大丈夫」ではなく、確認手順まで提供範囲に含めます。
四つ目は、一度の反応だけで事業性を決めることです。好意的な感想と、継続して使われることは別です。使われた場面、止まった理由、次に必要な支援を記録し、仮説を少しずつ更新します。
今日やることは、商品名ではなく変化の一文を決める
新しい収益の柱は、AIで珍しいものを作ることから始めなくても大丈夫です。身近な相手が止まっている場面を見つけ、前後の変化を一文にし、人の判断とAIの作業を分ける。そこから、最小の提供物を一人に試します。
今日の行動は一つです。最近よく相談されたことを一つ選び、「誰が、どんな状態から、どんな状態へ進むのか」を一文で書いてください。実在する一人に見せて、「この変化は必要ですか。どこが違いますか」と聞けたら完了です。
僕も、完成した答えを見せるというより、現場で試して直せる考え方を発信していきます。ThreadsやInstagramの @tatsuya.nishiwaki_ でも、AIを仕事に取り入れる工夫を共有しています。必要なときにのぞいてみてください。
