物件を1件預かると、写真を並べ、間取りを確認し、そこから「売れる紹介文」をひねり出す。ポータルサイトの掲載文、マイソク(販売図面)のキャッチコピー、SNSや反響対応の短い文——同じ物件でも、載せる場所ごとに書き分ける必要があります。私の場合、キャッチ1本に30分、掲載文一式でさらに1時間近く。夕方、現場から戻ってから机に向かい、「この物件の良さ、どう言えば伝わるんだろう」と手が止まる。そんな経験は、地場でやっている宅建士なら一度はあるはずです。
しかも紹介文は、査定書と違って外に出す文章です。誇大表現や根拠のない断定が一言混じるだけで、景品表示法や不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)に触れかねない。「良く見せたい」と「事故らせたくない」が、いつもせめぎ合う。
この記事では、私が実際に物件PRの制作システムとして組んで運用している手順(現在9物件を公開中)を、そのまま「明日から使えるプロンプト5本」に落とし込みます。表現づくりはAIに任せ、事実の確定と公開判断は宅建士が握る。この線引きさえ守れば、紹介文づくりの多くを、品質を保ったまま軽くできます。
【F0をまだ読んでいない方へ】 この記事は、シリーズ無料記事「不動産売買でAIを使う前に守る3つのルール」(F0)を読み終えている前提で進めます。①顧客情報・未公開物件情報は入れない、②AIが間違えやすい急所は一次資料で裏取りする、③判断と責任は宅建士が持つ——この3つは本記事でも繰り返し前提になります。未読の方は先にF0をご覧ください。
第1章 なぜ「物件紹介文」にAIが使えるのか
この章で得られるのは、「紹介文づくりのどこをAIに任せ、どこを自分が握るのか」という一本の線引きです。これがはっきりすると、以降のプロンプトを迷わず使えます。
先行記事のC1(査定書)では、「判断」と「文書作業」を切り分けました。物件紹介文では、線の引き方が少し変わります。ここで分けるのは、「事実」と「表現」です。
- 事実:所在地、面積(登記か壁芯〈へきしん〉か)、築年月、構造、用途地域、建ぺい率(けんぺいりつ)・容積率、接道、私道負担、ガス種別、駐車場の有無、取引態様……。これは登記簿・図面・現地・役所でしか確かめられません。宅建士が確定する領域です。
- 表現:その事実を、買いたい人に響く言葉に変える作業。「約59坪の所有権の土地」を「マンションでは持ちにくかった、あなたの庭のある暮らし」と言い換える。ここはAIが力を発揮するところです。
私のシステムでも、この2層をはっきり分けています。物件カルテ(事実の台帳)を作る工程では、担当は評価語をひとつも書きません。「日当たり良好」も「築浅」も書かない。事実だけを構造化する。そのあとの戦略・コピー工程で、はじめて評価語=表現に変換します。事実の層と表現の層を混ぜないことが、事故らない紹介文の土台です。
役割分担を表にすると、こうなります。
| 工程 | AIに任せる(表現づくり) | 宅建士が握る(事実・責任) |
| 材料集め | — | 登記・図面・現地・役所で事実を確定 |
| 言語化 | 事実を訴求ポイントに翻訳・キャッチ案の複数出し | どの事実を渡すか・創作の排除 |
| 書き分け | 媒体ごとにトーン・字数を調整 | 掲載先ごとの表示ルール確認 |
| 仕上げ | NG表現の一次スクリーニング | 採用可否・公開判断・全文責任 |
そして、この記事にはC1になかった固有の論点があります。表現づくりそのものが、広告規制の対象だということです。査定書は基本的に売主に渡す内部資料ですが、紹介文は不特定多数の目に触れる広告です。だから本記事の核は、第3章の「どこで止めるか=広告表現の安全ライン」に置いています。AIに言葉を作らせるほど、この安全ラインが効いてきます。
