ナンパ師界隈を巣食う「性愛コンプレックス産業」

ナンパ師界隈を巣食う「性愛コンプレックス産業」

「脱非モテ」の本質

1.序論

本稿は、Twitterにおけるナンパ師界隈を参与観察したものである。そのため、これを読んだからといって、特段、女性を抱けるわけではない。むしろ、読者の中には活動意欲を削がれるものが出るかもしれない。しかしながら、筆者は「性愛コンプレックス産業」を無間地獄に落とすものとして捉えており、その問題意識の共有を図るべく筆を執った。界隈分析という犬も食わない非ー実践的な文章に目を通してくれることに最大限の感謝を申し上げたい。

2.1定義

そもそも、性愛コンプレックス産業とは何か。

「性愛コンプレックスとは、男性が女性に性的承認されないことによって形成されるコンプレックスのことである。そして、性愛コンプレックス産業とは、それを解消することを目的とした産業を指す」性愛とコンプレックス産業を結びつけた造語(筆者作)

ナンパ師界隈をみると、朝から晩まで性愛の話題で持ちきりである。例えば、「セックスをするためのトークスクリプト」や「セックスをした人数の開示」、「ルックスがいい女性を抱いた自慢話」「セックスができない非モテをバカにするようなマウンティング」など枚挙に暇がない。

界隈では理論よりも実践が好まれる傾向があるため、「非モテ」の原因を外見や内面に帰責したうえで過剰な劣等感や危機感を煽る。そして、それらを改善するための方法などが販売されている。

性愛コンプレックスの問題点はマッチポンプの構造をつくりだしている点である。界隈の業者が性愛コンプレックスを増長したり、新たに生成したりする。そして、彼らに改善策として「パッチ」を配布する。つまり、界隈自体が巨大な性愛コンプレックス産業の市場となっており、そこに参入するプレイヤーたちにさらなる劣等感を抱かせる。

2.2実態

2.2.1情報商材という悪徳商法

ナンパ師の情報商材はnoteやTipsの媒体を経由しており、かつ「〇〇流」や「〇〇式」などとリネーミングされている。そのため、怪しさなどが脱臭されているように感じるかもしれないが、あくまでも「情報商材」である。

情報商材は悪徳商法の一つとしてカテゴライズされることが多い。というのも、それは書籍とは異なり、事前に内容の細部を知ることができないからである。そのため、内容が劣悪でも「見出し」や「キャッチコピー」で買わせることが可能である。

このような情報の非対称性を逆手に取り、クソゴミ商材を売りつける詐欺師がわんさかいる。余談だが、筆者は別のアカウントで商材のレビューのために無償で商材を頂いたことがあったが、すべからく駄作であった。

SNSは「顔の見えない人たち」が「嘘か本当か分からないような投稿」を繰り返す異質な空間である。つまり、発信者の発言の真偽は分からない、その実践が有効かどうかも判別できない。

そのため、読者の一部は界隈の発信を無為に信じ込み、情報商材の購入に至る。もちろん、価値のあるものもあるが、無価値のものもあるので注意が必要である。しかし、これを見定めるには「批判的思考」を稼働させる必要があるため非常に難しい。

実際に、性愛コンプレックス商法以外でも悪徳商法は蔓延っており、消費者庁は以下のような警鐘を鳴らしている。

「SNSは、身近で便利なコミュニケーションツールですが、ユーザー同士のコミュニケーション空間であるという特徴を利用して、悪質業者は勧誘を行います。情報商材の勧誘では、SNSで、ビジネスでの成功や充実した生活等をアピールしている相手から連絡が来たり、相手の投稿やコメントに興味を持って、消費者から連絡したりすることなどをきっかけに、簡単に大金を稼げるなどと誘われ、高額契約をしてしまうケースがみられます。」第1部 (消費者庁(2021)『消費者白書』「第1部第1章第4節 (3)SNSに関連する相談

上記の例では、「投資ビジネス」や「投資」、「副業」が念頭に置かれている。だが、ナンパ師界隈では「性愛での成功や充実した生活等をアピールしている」投稿が散見されるし、「(非モテでも)簡単にセックスできる」と謳った誘い文句に溢れている。

性愛コンプレックスはカネになる。そして、あなたはカモになる。

2.2.2情報商材分析―「下剋上という希望」

 ナンパ師界隈をみると、様々な発信者が独自の情報商材を販売している。その値段は数百円から数万円にまで及ぶ。内容としては、「非モテの射幸心を煽るもの」(いわしモンスターズ)が多い。つまり、読者の購買意欲を喚起するために顧客に寄り添ったエピソードが採用されている。特に、発信者の多くは「下剋上の物語」という形式を取ることが多い。

下剋上の物語」とは、弱者男性がナンパによって性的に成熟する様相を描いたストーリーである。そこでは、「元引きこもり」や「元ニート」、「対人恐怖症」、「非モテ」「〇〇年間恋人がいなかった俺が」「ブサイク」「チー牛」といった枕詞から始まり、最終的に「ナンパによって人生が変わった」と帰着する。筆者の造語である。「非モテからのサクセスストーリー」と言い換えてもいい

発信者によって「下剋上の物語」の具体的なエピソードは異なるが、抽象的にみればすべて同じメッセージを発信している。つまり、「この商材を購入すれば非モテから脱却できるよ☆」というものだ。つまり、弱者男性に「」と「希望」を売っている。

このようなメタ・メッセージは「マーケティング的なものの見方・考え方」があれば洞察できるが、それを意識しないで購入する読者も多いだろう。というのも、通常、発信者はそれを意識させないように販売するからである。

ステルス・マーケティング」という概念があるが、その販売形態が存在するのも露骨に購買心を煽るとかえって逆効果になるからである。そのため、有名人に宣伝をさせたり、間接的に商品の価値をアピールしたりする方法を取る。

また、あまりにも「マネタイズ」(発信者が商材から利益を得ること)を前面に押し出すと、読者に発信の正当性を疑われる。「この人は商材を売りつけたくて業績を盛っているのではないか?」と勘繰られたら困るため、下心を隠す。(対女性と同じだ)

だが、別の文章でも言及したように業績を捏造することは容易である。したがって、商材が「夢」と「希望」でデコレーションされていても安易に購入してはならない。無論、刹那的な充足感を得たいだけなら止めはしないが。

2.3効能

2.3.1効能に対する疑義

ナンパ師が販売する情報商材を購入するとメリットがあるのだろうか。筆者は「ない」とも「ある」とも断定口調では言えない。逃げ口上になるが、効果がある人には「ある」し、ない人には「ない」。もっといえば、購入者の美醜や性格に依存するため、すべての人が効果を感じられるわけではない。

抽象的かつ常識的に考えてほしいのだが、世の中に【誰でも「A」さえすれば、「B」になる】なんて甘い話があるだろうか。現代社会はライトノベルの「なろう系」のようにできてはいない。つまり、誰でも自分の都合のいいように日常を過ごせるわけがないのだ。

SNSでは以下のような誘い文句を見かけることが多い。

  • 「副業すれば年収が増える」
  • 「投資をすれば儲かる」
  • 「転職すれば人生が変わる」
  • 「ナンパをすれば人生逆転できる」

だが、誰でもAすればBになるのだろうか?

そのような努力が報われる世界は美しい。私たちは「世界公正信念」(無意識に正しい人間や努力が報われると思っていること)を内面化しており、かつ教育学や社会科学の世界では「空白の石板」(人間は環境や後天的な努力によって変われる)が前提となっている。

しかし、行動遺伝学や進化心理学はそれを否定する。学問を経由しなくても、学生時代のことを想起すれば事足りるだろう。幼少期から容姿が優れている人はモテ、知能(IQ)が高い人は勉強ができ、運動神経が良い人はリレー選手に選ばれていた。

果てして、情報商材が謳うように「誰でも」努力して変われるのだろうか。

2.3.2希望をもたらす成功者のイキり

界隈を観察していると、情報商材を購入したことで「女性とセックスができるようになりました!」という歓喜の声を耳にすることがある。もちろん、それは名声のために発せられた虚栄かもしれないし、販売者がユーザーに依頼して発言させただけかもしれないし、読者が媚を売るために言っただけかもしれない。

だが、そのような可能性を捨て去り、字義どおりに受け止めよう。というか、筆者自身もナンパ師界隈や恋愛工学の知見をもとに女性を抱いているため、すべての知識が実用的ではないと極論を述べるつもりはない。

ともあれ、界隈では女性経験がなかったものが「脱童貞」を図り、「非モテ」をバカにするという風潮がある。筆者からすれば幼稚極まりない振る舞いなのだが、あちこちで「マウンティング」が生じる。(これもマウンティングの一種である。自戒)。

また、界隈では「即至上主義」といったマッチョな価値観があり、抱いた女性のプロフィールや経緯を報告する「即報文化」が存在する。また、「スゴウデ」と呼ばれるベテランナンパ師や講師をしているものもいる。

このような2つの特性から、セックスに失敗した情報は基本的に流れてこない。特に、それで生計を立てていたり、Twitterがアイデンティティの一部になっていたりする人ほどそうだ。論理必然的に、自身の品格を下げるような行為は差し控える。(あえて失敗した情報を発信する高度な発信の形態もある。)

したがって、界隈に流れてくる情報の大半は「成功物語」である。

このような背景を知らないと、界隈に流れてくる情報が「真理」であると誤認する。また、誰にでも有効なエッセンスであると錯覚して「希望」を抱く。だが、成功者の中には無数の失敗経験がある。それらは語られることが少なく、利益(金、承認)のために成功体験が語られる。

スーパー抽象的にまとめれば、ナンパ師界隈では発信者による「出版バイアス」と読者の「生存バイアス」との共犯関係によって「発信者が言いたいことだけを言い、読者が信じたいことだけを信じる」という土壌が形成されている。

2.2.3.進化生物学からのダメだし

身も蓋もないことを強調すれば、人間が女性から欲求されるかどうかは受精卵のころに決定されている。これは、哲学でいえば運命論的で希望がない話である。しかし、読者の中には幼少期における性愛的挫折を経て、それを心の奥底で感じている者もいるのではないだろうか。

もちろん、人間は動物とは異なる。とりわけ、自意識をもち自己や環境を改変する能力をもっている。そのため、幼少期に冴えなくても界隈の知見によってセックスできるようになれる。

例えば、幼少期のLV.30が努力してLv,40になることは可能だろう。そして、Lv.30では抱けなかった女を抱く。骨格やパーツの配置によってはさらなる上昇も可能だ。しかし、もともとLV.80のナチュラルには敵わない。

理論的には、女性は上位の雄(アルファメイル)とセックスするように進化してきた。そのため、いくら自分のレベルをあげてもLv.40はLV.80には敵わないのである。

他にも、世の中にはどうしようもないレベルの男性がいることも事実だ。これは差別ではなく、事実だ。

先天的に身体的・知的障害を患っていたり、顔のパーツ配置に問題があったり、骨格や身長に難を抱えていたりすればどうだろうか。おそらく、いくら界隈の知見を学んだとしても活きるとは限らない。

上記の言質に対して、少数の事例を以てして反論することは容易だ。例えば、「乙武氏」や「低身長のジャニーズ」などが該当するが、それはあくまでも外れ値である。そのため、それらは、構造的弱者男性が欲求されない傾向を反駁する論拠にはならない。

筆者は、ナンパ師界隈の「属人性を無視した方法論」に辟易している。それは、弱者男性に「夢」と「希望」を売り、彼らをさらなる「絶望の淵」へと落とすからである。光を見れば見るほど闇が深くなる。この海溝が「無敵の人」を量産する土壌にならないかを懸念している。

3.結論

本稿では、ナンパ師界隈における情報商材の販売を「性愛コンプレックス産業」の一つとして位置づけた。情報商材は「夢」と「希望」を売り、「真理」を敬遠する。そして、界隈の知識を吸収するたびに自己批判自己点検が始まり、絶え間ないコンプレックスの創出が始まる(無間地獄)。このような、マッチポンプから脱出するためには①読者が批判的思考力をもつこと、発信者が②景品表示法を遵守して根拠なき宣伝文句の使用を辞めることしかないが、それは無理でしょうが・・・。

「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」不当景品類及び不当表示防止法」第5条(不当な表示の禁止)

あなたも記事の投稿・販売を
始めてみませんか?

Tipsなら簡単に記事を販売できます!
登録無料で始められます!

Tipsなら、無料ですぐに記事の販売をはじめることができます Tipsの詳細はこちら
 

この記事のライター

関連のおすすめ記事

  • 【最速1日で女ウケコーデGET】究極モテファッションアイテム大全  ◆モテアイテム130越え&コーデ集175越え◆

    ¥14,980
    1 %獲得
    (149 円相当)
    ラテス@外見改善コンサルReMake

    ラテス@外見改善コンサルReMake

  • 対彼女コミュニケーションを良好にする秘訣

    ¥5,000
    1 %獲得
    (50 円相当)
    けーま

    けーま

  • 【はじめに①「原則中心に生きる」】「七つの習慣でモテる×七つの習慣をモテから学ぶ」ビジネスから婚活まで通ずる「成功の原則」

    ヨシ【男が自由を手にする!恋愛強者の七つの習慣】

    ヨシ【男が自由を手にする!恋愛強者の七つの習慣】