技術士R04【1203農業部門-農業農村工学】Ⅲ-2|1800字では伝えきれない!骨太論述と全詳解|複合災害対応の防減災対策と流域リスク管理
小泉士郎🎈|技術士(建設・総監部門)×セルフケア
🔶R04_Ⅲ-2|過去問題
近年、気候変動の影響等により豪雨による災害が頻発化・激甚化し、農村においては、湛水被害やため池の被災など多大な被害を受ける事態が発生している。このため、これらリスクに適切に対応し、安定した農業経営や農村の安全・安心な暮らしを実現する防災・減災の取組の重要性が一層増している。また、流域全体の水害リスクに対応するため、農地・農業水利施設の多面的機能を活用する取組も重要となってきている。このような状況を考慮して、以下の問いに答えよ。
(1)豪雨による災害リスクの高まりに対応するための農村における防災・減災対策をハード・ソフト両面から総合的に進めていくに当たって、農業農村工学の技術者の立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、ハード・ソフト両面の視点を踏まえ、専門技術用語を交えて示せ。(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
「日本技術士会」HP
🔶R04_Ⅲ-2【1.5倍論述のための】骨子例
(1)豪雨災害リスクの高まりに対応するための農村防災・減災の多面的課題
〇観点1:施設機能の維持
・向上と設計クライテリアの適正化
・老朽化施設の安全性確保と性能向上の必要性
・最新降雨データに基づく機能保全計画の策定
〇観点2:流域全体での多面的機能の戦略的活用
・農地・水利施設の貯留機能の活用促進
・流域治水効果の評価技術と連携体制の構築
〇観点3:地域社会を包含した防災体制の強化と技術導入
・住民主体の避難・応急対応体制の脆弱性
・先端技術活用と総合的防災体制の構築
(2)最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・施設機能の維持・向上と設計クライテリアの適正化
・他課題解決の基盤的前提条件としての位置づけ
▽解決策1:ため池の耐震・耐水性能強化と総合的な防災対策
・堤体補強と洪水吐能力増強による安全性向上
・遠隔操作システム導入とハザードマップ更新
▽解決策2:排水施設の能力増強とストックマネジメントの導入
・機能診断に基づくポンプ更新と排水路拡幅
・予防保全型施設更新計画による長寿命化
▽解決策3:水路システムの再編と高度な情報管理体制の整備
・パイプライン化と水路網統廃合による効率化
・SCADA、GIS、AIを活用した予防保全型管理
(3)解決策実行に伴うリスク及びその対策
◇リスク及びその対策1:施設の高度化による管理負担の増大
・専門技術力不足と緊急時対応体制の脆弱化
・広域化推進と遠隔技術支援体制の構築
◇リスク及びその対策2:想定を超える降雨への対応限界
・設計外力超過時の被害発生と同時多発被災
・多重防御設計とタイムライン防災計画の導入
◇リスク及びその対策3:事業費増大と維持管理費の確保困難
・イニシャルコスト負担と将来的管理費増大
・費用対効果分析と再生可能エネルギー活用による財源確保
🔶R04_Ⅲ-2【深掘り考察】設問(1)解答
(1)豪雨災害リスクの高まりに対応するための農村防災・減災の多面的課題
〇観点1:施設機能の維持・向上と設計クライテリアの適正化
既存の農業水利施設は老朽化が進行し、近年の降雨量増大や降雨強度の激甚化に対し十分な安全性が確保できていない。ため池は築造後長期間が経過し、堤体の老朽化や設計基準を上回る豪雨による浸透破壊や越流決壊リスクが高まっている。排水機場も経年劣化により豪雨時の緊急排水で機能不全に陥る恐れがある。最新の降雨データとハザード評価に基づき、施設の耐水・耐震性能向上のための機能保全計画策定と長寿命化対策の推進が急務である。
〇観点2:流域全体での多面的機能の戦略的活用
農地や農業水利施設が持つ雨水貯留機能や洪水調節機能を流域治水の概念に基づき活用する取組が不十分である。水田の湛水機能について、営農への影響や地権者の合意形成が課題となり、田んぼダム機能の活用が限定的である。ため池の洪水調節機能を高めるための事前放流や水位管理について、施設管理者への技術支援やリアルタイムの気象・水位情報に基づいた操作マニュアル整備が遅れている。流域全体での治水効果を適切に評価・可視化する技術的手法や、関係機関との連携体制の確立が求められている。
〇観点3:地域社会を包含した防災体制の強化と技術導入
農村地域における防災情報の伝達体制や、施設管理者・地域住民を主体とした避難・応急対応体制の構築が脆弱化している。ため池や農業用水路のハザードマップ作成は進められているが、地域住民への周知やマップを活用した実践的な避難訓練の実施が浸透していない。土地改良区や農業者による施設の日常点検や異常時の通報体制は、高齢化や担い手不足により脆弱化している。GISやドローン等の先端技術を活用した施設監視システムや被災状況把握システムの導入が遅れており、地域コミュニティと行政、専門技術者が連携した実効性のある総合的な防災・減災体制の構築が必要である。
🔶R04_Ⅲ-2【重要課題特定と解決策の提示】設問(2)解答
(2)最重要課題およびその解決策
