🔶R07_I-2|過去問題
近年、産業界で「well-being(ウェルビーイング:人が身体的、精神的、社会的に良い状態であること)」という概念が、注目を集めている。マーケティングに活かすことによってビジネスに有益であることからwell-beingを訴求した多くの商品、サービスが提供されている。繊維製品についてもwell-beingを訴求した商品が、今後大きな市場を形成することが予想される。このような状況を踏まえ、技術者としての立場で以下の問いに答えよ。
(1)繊維製品製造業が「well-beingに繋がる商品づくり」に取り組むうえで、多面的な観点から技術課題を3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その技術的課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した技術課題のうち最も重要と考える技術課題を1つ挙げ、その技術課題に対する複数の解決策を、繊維部門の専門技術に関する用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示した解決策を実行して生じる派生効果と懸念事項を述べ、専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
(4)前問(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点を踏まえて述べよ。
「日本技術士会」HP
🔶R07_I-2|骨子例
1.well-beingに繋がる繊維製品製造の技術課題
〇観点1:生体適合性・安全性の観点
・有害物質を含まない染料・加工剤の選定と精練・漂白プロセスの確立
・敏感肌対応の低刺激性繊維開発と酵素処理による表面改質技術
〇観点2:快適性・機能性の観点
・快適性加工剤の最適処方開発と耐久性評価技術
・人体計測データに基づくパターン設計と風合いの定量化技術
〇観点3:環境配慮・持続可能性の観点
・染色排水のCOD低減と生分解性繊維を用いた製品開発
・リサイクル技術の高度化とトレーサビリティシステム構築
2.最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・着用時の快適性を高める機能性付与と耐久性評価技術の確立
▽解決策1:複合機能加工技術の開発
・吸水速乾性と抗菌防臭性を両立させる複合機能加工剤の処方設計
・デジタルプリント技術による部位別機能付与
▽解決策2:耐久性評価システムの確立
・JIS L 1902準拠の洗濯耐久性試験と実着用想定試験の標準化
・画像処理による自動検査技術と促進劣化試験による長期性能予測
▽解決策3:消費科学的評価の実施
・人体計測データと着用感評価による快適性の主観・客観評価
・消費者モニター調査による満足度の数値化
3.派生効果および懸念事項への対応策
◇派生効果
・高付加価値製品開発による市場差別化と収益性向上
・消費者ニーズの定量把握による製品企画精度とブランド信頼性向上
◇懸念事項及びその対応策1:コスト増加への対応
・エネルギー管理システム導入とCAD/CAMシステム活用による生産効率向上
・ロット管理最適化による歩留まり改善
◇懸念事項及びその対応策2:環境負荷の増大
・酵素処理による代替加工法と染色排水の色度・COD低減化技術
・製品ライフサイクルアセスメントによる環境影響の定量評価
4.業務遂行に必要な要件
☆技術者としての倫理の観点
・消費者安全を最優先とした有害物質残留検査と安全性データの開示
・科学的根拠に基づく性能表示と作業者の安全衛生管理
☆社会の持続可能性の観点
・環境負荷低減型プロセスと染色排水再利用技術による水資源保全
・リサイクル技術とトレーサビリティシステムによるサーキュラーエコノミー推進