技術士R01【1203農業部門-農業農村工学】Ⅲ-1 ｜1800字では伝えきれない！骨太論述と全詳解｜老朽化施設の機能保全とリスク管理
小泉士郎🎈｜技術士(建設・総監部門)×セルフケア
🔷R01_Ⅲ-1｜過去問題
我が国の農業水利施設は、戦後の食糧増産の時代や高度経済成長期に整備されたものが多く、老朽化が進行した施設が増加してきていることから、これらの施設の機能を効率的に保全していくことが必要となっている。このような状況を考慮して、以下の問いに答えよ。
（１）農業水利施設の機能の効率的な保全について、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。
（２）（１）抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
（３）（２）提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
「日本技術士会」HP
🔷R01_Ⅲ-1【1.5倍論述のための】骨子例
（１）老朽化施設の効率的保全における多面的課題
〇観点1：施設の劣化診断と状態把握の高度化
・非破壊検査技術導入の遅れと内部劣化把握の困難性
・優先順位付け基準の不十分さと科学的判断体制の未構築
〇観点2：予防保全型管理への転換と財源確保
・初期投資増加と土地改良区の賦課金収入減少
・戦略的保全計画の立案と長寿命化計画の実施
〇観点3：維持管理体制の脆弱化と技術継承
・管理者高齢化による日常管理能力の低下
・暗黙知の喪失と広域化に伴う調整体制の必要性
（２）最重要課題およびその解決策
▽最重要課題：診断技術の高度化と戦略的保全への転換
・科学的根拠に基づく高精度診断の必要性
・デジタル化された技術継承基盤の構築
▼解決策1：ICT技術を活用した効率的点検・診断システムの構築
・ドローンやAI技術による遠隔・自動点検の導入
・IoTセンサーとクラウド管理による状態基準保全への転換
▼解決策2：リスク評価に基づく優先順位付けと戦略的資源配分
・重要度と健全度のマトリクス図による客観的優先順位決定
・営農影響を想定したリスク評価と費用対効果の最大化
▼解決策3：非破壊検査技術の導入と専門技術者育成の強化
・非破壊検査技術の標準化と診断マニュアルの整備
・専門技術者育成研修と広域的技術支援システムの構築
（３）解決策実行に伴うリスク及びその対策
◇リスク及びその対策1：初期投資及び維持管理費用増大による財政圧迫
・国や都道府県の補助事業活用と共同購入によるコスト分散
・パイロット事業の効果検証とライフサイクルコスト評価
◇リスク及びその対策2：技術への過度な依存と判断能力の低下
・ICT技術の補助ツール化と最終判断における技術者原則の明確化
・現場巡視の継続実施とバックアップ体制の整備
◇リスク及びその対策3：情報セキュリティと重要インフラ機能維持
・高度なセキュリティ対策とアクセス権限の厳格管理
・情報管理規程の整備とデータの匿名化処理
🔷R01_Ⅲ-1【深掘り考察】設問（１）解答
（１）老朽化施設の効率的保全における多面的課題
◯観点１：施設の劣化診断と状態把握の高度化
老朽化が進行する膨大な施設群に対し、内部劣化の的確な把握が困難である。非破壊検査技術の導入が遅れており、コンクリート構造物や鋼材の潜在的損傷を見逃すリスクがある。また、限られた予算と人員で全施設を詳細診断することは非効率であり、施設の重要度や劣化傾向に基づく優先順位付けの判断基準が不十分である。さらに、劣化メカニズムの特定や余寿命予測手法の高度化が求められ、補修・更新の最適タイミングを科学的に判断する体制の構築が課題となっている。
◯観点２：予防保全型管理への転換と財源確保
事後保全から予防保全への転換は、突発的故障による営農被害を回避するために不可欠である。しかし、定期点検や計画的補修の実施には初期投資と維持管理費用の増加が伴う。農業従事者の高齢化や担い手不足により土地改良区の賦課金収入が減少する中、安定的な財源確保が喫緊の課題である。また、施設の重要度や劣化状況を踏まえたライフサイクルコスト最小化を目指す戦略的保全計画の立案と、長寿命化計画の着実な実施が求められている。
◯観点３：維持管理体制の脆弱化と技術継承
土地改良区では管理者の高齢化と若手人材不足により、日常管理や緊急対応能力が低下している。専門知識を持つ技術者不足により、適切な維持管理や補修工事の発注・品質管理が困難となっている。さらに、ベテラン技術者の退職に伴い、施設特性や補修履歴などの暗黙知が失われ、技術継承が喫緊の課題である。管理体制の広域化・合理化が進む中、地域実情に応じた柔軟な対応と管理者間の円滑な調整体制の構築も必要となっている。
🔷R01_Ⅲ-1【重要課題特定と解決策の提示】設問（２）解答
（２）最重要課題およびその解決策
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