不知火彩(26) 警視庁刑事、身長175cm、股下82cm
自分の影をヘルスターに分身させて怪人、戦闘員と戦わせる。

ヘルスター 彩の影の分身。人間の女性と同じ肉体構造。

第1章 序章:影を宿す刑事
東京湾に面した埠頭。夜の風が鉄と油の匂いを混ぜて吹き抜け、コンテナ群の隙間をさざめかせていた。街灯の光はまだらに濡れた路面に反射し、橙色の輪をいくつも浮かび上がらせている。
その一角に立つひとりの女刑事――不知火彩、二十六歳。
警視庁捜査一課特捜班に所属する彼女は、長い黒髪、ミニスカのタイトなスーツにジャケットを羽織っていた。凛とした眼差しは夜闇を貫き、わずかな異変も見逃さない。

「ここで“奴ら”が取引をしているはず……」
彩は耳に差した通信機に低く囁いた。返ってきたのは短いノイズだけ。
すでに無線を妨害されている。――となれば、目の前にある倉庫の奥で何かが進行しているのは間違いなかった。
腰のホルスターに指をかけた瞬間、鋭い気配が背後から迫る。振り向くと、闇の中から現れたのは人間とは異なる輪郭――鋭い鉤爪と不気味な仮面をつけた怪人。さらに、全身を黒い戦闘服で覆った戦闘員たちが、数名、じりじりと円を描くように彼女を取り囲んだ。

「やはり……怪人軍団か」
彩はすぐに拳銃を抜き放つ。
引き金を引くと、火花が夜を裂き、

二体の戦闘員が倒れ込んだ。だが次の瞬間、別の戦闘員が飛びかかり、銃口を掴もうとする。彩は即座にハイキックを繰り出し、男の顎を跳ね上げた。

スカートの裾が翻り、鋭い蹴撃が次々と戦闘員を弾き飛ばす。その動きは刑事でありながら武道家として鍛え上げた彼女ならではのものだった。
だが――戦況は数の上で圧倒的に不利だった。怪人軍団は途切れることなく現れ、波のように押し寄せてくる。息を切らせながら、彩は唇を噛んだ。
「……仕方ないわね。まだ言いたくはなかったけど――」
彼女は足元に落ちる自分の影を見つめる。街灯に照らされて伸びた黒い影が、ゆらりと揺らめいた。

彩は低く、しかしはっきりと命じた。
「――影よ行け!」
その言葉と同時に、地面の影の胸の心臓が赤く脈動し始める。

そして影から黒い人間が分離して立ち上がる。

人の形をとりはじめる。やがて、もうひとりの彩がそこに現れた。

それは彼女の影から生まれた分身――ヘルスター。
ミニスカ戦闘服に身を包み、仮面で顔を覆った女戦士。腰から伸びるベルトには紅い紋章が光を宿し、異形の力をまとっていた。
戦闘員たちは一瞬怯んだが、怪人が咆哮をあげて突撃を命じる。
ヘルスターは影の刃を腕にまとわせ、群がる敵を切り裂いていく。蹴りと拳、そして鋭い掌底が夜に炸裂し、次々と戦闘員を地に沈めた。


その姿を見ながら、彩は冷たい汗を流していた。――この力を見せるわけにはいかない。だが今はもう、背に腹は代えられないのだ。
ヘルスターの影が閃くたび、怪人軍団は押し返されていった。
しかし、彩の胸中にはひとつの不安が渦巻いていた。
――「影よ戻れ」と言わない限り、ヘルスターは影に戻らない。分身は半ば独立した存在であり、制御を誤れば彩自身が危機に晒される。
だがその不安を振り払うように、彩は前へと駆け出した。彼女自身もまた、銃と蹴撃を駆使し、ヘルスターと並んで怪人軍団に挑みかかっていく。

