市役所がAI電話を試し始めた。自社の電話窓口なら何を任せる?発表の確認表と「AIに任せる質問・人に回す質問」の仕分け表を作ってみよう
AI実用ラボ
1. この記事で作るもの:発表の確認表と、電話の質問の仕分け表
まず、これから作るものの完成例を見てください。
以下はすべて架空の会社・人物の例です。
サンプル商会(架空の会社)の事務担当・佐藤さん(架空の人物)が作った確認表(抜粋)
| 知りたい項目 | 確認できたこと | 出典 | 記載がないこと |
| 実証期間 | 2026年10月15日9時〜12月15日17時30分 | グラファーの発表 | この項目は記載あり |
| 対象業務 | 住民票などの証明書、住民異動届、印鑑登録、マイナンバーカード手続きなどに関する定型的な問い合わせ | グラファーの発表 | この項目は記載あり |
| 利用料金 | 発表に記載なし | 発表・サービス紹介ページ | 利用料金の記載なし |
この記事のゴールは、上の表のような「発表の確認表」と、自社の電話にかかってくる質問を「AIに任せる」「人に回す」に振り分ける「仕分け表」を、あなた自身が作れるようになることです。
きっかけは、市役所がAI電話を試し始めたというニュースでしょう。
「うちの電話窓口でも同じことができるのか」「いったい何をAIに任せて、何を今までどおり人が受ければいいのか」——そう思って読み進めたくなる内容です。
ただ、ニュースに出てくるのは市役所の話で、自社の規模や業種にそのまま当てはまるとは限りません。
だからこそ、事実と自社の事情を分けて並べる作業が必要になります。
用意するものは、ブラウザとメモ帳か表計算ソフトだけです。
申し込みも契約も設定変更も不要で、費用もかかりません。
やることは、公開されている発表を読んで分かったことを書き出し、自社の電話の用件を仕分けていく、という机の上の整理です。
ひとつだけ先にお伝えしておきます。
この記事は「導入すべきかどうか」の答えを出しません。
料金の見込みや効果の予測も扱いません。
判断そのものは、事業者や自治体の窓口に確認してから決めるものだからです。
ここでは、その判断に必要な材料をあなたの手元にそろえるところまでを一緒に進めます。

市役所のAI電話、うちの電話窓口でも同じようにできるんでしょうか?

その判断の前に、発表に書いてあることと書いていないことを分けて確認しましょう。
2. 発表で確認できたこと
最初に、今回のニュースの元になっている発表で、どこまでが実際に書かれているのかを整理します。
取り上げるのは、株式会社グラファーが2026年10月15日に出した「兵庫県西宮市、市民課業務に関する電話対応にAI電話『Graffer AIオペレーター』を実証導入」という発表です。
同じ内容はグラファーの公式お知らせでも読めます。
あわせて、サービス紹介ページ「Graffer AIオペレーター」も確認しています。
リンクは次の3つです。



発表に書かれていたこと
西宮市が、市民課業務に関する電話対応にAI電話「Graffer AIオペレーター」を実証導入すること。
実証期間は2026年10月15日9時から12月15日17時30分までです。
対象は、住民票などの証明書、住民異動届、印鑑登録、マイナンバーカード手続きなどに関する定型的な問い合わせです。
役割分担も書かれています。
定型的な問い合わせはAIが24時間対応し、個別の判断が必要なケースは職員が開庁時間(平日9時〜17時30分)に対応します。
AIが応答困難な場合は、用件を引き継いで職員へ転送する仕組みです。
導入の目的としては、市民がいつでも問い合わせできる環境の整備と、職員の業務効率化が挙げられています。
話し言葉で質問でき、会話ログの要約・文字起こし機能があり、実証期間中に応答ログの分析と改善施策の提案を実施する予定であることも記載されています。
サービス紹介ページに書かれていたこと
機能として、生成AIによる回答・転送、質問と回答の自動応答(あらかじめ用意した質問と答えの集まりを基に答える方式)、ヒアリング、電話転送の振り分け、伝言、SMS送信、録音・文字起こしなどが挙げられています。
有人転送については、複雑な用件は担当者へ転送し、途中から人の対応へ切り替えられ、用件を要約して職員へ伝言できるとされています。
導入面では、導入期間2〜3週間、公開まで約2か月、既存の電話機器の変更や工事は不要、クラウドサービスで、国の支援金の対象となる場合があるとの記載があります。
記載が見つからなかったこと
一方で、次の項目は発表にもサービス紹介ページにも記載が見つかりませんでした。
利用料金・費用、実証の成果指標や削減時間・正答率などの結果(実証が始まった直後で、結果の記載はありません)、うまく答えられない例などの制約の具体的な説明、対応言語、市民の通話内容の保管期間や取扱いの詳細です。
ここで大切なのは、記載がないことを「提供していない」「無料だ」「使えない」と読み替えないことです。
あくまで「この発表だけでは判断材料がまだ無い」という意味にすぎません。
料金や契約条件のように判断を左右する情報は、発表文だけで足りない場合、事業者が公開している料金・契約の資料や窓口への確認が必要になります。
また、発表は後から更新されることがあります。
確認したのは2026年10月16日時点の内容です。
実際に問い合わせる前には、もう一度同じページを開き直して、内容が変わっていないかを確かめてください。

図: 発表で確認できたことと、記載がなかったことの整理です。
3. 手順①:発表の文面を『確認できたこと』欄に書き写す
西宮市が市民課の電話対応にAI電話を実証導入する、という発表を見て「自社の電話窓口でも同じことを考えられるか」と気になったとき、いきなり見積もりや社内検討を始めると、判断の土台がずれていきます。
最初にやるのは、発表に何が書いてあるかを、あとから見返せる形で書き写しておくことです。
記憶で要約したつもりの内容は、打ち合わせを重ねるうちに少しずつ変わっていきます。
ここではAI電話の導入を検討する前の確認作業として、確認表を作ります。
用意するものは、ブラウザで見られるページと、メモ帳か表計算ソフトだけです。資料請求も申し込みも契約も設定変更も要りません。ページを開いて書き写す作業なので、お金はかかりません。
まず、発表の名前と日付、確認日を書く
見ている発表は、Graffer(株式会社グラファー)のプレスリリース「兵庫県西宮市、市民課業務に関する電話対応にAI電話『Graffer AIオペレーター』を実証導入」で、発表日は2026年10月15日です。
同じ内容がグラファーの公式お知らせにも出ています。
リンクは、手順の冒頭に挙げた3つ(プレスリリース、グラファー公式お知らせ、サービス内容のページ「Graffer AIオペレーター」)です。
発表の文面とサービス紹介ページの文面は別のものなので、出典欄でも区別して書きます。
この章では、発表(プレスリリース・公式お知らせ)と、サービス紹介ページの2つを使います。
表の上には「確認日:2026年10月16日」のように、自分がページを開いた日も書いておきます。
列は4つに固定する
確認表の列は次の4つです。
- 知りたい項目
- 確認できたこと(原文の短い引用)
- 出典
- 記載がないこと
「確認できたこと」欄は、原文の一文をかぎ括弧でくくって短く引用し、そのあとに矢印を書いて、自分の言葉での短い言い換えを添えます。
引用とかぎ括弧の外を混ぜなければ、あとから見ても「どこまでが発表の言葉か」が分かります。
要約だけを書くと、自分が足した解釈が発表の内容に見えてしまうので、引用と言い換えは必ず並べて書きます。
引用は必要な一文だけにし、長く丸写ししません。
項目ごとに文を探す
ページを開いたら、ページ内検索(ブラウザの「Ctrl」+「F」など)で次の言葉を探すと、該当する文が見つかります。
「実証期間」「対象業務」「役割分担」「転送」「ログ」「費用」「成果」などです。
見つけた文を、知りたい項目ごとに短く引用します。
書き方の見本は次のとおりです。
| 知りたい項目 | 確認できたこと(原文の短い引用)と自分の言葉での言い換え | 出典 | 記載がないこと |
| いつからいつまで | 「実証期間:2026年10月15日(木)9時〜2026年12月15日(火)17時30分」→10月15日の9時から12月15日の17時30分まで試す、という意味 | プレスリリース・公式お知らせ(発表日2026年10月15日) | この項目は記載あり |
| 何の問い合わせが対象か | 「住民票などの証明書、住民異動届、印鑑登録、マイナンバーカード手続きなどに関する定型的な問い合わせ」→答え方が決まっている用件が対象 | プレスリリース・公式お知らせ | この項目は記載あり |
| AIと人の分担 | 「定型的な問い合わせはAI(24時間対応)、個別の判断が必要なケースは職員(開庁時間の平日9時〜17時30分)」→決まった答えはAI、個別の判断は職員 | プレスリリース・公式お知らせ | この項目は記載あり |
| 人に回すとき(転送) | 「AIが応答困難な場合は用件を引き継いで職員へ転送する」→AIが答えられないときは人が受ける | プレスリリース・公式お知らせ | この項目は記載あり |
| 記録の扱い | 「会話ログの要約・文字起こし機能がある」「実証期間中に応答ログの分析と改善施策の提案を実施予定」 | プレスリリース・公式お知らせ/サービス紹介ページ | 通話内容の保管期間・取扱いの詳細は発表に記載なし |
| 費用 | 発表に記載なし | プレスリリース・公式お知らせ/サービス紹介ページ | 利用料金・初期費用・請求の単位などの記載は見つからない |
| 成果 | 発表に記載なし | プレスリリース・公式お知らせ | 成果指標・削減時間・正答率などの結果は見つからない |
見つからない項目は空欄にしない
費用や成果のように、探しても該当する文が見つからない項目があります。
このとき、欄を空欄のままにしないでください。
空欄は「調べていない」のか「書いていない」のかが分からなくなり、あとで見た人によって受け取り方が変わります。
見つからない項目には「発表に記載なし」と書きます。
同じことは、サービス紹介ページにも記載がない場合は「サービス紹介ページにも記載なし」と書き足します。
第2章で確認したとおり、記載がないことは、未提供・無料・有料のどれも意味しません。空欄のまま放置せず「記載なし」と明記して、第4章の手順6で作る質問リストへ引き継ぎます。
最後に、発表は後から更新されることがあります。
事業者へ質問する前にページを開き直し、確認日を新しくしてください。
開き直して内容が変わっていたら、確認表もその場で書き直します。

図: 確認表と仕分け表づくりの4つの手順です。

発表に費用が書いていないのは、無料ってことですか?

いいえ。書いていないだけで、無料とも有料とも言えません。自分で決めず、質問に変えます。
4. 手順②:自社の電話の質問を『AIに任せる/職員に回す』に仕分ける
発表から借りられる考え方は、一つに絞られます。定型的な問い合わせはAI、個別の判断が必要なケースは職員という分担です。西宮市の場合は、AIが24時間対応、職員が開庁時間の平日9時〜17時30分とされ、AIが応答困難な場合は用件を引き継いで職員へ転送する、と書かれています。この二つの物差しを、自社の電話窓口に当てはめてみます。
手順1:よく聞かれる質問を10個書き出す
通話メモ、社内で共有している案内文、よくある質問の一覧を見ながら、自社の電話でよく聞かれる質問を10個書き出します。
実際の会話をそのまま写すのではなく、「営業時間は?」
「この書類はどこに出す?」
のように質問の形に置き換えます。
個人名・会社名・電話番号など、相手が特定できる情報は書きません。
10個にこだわる必要はありませんが、数が少ないと分け方の傾向が見えないので、まず10個を目安にします。
手順2:答えが決まっているかで分ける
書き出した質問を、次の目安で分けます。
AIに任せやすい質問
- 答えが一つに決まっている(営業時間、所在地、定休日、駐車場の場所など)
- 手続きの案内(必要なもの、受付時間、提出先など)
- 同じ内容を何度も案内している
職員に回す質問
- 相手ごとに答えが変わる、個別の事情の判断が必要なもの
- 苦情やクレーム
- 金額や契約の確認(見積もり、契約内容、支払いの相談など)
これはあくまで目安です。
同じ「営業時間」でも、繁忙期だけ時間が変わるなら個別判断に近くなります。
迷ったときは無理に決めず、次の手順で「保留」にします。
手順3:仕分け表にする
表の列は「質問/どちらに任せるか/判断の理由」の3つにします。
任せる先は「AI」「職員」「保留」の3つに言葉を統一し、空欄を作りません。
理由を必ず書き、理由が書けないものは「保留」にして、事業者や社内の答えを得てから決めます。
「なんとなくAI」で埋めてしまうと、あとから見直すときに根拠が分からなくなります。
手順4:転送の条件を決める
AIに任せる質問でも、最後は人のところへ戻る道を用意します。自社で決めておきたい条件は少なくとも二つあります。AIが答えられなかったときと、相手が人を希望したときです。前者は発表にも触れられており、サービス紹介ページでは、複雑な用件は担当者へ転送し、途中から人の対応に切り替えられ、用件を要約して職員へ伝言できる、とされています。
どちらにするかを決めていないと、いざというときに「どうするんだったか」で止まってしまいます。
条件と、そのときに誰が受けるか(担当者を固定するのか、代表に戻すのか)をメモに書いておきます。
手順5:引き継ぎで伝えたい項目をメモにする
人が受けることになったとき、次の項目を職員へ伝えたい情報としてメモにします。
- 用件
- 連絡先
- 折り返し希望の有無と、希望する時間帯
サービス側には用件を要約して職員へ伝える機能があるとされていますが、自社として必ず残したい情報は先に決めておきます。
個人情報の扱いは、手順6の質問リストで確認する項目の一つになります。
手順6:『発表に記載なし』を質問リストに移す
確認表で「発表に記載なし」だった項目は、推測で埋めずに、事業者へ聞く質問に変えます。
質問の形にすると、次のようになります。
- 費用:利用料金はいくらか。初期費用・月額・通話量による変動の有無、最低契約期間、解約の条件はどうか
- 成果:実証では何を指標にしていたか。結果は公表されているか
- 記録の扱い:録音・文字起こしのデータはどこに保管され、保管期間はどれくらいか。誰が見られるか。削除を頼めるか
- 制約:うまく答えられない質問の例はあるか。対応言語は何か
- 導入条件:導入期間、公開までの期間、既存の電話機器の変更や工事の要否
導入条件については、サービス紹介ページに、導入期間2〜3週間、公開まで約2か月、既存電話機器の変更・工事は不要、クラウドサービス、国の支援金の対象となる場合がある、と記載があります。
ここは発表ではなくサービス紹介ページの記載で埋められます。
一方、費用はどちらのページにも記載がないので、質問リストに残します。
質問する前に、発表とサービス紹介ページを開き直し、記載が増えていないか確認してください。
発表の事例が自社に合うかは断定しない
西宮市の事例は、市民課の定型的な問い合わせが対象です。
自社の業種も、よく聞かれる質問の中身も同じとは限りません。
発表の分担がそのまま自社に当てはまるかどうかは、質問リストの答えと社内の状況がそろってから判断します。
この時点で費用の見込みや効果の数値を見積もったり、導入すべきかどうかを決めたりはしません。
仕分け表と質問リストがそろったら、次の章の記入例と点検で、抜けがないかを確かめます。
5. 具体例:佐藤さんの確認表と仕分け表、質問リスト
ここからは、記入のイメージをつかむための架空の例です。
サンプル商会という会社と、その事務担当の佐藤さんは実在しません。
自社の表を作るときの下書きとして読んでください。
佐藤さんは、取引先や顧客からの電話を毎日何件か受けています。
西宮市の発表を見て「うちの電話窓口でも同じように任せられるだろうか」と考え、まず発表そのものを確認表にすることにしました。
出典は次の2つです。
- Grafferのプレスリリース「兵庫県西宮市、市民課業務に関する電話対応にAI電話『Graffer AIオペレーター』を実証導入」(2026年10月15日発表)
- サービス紹介ページ「Graffer AIオペレーター」
どちらも、第2章に挙げたリンクのとおりで、確認日は2026年10月16日です。
確認表
| 知りたい項目 | 確認できたこと(原文の短い引用)と自分の言葉での言い換え | 出典 | 記載がないこと |
| 実証期間 | 「2026年10月15日(木)9時〜2026年12月15日(火)17時30分」→この期間に試す、という意味 | 発表 | この項目は記載あり |
| 対象業務 | 「住民票などの証明書、住民異動届、印鑑登録、マイナンバーカード手続きなどに関する定型的な問い合わせ」→答え方が決まっている用件が対象 | 発表 | この項目は記載あり |
| AIと職員の分担 | 「定型的な問い合わせはAI(24時間対応)、個別の判断が必要なケースは職員(開庁時間の平日9時〜17時30分)」→決まった答えはAI、個別の判断は職員 | 発表 | この項目は記載あり |
| 転送 | 「AIが応答困難な場合は用件を引き継いで職員へ転送する」→AIが答えられないときは人が受ける | 発表 | この項目は記載あり |
| 利用料金 | 発表に記載なし | 発表・サービス紹介ページ | 利用料金・初期費用の記載なし(質問リストへ移す) |
| 成果の数値 | 発表に記載なし | 発表・サービス紹介ページ | 成果指標・削減時間・正答率の記載なし(質問リストへ移す) |
| 通話内容の保管期間 | 発表に記載なし | 発表・サービス紹介ページ | 保管期間・取扱いの詳細の記載なし(質問リストへ移す) |
ここで大切なのは、「記載なし」は「使えない」「無料」という意味ではないことです。
佐藤さんの場合も、発表とサービス紹介ページに書かれていないという意味でこの3行を記載なしとし、判断は保留したまま質問リストへ送っています。
仕分け表(自社の電話の質問10個)
次に佐藤さんは、最近かかってきた電話を思い出しながら質問を10個書き出し、「AI」と「職員」のどちらに置くかを決めました(今回は保留はありませんでした)。
ここで「AI」とした項目も、任せると決めたという意味ではなく、事業者に確認するまでの仮の仕分けです。
| 電話の質問 | 仕分け | 判断理由 |
| 営業時間を教えてほしい | AI | 毎回同じ答えで済み、個別の判断が要らない |
| 会社の所在地と最寄り駅を教えてほしい | AI | 同上 |
| 定休日を確認したい | AI | 同上 |
| 資料を送ってほしい(宛先の聞き取り) | AI | 聞き取りができれば足り、判断が要らない |
| 担当者名と内線を確認したい | AI | 決まった一覧を答えるだけで足りる |
| 請求書の送付先を変更したい | 職員 | 取引条件に関わり、個別の確認が要る |
| 見積金額を相談したい | 職員 | 金額は個別の判断が必要 |
| 納期を相談したい | 職員 | 事情によって答えが変わり、個別の判断が必要 |
| クレームを伝えたい | 職員 | その場の判断と対応の組み立てが必要 |
| 取引先から新商品の相談を受けたい | 職員 | 定型的な問い合わせに当てはまらない |
転送の条件(自社で決めておく案)
発表では「AIが応答困難な場合は用件を引き継いで職員へ転送する」とされています。
サービス紹介ページには、複雑な用件は担当者へ転送できること、途中から人の対応へ切り替えられること、用件を要約して職員へ伝言できることが書かれています。
これを踏まえ、佐藤さんは転送する条件を次のように書き出しました。
- 質問がどの分類にも当てはまらないとき
- 相手が人と話したいと言ったとき
- クレームなど、その場で判断が必要な言葉が出たとき
- 聞き取りがうまく進まないとき
事業者へ聞く質問リスト
確認表で記載なしだった3項目と、判断に必要な周辺の項目を質問リストにしました。
- 利用料金はいくらで、何によって変わるか
- 成果をどう測る想定か(発表では実証期間中の応答ログの分析と改善施策の提案が予定されていますが、結果の数値はまだ示されていません)
- 通話内容の保管期間と取扱い
- 答えられない質問にはどんなものがあるか、そのとき転送はどう動くか
- 対応していない言語はあるか
- 自社の電話番号と既存の電話機器で同じように使えるか
- 転送先の番号や時間帯はどう指定するか
この例では、効果の数値や実績は一切書いていません。
発表にもサービス紹介ページにも、実証の結果や削減時間、正答率の記載が見つからないためです。

図: 仕分け表の記入例です。
会社名はすべて架空で、概念図です。

仕分けで迷う質問は、どちらに置けばいいですか?

無理に決めず「保留」に置いて、理由を書いておきます。答えを聞いてから振り分けましょう。
6. 確認リストと、うまくいかないときの戻り方
表を作り終えたら、次の5点を上から順に点検します。
どれも、あとで判断をやり直さずに済むための確認です。
- 確認表の全行に出典があるか。根拠にした文書名と確認日がたどれるようにします。あわせて、質問リストが確認表の「記載なし」項目と過不足なく対応しているかも見ます。
- 「確認できた」と書いた行に、原文の短い引用があるか。自分の言葉に置き換えただけの行は、いったん原文に戻して引用を付けます。
- 「記載なし」と判定した項目が、質問リストに移っているか。確認表の中に残したままだと、聞き忘れにつながります。
- 仕分け表の全質問に判断理由が書かれているか。理由のない行は、あとで見返したときに「なぜこうしたか」が分からなくなります。
- 効果や費用を推測で書いていないか。「このくらい減るはず」「無料だろう」といった書き足しがないかを見ます。
うまくいかないときの戻り方
質問が10個集まらない。 机の上だけで考えず、最近の電話メモや問い合わせメールを見返して、実際に聞かれた言葉をそのまま拾います。10個に満たなくても、集まった数で先に進めて構いません。
仕分けで迷う。 迷った質問は無理に決めず「保留」に置き、その理由を「判断が必要かどうか迷うため」と書きます。迷いを消すためにAI側へ寄せると、あとで理由を説明できなくなります。事業者への確認や社内の検討を経てから、最終的に振り分けます。
発表が更新された。 発表は更新され得ます。事業者や窓口へ質問する前に、出典にした文書を開き直し、確認日と内容を新しくします。開き直した結果、確認できたことと記載なしの区分が変わったら、確認表から直し、質問リストも同じように直します。
結論を出すのは、答えを聞いてから
ここまでの作業で分かるのは、発表に何が書かれていて何が書かれていないか、そして自社のどの質問をどちらに置くかの下書きまでです。
自社の電話窓口で何を任せるかを決めるのは、事業者や担当窓口へ質問リストを渡し、料金・保管期間・答えられない質問の扱いなどの回答を受け取ってからにします。
回答がそろえば、確認表の「記載なし」が埋まり、「AI」と仮に仕分けていた質問を任せる側に移せるかどうかを、根拠のある状態で判断できます。
この記事が少しでも参考になったら、AI実用ラボをフォローしていただけるとうれしいです。初心者にも分かりやすいAI活用情報をこれからもお届けします。
