ChatGPTや生成AIが話題を集める一方で、世界の広告業界では、別の大きな変化が起きている。
それが**Retail Media(リテールメディア)**だ。
この言葉を初めて聞いた人も多いかもしれない。
しかし、AmazonやWalmart、Tescoなど世界の大手小売企業は今、「商品を売る会社」から「広告を売る会社」へと進化し始めている。
市場調査会社Forresterは、世界のRetail Media市場は2025年に約1,800億ドル規模となり、2030年には3,000億ドルを超えると予測している。
つまりRetail Mediaは一過性のブームではなく、デジタル広告市場そのものを変える可能性を持つ巨大市場なのである。
Retail Mediaとは何か
Retail Mediaとは、小売企業が保有する購買データやECサイト、アプリなどを広告媒体として企業へ提供するビジネスだ。
従来、広告といえばGoogleやMeta(Facebook・Instagram)が中心だった。
しかしRetail Mediaでは、
・Amazonの商品検索画面
・WalmartのECサイト
・スーパーの公式アプリ
・ドラッグストアの会員アプリ
などが広告媒体になる。
例えば「ドッグフード」と検索した利用者に、メーカーが広告を表示させる。
あるいは、過去にオーガニック食品を購入した会員へ、新商品の広告を配信する。
重要なのは、「何を検索したか」ではなく、「実際に何を買ったか」という購買データを活用できる点にある。
このデータは広告主にとって非常に価値が高い。
なぜ今、急成長しているのか
背景には3つの変化がある。
① Cookie規制
これまで広告業界は、Webサイトの閲覧履歴をもとにターゲティングを行ってきた。
しかしプライバシー保護の強化により、サードパーティCookieは段階的に利用が制限されている。
その結果、企業は別のデータを必要としている。
そこで注目されているのが、小売企業が持つファーストパーティデータだ。
「誰が、何を、いつ買ったか」というデータは、自社が取得した情報であり、広告の精度向上にも役立つ。
② EC市場の拡大
オンラインショッピングが一般化したことで、小売企業は膨大な購買データを保有するようになった。
そのデータを広告へ活用すれば、新しい収益源になる。
商品販売だけに依存しないビジネスモデルへ転換できる点が、小売企業にとって大きな魅力となっている。
③ 利益率が高い
商品販売は仕入れや物流、人件費がかかる。
一方で広告事業は、一度基盤を整えれば利益率が高い。
実際、Amazonでは広告事業が主要な収益源の一つへ成長しており、小売各社がRetail Mediaへ投資する理由にもなっている。
海外では何が起きているのか
Amazonだけではない。
米国のWalmartは「Walmart Connect」を展開し、メーカー向け広告事業を強化している。
英国のTescoは会員データを活用した広告サービスを展開し、メーカーの商品開発や販促にもデータを提供している。
フランスのCarrefourや米国のKrogerなども同様にRetail Mediaを成長戦略の一つとして位置付けている。
つまり、海外ではRetail Mediaは「広告部門」ではなく、新たな収益事業として扱われている。
