【ドル円20年3,000万通り検証】FXの勝敗を決めるのは設定ではなく時間足!?
FX検証データ|金子 剛
「移動平均線は短期5と長期25のゴールデンクロスで」
「RSIは期間14。70を超えたら売り、30を割ったら買い」
「ボリンジャーバンドは期間20の2σタッチで逆張り」
FXを学び始めて最初に覚える設定だと思います。私もそうでした。ところが、この設定で負けが込むと、多くの人は同じ行動に出ます。「もっと良い設定があるはずだ」と、別のパラメーターを探しに行くのです。
25を50にしてみる。14を9にしてみる。それでもうまくいかないと、今度はインジケーターそのものを乗り換える。
このループを、私は20年間ずっと見てきましたし、かつての私自身もそうでした。本記事は、そのループから一人でも多くの方に脱出していただくために無料公開することにしました。
私はこれまで、ドル円の過去約20年分のデータを使って、移動平均線クロス・ボリンジャーバンド逆張り・RSI逆張りの3手法を、まったく同じ条件で検証してきました。3記事あわせて延べ2,999万通り、およそ3,000万通りの組み合わせをMT5のストラテジーテスターにかけています。
そして、3つのインジケーターの検証結果を並べたとき、1本ずつ見ていたときには気づかなかったことが見えました。勝てるかどうかを決めていたのは、パラメーターの数字ではなかったのです。
自己紹介
申し遅れました。金子剛と申します。
- 日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト
- FXコンテスト優勝(Forex.com開催)
- 投資関連セミナー講師
- 海外FX業者MYFX Markets様にて記事連載中
- 投資歴約20年。裁量・自動売買、スキャルピングから長期投資まで幅広く経験
これまで数百のEA(自動売買プログラム)を自作しては検証を繰り返してきました。今回取り上げる3つの検証も、すべて検証専用のEAを自作し、MT5のストラテジーテスターで実施したものです。
特典:合格19設定の一覧データ(どなたでも受け取れます)
本記事のリンクを添えて、感想付きでXでシェアしてくださった方には、上の表に載せた合格19条件の一覧データ(CSV)をお渡しします。
- 19条件それぞれの具体的なパラメーター値
- 純損益・PF・期待利得・リカバリーファクター・シャープレシオ・最大ドローダウン・取引回数
- 参照時間の換算値と、条件ごとの探索空間・有効パス数・合格数
以上をご確認いただけます。私の解釈を挟まず、19個の数字をご自身の目で確認してみてください。
受け取り方
- 本記事のリンクを添えて、感想付きでXにポスト
- 金子剛のXアカウント(@African777)へ、ポストのURLを添えてDM
- 確認後、速やかにファイルをお送りします
※特典ファイルの再配布・二次販売はご遠慮ください。
3つのインジケーターに共通する検証条件
横断比較が成立するのは、3つのインジケーターの検証記事の条件が完全に揃っているからです。通貨ペア、検証期間、バックテストモデル、初期証拠金、レバレッジ、判定基準。ひとつでもずれていれば、手法の差なのか条件の差なのか区別がつきません。

決済方式の呼び方について
3つの検証では、手法ごとに決済のやり方を2通りずつ用意し、それぞれ別々に最適化しています。本記事の表にも略称で出てくるので、先に整理しておきます。
- TP/SL:利確幅(TP)と損切り幅(SL)をpipsで固定し、どちらかに触れたら決済する(3手法すべてで使用)
- ドテン:損切りも利確も置かず、反対のシグナルが出たら決済して同時に逆方向へ乗り換える(移動平均線)
- 中央線回帰:損切りも利確幅も置かず、RSIが中央線(50)へ戻ったところで決済する(RSI)
- 固定pips:利確はセンターバンドへのタッチ、損切りはエントリーから一定pips(ボリンジャーバンド)
- バンド幅連動:利確はセンターバンドへのタッチ、損切りはセンターバンドまでの距離×係数(ボリンジャーバンド)
同じ手法でも決済方式が違えば別の条件として扱っています。3手法×4時間足×2方式で、合計24条件という内訳です。
遺伝的アルゴリズムとは?
3つのインジケーターの検証記事では、パラメーター探索が膨大になりました。これを1つずつ総当たりでテストすると非常に長い時間がかかります。
そこで使ったのがMT5に標準搭載されている「遺伝的アルゴリズム」です。生物の進化を模した最適化手法で、仕組みはシンプルです。
- まずランダムに選んだパラメーターの組(=個体)を多数テストする
- 成績の良かった組を「親」として選び、親同士のパラメーターを掛け合わせた「子」を作る(交配)
- 時々ランダムな変化も加える(突然変異)
- この世代交代を繰り返すと、テストが「有望なパラメーター領域」に自動的に集中していく
つまり、有望な領域を絞り込んでバックテストできるということです。
合格の判定基準(3記事すべてで固定)
次の3条件をすべて満たした設定だけを「合格」としています。
- プロフィットファクター(PF)1.2以上:PF=総利益÷総損失。1.0超で黒字ですが、1.2以上でようやく実戦を検討できる水準です
- 最大ドローダウン25%以内:資産の落ち込み幅。25%を超えると精神的に耐えるのが困難です
- 取引回数100回以上:回数が少ない好成績は「たまたま」の可能性が高く、統計的に信頼できません
実験:パラメーターを固定して、時間足だけを変えてみる
ここからが本題です。移動平均線の「短期5・長期25」は、日本で最も広く知られたゴールデンクロスの設定の一つでしょう。この設定を、数字は一切変えずに、置く時間足だけを変えて成績を追いかけてみました。結果がこれです。

「参照時間」は、そのインジケーターが実際に何時間ぶんの値動きを見ているかを表します。長期25本を5分足に置けば25×5分=約2時間、日足に置けば25×24時間=600時間です。
5分足では最良でもPF0.980、つまり負け越しています。30分足で1.080、4時間足で1.152と改善しますが、いずれも合格ゼロ。ところが日足に置いた瞬間、PF1.373まで上がり、合格が126通り出ました。
同じ「5と25」です。数字は1つも変えていません。それでも、5分足では資金を減らし、日足では実戦を検討できる水準に届きます。
正直に言うと、ここまできれいに並ぶとは思っていませんでした。「定番設定は使えない」という結論を予想していたのですが、データが出したのは「定番設定が悪いのではなく、置く場所が違っていた」という答えだったのです。
この日足の126通りが具体的にどんな設定で、どれが実戦に耐えるのかは、移動平均線の検証記事で全部公開しています。

ただし、「時間足を伸ばせば勝てる」という話ではない
ここで終われば気持ちのいい記事なのですが、そうはいきませんでした。同じことをRSIでやってみます。教科書どおりの「期間14・上限70・下限30」を、時間足だけ変えて追いかけた結果です。

日足まで伸ばしてもPF1.102。合格ラインの1.2に届きません。30分足に至ってはPF0.906、最大ドローダウン55.80%という結果です。
つまり、時間足を長くすれば何でも勝てるわけではないのです。移動平均線の5/25は600時間まで伸ばして合格圏に入りましたが、RSIの14/70/30は336時間まで伸ばしても届きませんでした。
手法ごとに効く時間帯が違う。そして、それは同じ条件で全部回してみるまで分かりません。
3手法の合格条件を参照時間順に並べる
では、実際に合格した設定はどの時間帯にいたのか。3記事24条件のうち、合格を1件以上出したのは19条件でした。その代表設定を、参照時間の短い順に並べます。

この表を上から下へ眺めると、PFの列がゆるやかに右肩上がりになっているのが分かると思います。参照時間が長い設定ほど、PFが高い傾向があります。
数字で確かめると、参照時間とPFの相関係数は、移動平均線の記事で0.809、ボリンジャーバンドの記事で0.926、RSIの記事で0.825でした。3つのまったく別の検証で、それぞれ独立に同じ傾向が出ています。
1本の記事だけなら「たまたまそう並んだ」で片づけられます。3本が揃って同じことを言っているとなると、少し話が変わってきます。
なぜそうなるのか。私の見立てでは、スプレッドの影響が大きいと考えています。短い時間を見る手法は1取引あたりの利幅が薄く、そこに固定のコストがかかるため、利益が削られやすい。同じPFを出すハードルが、短い時間帯ほど高くなるわけです。
ただし、これは相関であって因果の証明ではありません。参照時間を長くすること自体が勝ちを保証するわけではないのは、先ほどのRSIが示したとおりです。
検証で私が間違えたこと
失敗も正直に書いておきます。移動平均線の検証記事で、私は「30分足×TP/SL方式は全滅」と書きました。これは誤りでした。
実際には、合格基準を満たす設定が9件ありました。見落とした理由は単純で、私が純損益のTOP10しか見ていなかったからです。合格勢の最上位は純損益で327位。表に載る順位には1件も顔を出していませんでした。
同じ記事の中で「4時間足では純損益1位が不合格、合格筆頭は11位」と指摘しておきながら、30分足では自分が同じ罠にはまっていたわけです。
さらに困ったことに、見落としていた9件を調べ直すと、そのうちの1つ(短期85/長期260/SL10/TP40)はシャープレシオ2.695で、全8条件を通じて最も優秀なリスク調整後リターンを記録していました。「非推奨」と書いた条件です。
この訂正は、移動平均線の検証記事に全文を追記しています。都合の悪い数字を消すのではなく、なぜ見落としたかまで含めて書きました。データで語る記事である以上、そこは曲げられないと考えています。
手法別に見た総括
最後に、3手法それぞれの立ち位置を整理します。指標として使うのは「合格率」、つまり有効なテストのうち何%が合格基準を満たしたかです。適当に選んだ設定が当たる確率、と言い換えてもいいかもしれません。

移動平均線クロス
8条件中7条件で合格が出ており、合格率は7.72%。参照時間の幅も24時間から1,920時間まで最も広く、時間帯の選択肢が多い手法でした。最高PFの1.83も移動平均線から出ています。
本記事の主役でもあります。定番の5/25が日足で合格126通りを出したこと、そして私が全滅と書き間違えた30分足に9件の合格が眠っていたこと。この2つは、どちらも移動平均線の検証から出てきました。

ボリンジャーバンド逆張り
合格率2.38%と、3手法の中で明確に低い数字です。8条件のうち合格が出たのは4条件で、そのうち2条件は探索範囲の端に張り付いた設定が1件だけという、実戦に持ち込めない形でした。
一方で、実質的に勝ち残った4時間足の2条件はPF1.55と1.52を記録しており、当たったときの成績は高い。狭いが深い、という性格の手法です。教科書どおりの期間20×2σがどうだったかも、記事の中で扱っています。

RSI逆張り
8条件すべてで合格が出た唯一の手法です。ただし本記事で見たとおり、教科書の14/70/30はどの時間足でも不合格でした。勝ち残ったのは、そこから大きく離れたパラメーター帯です。
探索規模も3手法で最大の約2,563万通りで、合格数も最多。どこに勝ちゾーンがあるのかを最も細かく追えた検証になりました。

この検証の限界
都合の良いところだけを書いても仕方がないので、限界も開示しておきます。
- 探索方式が条件によって異なります。多くは遺伝的アルゴリズムですが、RSIの中央線回帰4条件は総当たりです。合格率を横並びで比べる際は、この違いに注意が必要です
- ボリンジャーバンドの期間20は、遺伝的アルゴリズムがほとんど試していません(全8条件で2〜10件)。「試して落ちた」というより「有望でないと判断されて掘られなかった」に近い状態です
- 検証はドル円のみです。他の通貨ペアで同じ傾向が出るかは、まだ確かめていません
検証記事は「育つ記事」です
3本の検証記事は、いずれも公開後に追加検証を反映していく形で運用しています。実際、移動平均線の記事には本記事で触れた訂正と、見落としていた合格9件の分析を追記しました。
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次に読むなら、移動平均線の検証記事です。
本記事で触れた日足126通りが具体的にどんな設定なのか純損益1位ではなく実戦に耐えたのはどれかそして私が「全滅」と書き間違えた30分足の9件まで、全部載せています。

ボリンジャーバンドとRSIの検証記事は👇
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