Tips有料記事|バランス・圧移動・床反力・キネティックチェーンを一つの概念で理解する
M&M GOLF LAB|研究正本
「バランスが悪いから、もっと動かないようにしましょう。」この助言は、静止姿勢なら正しいことがあります。しかしゴルフスイングでは、逆に動きを失わせることがあります。
ゴルフで必要なのは、固定ではなく動的安定性です。身体重心をゼロに固定するのではなく、足圧中心を変化させ、床反力を利用し、右脚から左脚へ支持を受け渡しながら、クラブの運動に対して身体の姿勢を更新し続ける能力です。
第1章|静的バランスと動的バランスは別物

図1|静止ではなく、動きながら次の支持をつくる
アドレスで長時間立つ、片脚立ちをする、フィニッシュで3秒止まる。これらはバランス能力を見る一つの方法ですが、ゴルフスイング中のバランスをそのまま表しているわけではありません。
スイングでは重心位置、クラブの慣性、身体各部の角速度、床反力が瞬間ごとに変わります。したがって、必要なのは『同じ姿勢を保つ能力』ではなく、『姿勢が変わり続ける中で、制御を失わない能力』です。
第2章|動くことによって得られるバランス
人間の運動は、完全に安定した状態から次の完全に安定した状態へ瞬間移動するわけではありません。前の支持を少し手放しながら、次の支持を作ります。歩行も、走行も、投球も同じです。
ゴルフでは足を踏み替えませんが、両足の中で支持の比率が変わります。右脚で受けていた力を左脚へ渡す過程で、足圧中心が変化し、地面から返ってくる力の作用方向が変わります。この変化によって、身体重心の動きが調整されます。
つまり『動いた結果としてバランスが崩れる』だけではありません。適切に動くこと自体が、次の安定を作る操作なのです。
第3章|COM・CoP・GRFを区別する

図2|COM・CoP・GRFは別々の役割を持つ
ダイナミックバランスを理解するには、COM、CoP、GRFの3つを分ける必要があります。
- COM(Center of Mass):身体全体の質量中心。身体そのものがどこへ動いているか。
- CoP(Center of Pressure):足裏と地面の間に生じる合力の作用位置。足元で『どこを使っているか』を見る指標。
- GRF(Ground Reaction Force):地面を押した結果として地面から身体へ返る床反力。大きさと方向を持つ。
CoPが右へ移ったから、COMも同じ量だけ右へ移るわけではありません。CoPを動かして地面から受ける力を変えることで、COMを必要な範囲に保つことができます。ここが『圧移動=身体の横移動』ではない理由です。
第4章|バックスイング|右へ行くのではなく、右脚で受ける

図3|右へ流れず、右脚で回転を受ける
アマチュアのスウェーは、『右足に乗る』を身体全体の横移動として解釈することで起こりやすくなります。
ダイナミックバランスの視点では、右脚に圧を受けながら、股関節と胸郭を回旋させます。右脚が支持点になれば、身体を右へ逃がさなくても回転できます。ここで必要なのは移動量ではなく、右脚が力を受けられる姿勢です。
