面談の場で決めてしまう前に、手元でできることがあります。まず、なぜ「見抜く力」だけでは足りないのかから。
「面接のはず」が、いつの間にか講座の説明になっている
よくある場面の一例です。副業を探して応募し、オンライン面談の日を迎えます。画面に出てきた担当者との仕事の話は、短く終わります。すぐに「スキルを身につけるための講座」の説明が始まり、気づくと画面に金額が出ています。
「今日決めてくださるなら、特典をお付けします」。断ろうとすると、「今のままで、本当にいいんですか」と返ってきます。画面の向こうが数人で、こちらは1人、ということもあります。
手元のスマートフォンには、無料のChatGPTが入っています。けれど、この場で何を聞き、何を見ればいいのか分かりません。
国民生活センターが2026年9月16日に出した注意喚起「ビジネス講座のトラブルにご注意」によると、ビジネス講座に関する相談は、2020年度の1,169件から毎年増え、2025年度は3,551件と過去最多になりました。2026年度は、7月31日までの登録分だけで1,121件です。
電話勧誘販売(Web会議での勧誘を含む)の平均契約購入金額は、2025年度が87万円、2026年度が79万円でした(2026年度は途中集計です)。相談事例には、「ビジネス講座の勧誘があることを知らされないままWeb会議に接続した」というものがあります。報道によると、副業の採用面接に応募したら65万円のビジネス講座の契約になっていた、という相談もありました。
なお、取引の種類によっては、クーリング・オフ(一定期間内の契約解除)の制度があります。「仕事を提供するので収入が得られる」と誘い、仕事に必要だとして商品を売る取引では、契約を解除できる期間が、法定の書面を受け取った日から20日以内とされています(消費者庁)。すべての勧誘が当てはまるわけではないため、対象かどうかは消費生活センター(188)に相談してください。
見抜けなかったことだけが、原因ではありません
こうした話を聞くと、「自分なら怪しいと気づく」と考える人もいます。ネットには「怪しい副業の見分け方」の記事もたくさんあります。
けれど、入口が「採用面接」や「説明会」なら、怪しいと感じる場面が、そもそも来ないことがあります。勧誘があると知らされないまま、Web会議に入った人もいます。本教材では、原因を次のように整理します。
大きな原因の1つは、確認する場所と、決める場所が同じことです。画面の向こうで説明を聞きながら、その場で内容を確かめ、その場で返事をする。これでは、どれだけ注意深い人でも、時間も材料も足りません。

必要なのは、見抜く力を鍛えることではありません。確認する場所を、勧誘の場から切り離すことです。面談では、聞くことと、書面を求めることだけをします。確認と決断は、画面を閉じたあと、手元で行います。
手元では、無料のChatGPTが役に立ちます。書面から総額や解約条件などを抜き出す作業は、AIが得意です。ただし、AIは契約の良し悪しを判断しません。抜き出した内容を原本と見比べるのは、あなたです。契約するかどうかも、あなたが決めることです。
この先でやること
この先では、面談の前から面談のあとまで、何をどの順番でやればいいかを、具体的な手順にして解説します。
- STEP1 面談の前に、確認シートを書き写す(5分)
- STEP2 5つの質問だけ聞き、その場では返事をしない(面談中)
- STEP3 書面から5項目を抜き出す(15分)
- STEP4 原本と照合して、今日は保留にする(15分)
所要時間は、面談の時間を除いて合計35分ほどが目安です。書面の量によって前後します。
必要なものは、ChatGPTの無料アカウントと、A4の紙1枚とペンです。有料プランも専用ソフトも使いません。付けているものは、確認シートの様式、プロンプト3本、チェックリスト8項目、失敗パターン、相談先の案内です。
準備するもの
- ブラウザで https://chatgpt.com を表示します。→ チャットの入力欄がある画面が出ます。
- 画面の案内に従ってアカウントを作成し、サインインします。→ アカウントのアイコンが出ます。
- アカウントのメニューから Settings(設定)→ Data controls(データ管理)と選び、「Improve the model for everyone(全員のためのモデル改善)」をオフにして Done(完了)を押します。→ これ以降の会話が、モデルの学習に使われなくなります。
日本語表示では名前が異なることがあるため、英語表記を手がかりに探します(日本語は訳の例。2026年10月1日に公式ヘルプで確認)。ほかにA4の紙1枚とペンを用意します。AIに貼る文は、個人名・住所・電話・口座・事業者名を伏せたものだけにします。
