はじめに
ChatGPTなどの生成AIを使い始めても、仕事が思ったほど楽にならないことがあります。原因は、プロンプトの書き方より前にあります。AIへ渡す仕事が大きすぎる、完成条件が決まっていない、間違えたときの影響が大きい、誰が確認するか不明、といった状態です。
たとえば「営業を効率化して」と頼んでも、AIは何から手を付ければよいか決められません。一方で、「商談メモから、顧客へ送る前のフォローメール案を作る。日付・金額・約束は原文にあるものだけ使い、担当者が確認して送信する」まで分けると、仕事として扱いやすくなります。
この教材では、AIへ任せる候補を洗い出し、30分で最初の1業務を決め、試運転できる形へ整えます。大量のツール紹介や難しい自動化は行いません。まず、今ある仕事を安全に小さくします。
本教材の「30分」は、候補業務の選定と初期設計にかける標準時間です。AI導入全体やシステム開発が30分で完了するという意味ではありません。
この教材でできるようになること
- 自分の仕事をAIへ渡せる大きさに分解できる- AIが得意な作業と、人が持つべき判断を分けられる- 6つの評価軸で候補業務を採点できる- AIへ渡す入力、期待する出力、禁止事項、確認者を決められる- 1週間の小さな試運転で、続けるかやめるか判断できる- うまくいった手順を再利用できるテンプレートへ変えられる
対象となる読者
- AIを触ったものの、具体的な仕事への使い方が決まらない人- メール作成や要約以外にも広げたい人- 毎回同じ指示を書き直している人- 個人事業主、小規模チーム、事務・営業・広報担当者- 自動化の前に、失敗しにくい最初の1業務を選びたい人
扱わないこと
- 特定サービスの画面操作を完全再現する説明- APIやプログラムを使った無人自動化- 法務・医療・人事・与信などの専門判断をAIへ代替させる方法- 勤務先の規程や契約に反するデータ利用- AIの出力を確認せず外部へ送信する運用
第1章 なぜ「便利そうな仕事」から選ぶと失敗するのか
AI活用の候補を考えるとき、多くの人は「文章作成」「調査」「資料作成」のような大きな仕事名から始めます。しかし、同じ文章作成でも、社内メモの整形と契約書の最終確定では、誤りの影響がまったく異なります。
AIへ渡す単位は、部署名や職種名ではなく、開始条件と完了条件が見える一つの作業です。
悪い例:
> 問い合わせ対応をAI化する
良い例:
> 受信した問い合わせから、商品名・質問・希望期限を抜き出し、社内確認用の3項目に整理する。返信や約束は行わない。
良い例には、入力、変換、出力、禁止事項が含まれています。ここまで小さくすると、AIの結果を人が確認しやすく、失敗したときも戻しやすくなります。
最初に選ばない方がよい業務
- 間違いが事故、損害、法的問題に直結する- 正解を担当者自身も説明できない- 入力データをAIへ渡してよいか不明- 例外が多く、毎回手順が変わる- 実行後に取り消せない- 人が結果を短時間で確認できない
これらは永遠にAIを使えないという意味ではありません。初心者の最初の1本として避ける、という判断です。

第2章 仕事を3レーンへ仕分ける
候補業務は、次の3レーンへ分けます。
