「行政書士って、副業でもできるの?」「会社員を続けながら開業できるの?」
そう感じている方は多いと思います。
私もまったく同じ不安を抱えたまま、会社員として働きながら行政書士登録をしました。
そのうえで、まずお伝えしたい結論は
副業で行政書士は“十分に”成立します。
もちろん、楽ではありません。工夫や時間管理は必要です。それでも、できる。現に、いま私たちは会社員×行政書士の形で無理せず実務を積みながら活動を続けています。
この記事では、副業で行政書士を続けてきた経験をもとに、
- 副業で始めるメリット・デメリット
- 実際の働き方
- 副業と相性のよい業務
- 無理なく続けるコツ
などを、できるだけリアルにまとめました。
これから開業を考えている方、「副業でもできるのかな…」と迷っている方の判断材料になればうれしいです。
結論:副業でも行政書士は“現実的に”できる
結論からお伝えすると、行政書士は副業でも十分に成立します。
理由はシンプルで、時間や場所の制約を受けにくい業務が多いから です。
具体的には
- メール・チャットで完結できる
- 夜・週末でも作業ができる
- オンライン申請が広がっている
- 訪問・対面が必須でないケースが多い
といった背景から、会社員と並行しながら続けやすい環境になっています。
もちろん、昼間の行政対応が必要になったり、繁忙期に時間調整が必要になるなど、難しさもゼロではありません。
それでも、
できる範囲から始めて、少しずつ広げていく
というスタイルであれば、無理なく実務を積むことができます。
「専業でないと無理」という時代ではありません。
副業スタートは、いまや行政書士の働き方としてごく自然な選択肢の一つです。
副業で行政書士を始める人が増えている理由
近年、「行政書士を副業で始めたい」という相談を受ける機会が増えています。
その背景には、次のような理由があります。
- いきなり専業になるのはリスクが大きい→収入が不安定になりやすい
- まずは経験を積んでから専業へ移行したい→ステップを踏める
- 本業での経験を活かせるケースが多い→会社員の知見が武器になる
- オンライン化で時間の制約が減った→昼間に役所へ行く機会が少なくなってきた
この流れを後押しするのが、働き方の多様化です。
資格を取ったからといって、すぐに独立しなければならない時代ではありません。
本業を続けながら、小さく始めてみる。
この選択が、ごく自然になってきています。
副業でリスクを抑えつつ、実務経験を積み、自分の得意領域や顧客層を見極めていく。
そんな働き方が、現代の行政書士では“現実的で、再現性のあるパス” になっています。
副業で行政書士を始めるメリット
副業という形で行政書士を始めることには、専業にはない “強み” があります。代表的なポイントを整理します。
1) 経済的リスクが小さい
本業収入を維持したまま始められるため、精神的な負担が少なく、「小さく試す」ことができます。
2) 本業経験を活かせる
会社員として培った
- 業界知識
- 専門用語
- ビジネス感覚
- コミュニケーション力
などは、行政書士業務にも直結します。“本業×行政書士”の掛け算は大きな武器になります。
3) 得意領域を育てやすい
副業なら急いで売上を立てる必要がなく、興味のある分野から少しずつ案件を受けられます。
結果として、実務を通じて専門分野を育てるという流れが自然に生まれます。
4) 顧客に安心感を与える場合も
会社員であることが、「安定している」「情報感度が高い」と評価されることがあります。
クライアントにとっては“本業で得た知見も踏まえて相談できる人”という安心材料になることもあります。
5) 自分のペースで進められる
副業は、
- 案件数
- 対応時間
- 業務の選び方
を自分で調整できるため、無理なく続けやすいというメリットがあります。
「まずは1件から」といった緩やかなスタートが可能です。
無理なく続けながら、のちに専業化・専門特化を目指す。そんなキャリア設計ができる点が、副業スタート最大の魅力です。
副業で行政書士を始めるデメリット・課題
副業として行政書士を続けるうえで、当然ながら“良いことばかり”ではありません。実際に活動して感じた、主な課題を整理します。
1) 平日日中の行政対応が必要なことがある
行政からの連絡や補正依頼は、基本的に平日の日中に来ます。
また、許認可系の業務では、メールのみで完結するケースは少なく、電話での確認や窓口での対応が必要になることもあります。
さらに、こちらから行政へ相談したい場合も平日しか受け付けていないため、平日の日中にある程度の時間を確保できることが望ましいです。
そのため、副業で許認可に取り組む場合、「平日昼の対応ができるかどうか」が大きな判断ポイントになります。
2) 時間が限られる
本業がある以上、“いつでも稼働できる” わけではありません。そのため工数管理・スケジュール設計が重要になります。
- 案件数を絞る
- 期限の見通しを立てる
- 深夜/早朝に作業する
など、計画的な動きが求められます。
3) 扱える業務に制限がある
- 現地確認が必要
- 行政窓口の来訪が必須
- 即時対応が求められる
といった案件は、副業だと着手が難しくなる可能性があります。
そのため、業務選択が非常に重要です。
4) 情報収集に時間がかかる
行政手続きは、意外と情報が分散していることが多く、調べるだけで時間を要する場面があります。
そのため、自分なりの調査メモや手順を残す習慣があると後々の対応が格段に楽になります。
こうして並べると「やっぱり大変そう…」と感じるかもしれませんが、いずれも工夫で対応できるものばかりです。
次章では、副業でも取り組みやすい業務を整理していきます。
副業でも対応しやすい業務
副業で行政書士として活動する場合、ポイントになるのは 「時間の裁量が効く業務を選ぶ」 こと。
特に
ヒアリング→調査→書面作成→納品という流れで完結する業務は、夜や休日だけでも進めやすく、副業との相性が高いです。
ここでは、実際になないろバックオフィスでも対応している「副業でも取り組みやすい業務」の例をご紹介します。
● IT導入補助金:ベンダー登録支援
IT導入補助金の支援事業者(ベンダー)として登録する際に必要となる「機能説明資料」「価格説明資料」の作成・アドバイスを行う業務です。
基本的には行政庁とのやりとりは不要で、ヒアリング→資料作成→提出サポートというオンラインで閉じる流れのため、副業でも取り組みやすい分野です。
● 小規模事業者持続化補助金
申請書の作成サポートが中心です。ヒアリングをもとに事業計画をまとめ、書面へ落とし込んでいきます。
夜・休日の対応でも進めやすく、オンライン完結できるため、副業との両立も可能です。
● 契約書の作成・レビュー
オンラインでヒアリング→草案作成→修正対応→納品が一般的です。
業務の緊急性がそこまで高くないケースが多く、副業との親和性は高いです。
● 各種許認可(※要検討)
- 古物商許可
- 酒類販売業免許
- 無店舗型/映像送信型性風俗特殊営業 など
申請書や添付書類の作成のみを請け負う形であれば、副業としても比較的対応しやすい分野です。
注意点:申請代行を含めて受任する場合は、行政庁とのやりとりは基本的に平日日中のため、副業の場合、調整が必要です。
オンラインで完結しないケースも多いので、無理のない範囲で受任することをおすすめします。
副業と相性が良い業務の特徴
- オンラインで完結しやすい
- 時間の裁量が効く
- タスクを細かく分解できる
副業で行政書士を続けるには、「時間調整がしやすい業務」 を選ぶことが大切です。まずは取り組みやすい領域から始め、少しずつ得意領域へ育てていくのがおすすめです。
実際の働き方(なないろバックオフィスの場合)
副業で行政書士を行う上で大切なのは、「無理なく続けられる運用設計」 をつくること。
ここでは、なないろバックオフィス(2名体制)がどのように時間を使いつつ業務を進めているかを、できる範囲でご紹介します。
平日:朝・夜を中心に作業
本業の勤務時間を避けて、朝or夜の数時間を作業時間にあてています。
- 書類作成
- リサーチ
- お客様へのメール
などはこの時間帯が中心です。
朝の30〜60分だけでもコツコツ前に進められます。
行政とのやり取り
行政への確認は、基本的に平日日中がメイン。
- 急ぎの場合は昼休みに電話
- 事前に質問をまとめておく
などで調整しています。
※許認可系は、行政対応の時間確保が必須となるため業務選択は慎重に行っています。
クライアント対応は夜or週末
ヒアリングや進捗共有、MTGは夜・週末がメインです。
オンライン化が進んでいるため、基本はGoogle Meet / Zoomで完結。
必要に応じてチャット(Slack / Chatwork)でオンラインコミュニケーションを活用しています。
2名体制で補完しながら対応
なないろバックオフィスは 2名体制。案件によって業務を分担しつつ、お互いの得意領域を活かしながら進めています。
例:
- 補助金:Aが中心、Bがレビュー
- 許認可:Bが中心、Aが問い合わせ
- 契約書:A/B双方でレビュー
この体制により、無理のない稼働で安定的に案件対応ができています。
テンプレ+ヒアリングシートで効率化
受任のたびにゼロから作ると非効率。そのため
- ヒアリングシート
- 資料テンプレ
- 案件管理表等
を整備し、再現性ある進行フロー を作っています。
副業で行政書士を続けるには、時間の確保×仕組み化×分担(可能なら)が鍵となります。
「仕組みで進める」ことができれば副業でも十分に成立します。
副業で実務を回すコツ
副業で行政書士業務を行ううえで大切なのは、「時間を味方につける運用設計」 をつくること。
限られた時間でも無理なく続けるために、なないろバックオフィスが意識しているポイントをまとめました。
①業務を選ぶ(やらないことを決める)
副業の場合、「できること」より “やらないこと” を決めるほうが重要です。
- 窓口での申請が必要
- 行政とのやり取りが多い
- 書類が極端に複雑
- スケジュールがタイト
こうした業務は、ひとりで抱えるには負担が大きくなりがちです。
“受けない判断” が、副業を継続させる最大の鍵となります。
②ヒアリングシートを作る
案件の出だしで迷いが生まれると、その後の作業が大きくブレます。
- 基本情報
- 背景
- 目的
- 期限
- 必要資料
を整理できるヒアリングシートがあるだけでやり取りが格段にスムーズになります。
③テンプレを整える
毎回ゼロから作るのは非効率。作成した書類は再利用できる形で残すのがポイントです。
- 依頼受付テンプレ
- 行政問い合わせ文面
- 案件進行メモ
- 契約書ひな形
- チェックリスト
テンプレ群が揃うと、作業スピードが一気に上がります。
④オンライン前提で設計
副業最大の難しさは「移動」です。業務フローは、原則 オンライン完結に寄せるのが理想です。
- ヒアリング→オンライン
- 書類共有→クラウド
- 契約→電子契約
移動時間ゼロで働ける設計が副業の負担を大きく減らします。
⑤行政との連絡は昼休みが基本
許認可系では行政確認が必要になることがあります。
電話が必要な場合は、
- 昼休み
- まとまった時間にポイントを整理して連絡
といった工夫が欠かせません。
※許認可を受けるかどうかは「できる時間で回せるか」が判断軸。
⑥断る判断基準を持つ
時間が限られる副業では、断る基準がないとすぐにパンクします。
- スケジュールがタイトすぎる
- 作成する資料のボリュームが多すぎる
- コンプラ的に不安
こうした案件は、早い段階でお断りできる状態が理想です。
⑦相談できる相手を持つ
1人ですべて抱えると、判断力もスピードも低下します。特に開業初期は、「ちょっと聞ける相手」がいるだけで大きく前に進めます。
なないろバックオフィスは2名体制で、
- 情報共有
- 案件レビュー
- 行政への問い合わせ
- 補助金・許認可の調査
を役割分担しながら進めることで、負荷を下げつつ品質を保っています。
色々な工夫がありますが、副業で行政書士を続けるために最も大切なのは仕組化です。
- 型を作る
- 再利用する
- 選ぶ
- 断る
- 分担する
これらを積み重ねることで、限られた時間でも価値を提供できる体制を築けます。
どれくらい稼げる?
副業で行政書士を始める場合、最初から大きく稼ぐケースは多くありません。
多くの方は月数万円規模からスタートし、案件や知見が増えるにつれて少しずつ積み上がっていくイメージです。
特に開業初期は
- 経験を積む
- 業務フローを整える
- 得意領域を見つける
といった “土台づくり” の期間。
すぐに大きな成果を求めるよりも、経験→仕組み化→特化→回収という流れを意識したほうが、結果的に安定して伸びていきます。
※具体的な売上推移・案件別の収益感については、実体験ベースで別記事にまとめる予定です。
副業→専業はあり?
結論としては、十分に可能です。ただし、勢いだけで切り替えるよりも、“勝ちパターンを小さく再現できているか” を確認してから移行するほうが安全です。
専業化の前に整えておきたい4点
- 売上の見通し単発の偶発ではなく、数カ月連続で同程度の受任・売上が再現できている。
- 収入の安定性顧問契約や継続案件が一定数あり、安定的な月次売上が見込める。
- 業務効率化ヒアリングシート、テンプレ、フロー、価格体系が整っており、時間単価が上がっている。
- 顧客導線紹介、検索(発信)、プラットフォームなど、自然に相談が入る経路が機能している。
段階的ステップ(おすすめの移行手順)
- 副業で小さく検証(対応しやすい業務に絞る)
- 仕組み化(テンプレ・価格・フロー・FAQを整備)
- 特化領域の確立(実績を束ねて強みを明確化)
- 継続収入を確保(顧問・定期案件・紹介ループ)
- 半専業へ(稼働時間を増やして再現性を確認)
- 専業化(導線と効率が回っている状態で移行)
焦ってフルベットせず、“副業で勝ち筋を作ってから広げる”が堅実です。
失敗しないためにやっておくこと
副業で実務を進めていると、「想定外の負担」や「トラブル」も起こり得ます。
そうした事態を避け、安全に・無理なく続けるために“事前に整えておくべき備え” をまとめました。
①受任判断の基準を明確にする
受ける/受けないの基準が曖昧だと、時間も気力もすぐにすり減ります。
- スケジュールが無理
- コンプラ面が不安
- 価値提供できない
など、“断るライン” を言語化 しておきましょう。
②コンプライアンス意識を持つ
行政書士は法律職です。知らぬ間にルール違反、というのは避けたいところです。
- 表示・広告のルール
- 電子契約・業法
- 守秘・個人情報
- 反社チェック
特に「おいしそうな案件ほど危ない」は経験則として持っておいて損はありません。
③契約・支払条件は必ず文面化
- 契約書
- 見積
- 業務範囲
- 期限
- 支払条件
口約束の状態はトラブルの元です。最小限でも文面化は必須です。
④情報管理のルールを作る
行政書士は機微情報を扱う職種です。
- 取得した資料の保管
- 共有範囲
- 添付ファイルの扱い
- パスワード管理
- 廃棄ルール
は、あらかじめ方針を決めておきましょう。
⑤スケジュールに余白を持つ
副業の場合、本業の繁忙や突発対応と重なることは避けられません。そのため、スケジュールには常に余白を残す設計が必要です。
- 締切を詰めすぎない
- 週あたりの稼働上限を決める
- “想定外”に備えてバッファを確保する
つまり、時間の安全装置をつくることが無理なく続けるための重要なポイントです。
⑥トラブル時の“戻し方”を決めておく
- 万が一のミス
- 行政の要件変更
- クライアントの意向変更
などの際にどう進めるかを決めておくと不安なく対応できます。
「再作成に●日」、「再相談は●回まで」と決めておくと、感情に引っ張られません。
⑦相談できる相手を確保
判断に迷ったとき、一人で抱え込まないことがとても大切です。
- 行政書士仲間
- 知識の近い相談相手
- 一緒に業務フローを磨ける相手
など、気軽に相談できる存在がいるだけで意思決定のスピードも精度も大きく変わります。
なないろバックオフィスは2名体制で、情報共有やレビューを行いながらお互いを補完できる環境をつくっています。
もちろん、必ず複数人である必要はありません。1人でも信頼して相談できる相手がいれば十分です。
まとめ
副業で行政書士を始めることは、十分に可能です。
- リスクを抑えて挑戦できる
- 実務経験や人脈が積み上がる
- 得意領域を育てられる
といったメリットがあり、「働きながら少しずつ進める」というスタイルでも、確実に前へ進むことができます。
最初から完璧である必要はありません。できる範囲で一歩を踏み出し、仕組みを整えながら進めていくことで、あなたらしい形の行政書士像が見えてきます。
迷っているなら、まずは小さく動いてみる。その一歩が、未来を変えていきます。
