「離婚したい。でも、家を出るお金がない」
この状態で止まっている人は少なくありません。
引越し、賃貸の初期費用、当面の生活費、保育・学校、法律相談。離婚後の生活を始めるには、一度にまとまったお金が必要になります。
そこで目標にしやすいのが100万円です。
ただし、「パートナーにバレずに100万円を隠す」という考え方は危険です。婚姻中に夫婦の協力で形成した財産は、本人名義の預金でも財産分与の対象になり得ます。現金を親族へ移す、共有財産を勝手に引き出す、裁判や調停で資産を隠す、といった行為を勧めることはできません。
この記事で作るのは、財産隠しのためのお金ではありません。
- 自分の収入・支出を把握する
- 資金の出所と使途を記録する
- 緊急時に生活を立ち上げられる現金余力をつくる
- 財産分与とは別に、住まいと当面の生活を先に設計する
- DV等の危険がある場合は、貯金額より避難を優先する
この5点を守った「離婚準備資金」です。
本記事は、20代・30代・40代で離婚を考えている女性向けに、Xデーから逆算して100万円を準備し、住まいを確保する流れをまとめた実務教材です。
2026年9月時点の公的情報をもとにしています。財産分与、婚姻費用、税、社会保険、給付、賃貸審査は個別事情で異なります。実行前に自治体、法テラス、弁護士、不動産会社等へ確認してください。
最初に知るべきこと——本人名義口座でも「完全な自分のお金」とは限らない
法務省は、夫婦の一方の名義であっても、夫婦の協力によって形成した財産であれば、財産分与の対象になり得ると説明しています。
たとえば、婚姻中の給与から本人名義口座へ積み立てた100万円は、名義だけで財産分与の対象外になるとは限りません。
一方で、婚姻前から持っていた預金、相続・贈与で得た財産などは、事情により扱いが異なります。婚姻前残高、入金記録、相続資料など、資金の出所を説明できる資料を残してください。
つまり、目指すのは「見つからないお金」ではなく、次のようなお金です。
- 出所を説明できる
- 使途を説明できる
- 相手や第三者の名義を借りていない
- 共有口座から不自然に移していない
- 必要な手続で正確に開示できる
秘密の準備が必要でも、虚偽や隠匿とは分けます。
100万円の内訳を先に決める
100万円を「なんとなく安心できる額」にしないでください。目的別に分けます。
標準モデル
- 賃貸初期費用:25万円
- 引越し・最低限の家具家電:15万円
- 3か月分の最低生活費:45万円
- 法律相談・書類・交通・通信:5万円
- 保育・学校・医療等の予備:5万円
- 緊急予備費:5万円
合計100万円です。
これは全国一律の必要額ではありません。家賃が高い地域、子どもが複数いる家庭、車が必要な地域では不足することがあります。実家や社宅、公営住宅、一時保護を使える場合は、必要額が下がることもあります。
自分の目標額
<code>賃貸初期費用+引越し費用+最低生活費×3+手続費+教育・医療予備費</code>
この計算結果が70万円なら、無理に100万円を待たず、離婚・別居の時期を安全と手続に合わせます。逆に150万円必要なら、「100万円貯まったから大丈夫」と判断しないでください。
Xデーまでの月額を計算する
100万円をゼロから作る場合の単純な月額は次のとおりです。
- 6か月:月166,667円
- 9か月:月111,112円
- 12か月:月83,334円
- 18か月:月55,556円
- 24か月:月41,667円
現在30万円あるなら、残り70万円を割ります。
- 6か月:月116,667円
- 12か月:月58,334円
- 18か月:月38,889円
- 24か月:月29,167円
多くの家庭では、節約だけで月8万円以上を作るのは難しいでしょう。だから、次の4つを組み合わせます。
- 固定費を下げる
- 収入を増やす
- 臨時収入を残す
- 住まいの初期費用を下げる
目標を達成できない自分を責めるのではなく、必要額と期限のどちらを調整するか考えます。
まず3分で自己診断
次のうち、いくつ当てはまりますか。
- 自分名義の口座残高を把握していない
- 家計の固定費を一覧にしていない
- 共有財産と自分の婚姻前財産を分けて記録していない
- 相手が口座、カード、スマホを管理している
- 離婚後3か月の生活費を計算していない
- 賃貸審査で使える収入証明がない
- 保証人・保証会社について調べていない
- 公営住宅の募集時期を知らない
- 子どもの転校・転園条件を確認していない
- 危険時の避難先がない
0〜2個なら、積立と物件探しを並行できます。3〜5個なら、最初の30日で家計・書類・住宅条件を整える段階です。6個以上なら、100万円の数字だけを追わず、自治体や法律相談へ先につながってください。
「今すぐ逃げるべき状況」と「準備を続けられる状況」を分ける
身体的暴力、首を絞める行為、凶器、殺害・連れ去りの脅し、監禁、スマホや鍵の取り上げがあるなら、100万円が貯まるまで待たないでください。
女性相談支援センター等では、必要に応じて一時保護が行われ、子どもと一緒に保護を受けられる場合があります。安全確保後、新しい生活へ向けた支援につながることもできます。
「お金がないから逃げられない」と思っても、まず相談してください。
してはいけない「軍資金づくり」
- 共有口座から説明できない大金を一括で引き出す
- 相手の口座・カードを無断利用する
- 親族や友人名義へ預金を移す
- 現金化して存在を隠す
- 子ども名義口座へ仮装して移す
- ローンや後払いを相手名義で勝手に使う
- 給付や手当の申請で資産・収入を偽る
- 調停・裁判・弁護士相談で財産を隠す
- 相手のネットバンキングへ無断ログインする
準備資金を作るときは、資金移動の前後残高、日付、金額、原資、使途を記録します。判断に迷う金額を動かす前に弁護士へ相談してください。
無料部分の結論——Xデーは「100万円達成日」ではない
別居・離婚のXデーは、次の条件が揃う日です。
- 安全に移動できる
- 当面の住まいがある
- 子どもの生活導線が決まっている
- 3か月家計が回る
- 必要書類がある
- 婚姻費用・養育費・手当の相談先が決まっている
- 財産の記録を保全している
100万円は、その条件を整えるための手段です。
